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銀と成長_2(:銀)


View.シルバ



「それでも私は行かねばならないのです。エクルさんにまずは聞かねば、とぅ!」

「概念拘束を抜け出した!?」


 と、いう感じにメアリーさんは僕が初めて見せた魔法を解呪し、恐らくエクルの所へと向かっていった。仮にも僕の特殊な魔力で、強めの他の通常魔法とは違う拘束であるにも関わらず、瞬時に解析をしていくあたり流石のメアリーさんだが、なんとなくクリームヒルトに教わった才能の無駄遣いという言葉が評価として適切な気がするのは気のせいではないだろう。


「ええい、何処行ったんだメアリーさん……!」


 そして僕は暴走しそうな、あるいは既に暴走しているいつものメアリーさんを追いかけた。相変わらずの身体能力と行動力で、気が付けば会場である聖堂から恐らくエクルが居るであろう場所に行った彼女はすぐに見失った。このままではメアリーさんが本当にホーミングブーケとかいう凄いのだけど凄いと認めたくない代物を開発し、ヴァイオレットに渡しかねないと思うと早めに止めておきたいのだが……


「……まぁ良いや。大事にはならないだろうし」


 出来れば止めたいが、全力で止めるほどの事でも無い。むしろ僕が必死になればなるほど事を大きくするものであると判断すると、このまま会場に戻る事にした。頑張れエクル。メアリーさんの暴走はお前が止めるんだ。もしくは彼氏としてヴァーミリオンが止めると良いと思う。友人である僕はここまでである。


「あれ、シルバ?」


 聖堂に帰るためにここは何処かを把握しようとすると、その前に声をかけられた。

 ここに居ると思っていなかったというような声は、今日の主役の一人であるクロさんのものである。


「もしかして式の前に挨拶に来てくれた感じ?」

「ちょっと違うけど、折角会ったんだしそうさせて貰おうかな――」


 僕は息を整えクロさんの方を見る。そして一瞬言葉に詰まった。

 着ている服は奇抜な特徴がある訳でもない黒色のスーツ、あるいはタキシード。そして白いシャツ。髪は普段と比べると整えている事が分かるような落ち着きをみせている。ただそれだけだ。

 けれど今まで見て来たクロさんとはまるで違っていた。どう違うか、という言語化は難しいが、僕が持っている知識で言うと……別世界のヒトになった。そんなイメージを持ってしまう。


「どうかした? 息も荒れてるし、なにか――あ、メアリーさんがなにかした?」


 そこでメアリーさんの名前がすぐに出てくるあたり、クロさんと僕のメアリーさんの認識はそう変わらないのではと思いつつ、息を整え、思考を整えクロさんに言葉を返した。


「その衣装、お似合いだなって思って。見惚れちゃってつい言葉が止まっただけだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいな。(つく)った甲斐があるというものだよ」

「ちなみにメアリーさんがなにかしようとしたのは事実だよ。先に言っておくけど、ごめんね、本当に」

「なにをしようとしているんだ……!?」


 先程起きた事を説明しつつ、僕はクロさんを観察する。

 あたたかみがある、年齢もそう変わらないはずなのに大人と感じる、僕より身長が高いとはいえ太っている訳でもないのに大きく見える。


――これが、ヴァイオレットを変えたヒト、か。


 ふと、クロさんに対してそのように思う。当然クロさんだけが変えた訳ではないだろうが、一番大きな要因は間違いなくクロさんだろう。

 ヴァイオレットは嫌いだった。一生分かり合えないような、思考も分からないような存在であった。

 けれど彼女は僕よりも遥かに人々に慕われ、想いを伝えたいヒトと分かりあって、僕にとって異性の友人と言っても良いような形に落ち着いている。

 クロさんであれば学園に居た頃のヴァイオレットに対してもなにか出来ていたのだろうか。もしかしたらあのような出来事が起きずにいただろうか。そんな無意味な妄想をしてしまうほど、今のクロさんはあまりにも主役といった様相であった。


「――という訳で、ヴァイオレットも協力してエクルが攻撃を受けて告白するかもしれないんだ。そんな事があっても後でメアリーさんには後でこっちから()っておくから、ホーミングブーケは最悪そのまま投げさせても良いと思うよ」

「ホーミングブーケとか一生聞きそうにない単語が出て来たな……まぁ了解、ありがとう」

「それにしても本当に立派なスーツだね……ドレスもクロさんだって聞くし、うーん……」

「どうした?」

「……うん、将来的に結婚したら僕も手作り! とか思ったけど、絶対碌な事にならないからやめておこう。クロさんと言う例外は気にしない事にした」

「はは、例外扱いか、俺は」

「変態扱いの方が良かった?」

「服飾に関しては変態扱いで良いぞ!」

「良いの!?」

「変態じゃなきゃその道は極められないからな!」

「そ、そうなんだ。あ、じゃあヴァイオレットに対しては……」

「まぁそちらも変態に……なるだろうな、うん、なるわ」

「なるんだ」


 僕とクロさんは冗談を交わし互いに笑い合う。いや、冗談じゃないかもしれないけど。

 ……僕も一瞬、変態になった方が気も楽になるし良いのかな、と思う。なにせ普段は結構まともだけど、変態なジャンルに置いては成功しているヒトが目の前に居るんだ。今まで避けていたけど、検討するのも良いかもしれない。


「なにか決意に満ちているけど、なにかあった?」

「次に好きになったヒトに対しては、クロさんを見習って変態になろうかと」

「行動が痴漢とか無理矢理じゃなきゃ、止めはしないけど……」

「そこは安心して」

「なら良いけど。しかし次に好きになった人、か」

「うん。しばらくは無理そうだけど、クロさん達みたいな、所構わずイチャイチャ変態夫婦を目指すよ!」

「その言い方だと流石に誤解を生まないか!?」

「でもそんなに間違ってないと思うよ。うん。多分九割はそう言う」

「そうか? ……そうだな」

「納得するんだね」



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