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茶青の過去と現在_1(:茶青)


View.アッシュ



 始めの印象は最上位(ルナ)組に入れる程度には優秀だけれども、よくいる扱いやすい平民女性というものだった。

 少し経つと立場を理解して否無礼な女で。

 しばらく経てば夢中になっていた。

 何故そうなったかの説明や、キッカケの話になると明確な物はないが、今まで会った事の無い女性に気がつけば夢中になっていた。

 恋や愛を馬鹿にしていた私が、例えどんな事があろうと、彼女を手に入れてみせると恋や愛に浮かれていたのである







「ああ、シャルの件ですか。聞いていますよ」


 そして現在。どうしても手に入れたいと願った女性は主で親友と恋仲になり、しかし未だに彼女とは友人関係を良好に築けているというある意味では不思議な関係のまま、友人の結婚式に出席をして話していた。

 自身の席に近い彼女は(パーティ会場などではないので、聖堂の長机に座って隣なだけだが)、私の親友の新たな恋話に興味津々であり、逃げられてしまった友人の代わりに私に聞いている。始めは言わないようにしていたのだが、私が心ここにあらずといった彼女に問い詰めると話し始め、先日の件だと分かった私は笑顔で話したのである。この件で後でシャルの奴になにか言われても知ったことではない。逃げる奴が悪い。


「ですが残念ながら誰かの特定までは。年上、貴族ではない、派手というよりは素朴、言葉の端々から人族ではないと予想できる、くらいですね」

「なるほど……その、失礼な話かもですが」

「騙されている、という事はないですよ。そこはスカイが保証していました。……言いたくなる気持ちは分かりますがね」

「そ、そうですか。良かったです」


 シャルの奴は異性耐性はない。初心な反応を示しやすいシルバより遥かに。

 さらにはかつて、今日の主役の一人であるミセス・シアンと戦った時に、見てはいけないものを見えそうになってしまい、どう責任を取ればいいかと本気で悩むくらいには真っ直ぐな馬鹿である。なのでその心配も失礼どころか全うな心配である。


「しかしそうなると誰でしょうかね。スカイが身の保証はし、年上女性……」

「気になりますか?」

「ええ、大切な友人ですからね。それになんと言いますか、こう……コイバナに花を咲かせる学園生っぽくてテンションが上がるのです!」

「どうどう、抑えて下さい」


 年齢よりも幼く見えるその仕草と表情。少し前の私であれば見惚れて想いが溢れそうになっただろうが(だが想いは告げられないだろうが)、今の私は比較的冷静に対応出来ていた。

 親友と付き合い始めたから冷めた、という事ではない。いや、それもあるかもしれないのだが、私の中では今もなおメアリーは魅力的な女性として映っているし、彼女が喜ぶ姿を見るのは喜ばしい事だ。ただこれはシャルやシルバのように、友人として大切な存在が喜ぶから嬉しいという、ただそれだけの感情なのだと俯瞰的に見ることが出来るのである。……見る事が出来てしまうのである。


――しかし、恋の話、か。


 ヴァーミリオンはメアリーと結ばれ、シャルは新しい恋を見つけ、シルバも無自覚だがなにやら一目惚れを受けて良い感じの相手が居て、エクルは先ほど見た限りでは憑き物が落ちたように色んなことに前向きになっていて恋でも見つけそうだ。

 私はどうなるのだろう、とふと思う。

 新たな恋を見つけられるだろうか。政略的結婚をするだろうか。

 ヴァーミリオンにも言ったとおり、基本私がするとしたら後者だ。前者に関してはメアリーが奇跡なだけであって、性格の悪い私が出来る可能性は低い。スマルトのように前者と後者を結びつけて成し遂げる事もできるだろうが、稀な話だろう。

 私がメアリーにこのような表情をさせる話題を提供できる時は、いつに――


――いい加減うじうじするな私!!


 いけない、またマイナス思考に陥る所だった。何度繰り返せば気が済むんだ私は。

 あの堅物で初恋引きずりそうなシャルですら早くも新たな恋を見つけたんだぞ。私が始めから出来ないと決め付けてどうする!

 それに始めはマイナスでも、あるいはゼロから始まるような政略結婚だとしても、一緒に過ごしていく内に恋や愛が育まれる可能性だってある。ならば恋愛も政略も前向きにして、間近で見る羽目になるメアリー達に対し幸せであると言う。それで充分だろうが!


「どうしましたアッシュ君。なにやら決意に満ちてますが――まさか、アッシュ君も新たな恋を……!?」

「私の恋を一身に受けていた貴女がそれを言いますか。ええ、貴女に再度一目惚れしたので付き合いませんか?」

「ごめんなさい、私には大切な人がもういるので」

「そうですか、残念です。……しかし、こうやって早めに告白しておけば結果は変わっていたのですかねぇ。クロさん達からも押せばいける性格だって言われていましたし」

「達ってなんですか、達って。他にも言う人がいるのならそれは違うと言いに行きたいのですが」

「ひとまず思い浮かぶ限りでは1329人です」

「そんなに私がチョロイって思われてるんですか!?」

「学園祭以降のメアリーに対してなら私達、攻略対象? ならばいけると多くのヒトが思っているようですよ。大丈夫、一度決めたらチョロくは無いとも言われてますし!」

「なら良かった、とはなりませんよ!? じょ、冗談ですよね?」

「しかしリオンはいつ来るんでしょうね。恋人を放っておくとかなにやっているのやら」

「露骨に話題を逸らさないでくれます!?」

「そういえば知ってますか。カーバンクルって実は……」

「アッシュ君、こちらを見てくださいアッシュ君ー!」


 私の話術で慌てふためくメアリーの姿に、何処か楽しさを感じる事に自身の性格の悪さを感じつつも、結婚式の開幕はもうすぐそこまで来ていた。



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