黄褐と菫_2(:菫)
View.ヴァイオレット
「急になにを言っているのかな、ヴァイオレットくんは」
「数多の経験を誇る魅力的な女性、知識豊富な研究女性、渋く経験豊富な思慮深い男性。なにが不満だ?」
「性を食事として貪る女性と、気を抜くと怠惰になる女性と、能力喪失前は人の醜い所を見るのが好きな倒錯カニバリズムな男性は流石にどれも遠慮したいよ。前者二人はまだ――いや、そういう意味じゃなく」
私の発言になにを言っているのだろうかという表情で見るエクル。その気持ちは大いに分かる。私もする対象が罰なのかと言いたくなるような告白などしたくない。特に三人目は論外である。同性云々を抜きにしても、今は大人しくしているらしいとしても絶対に嫌である。
「あー……もしかして後腐れない相手の方が良いからその三人を上げただけで、告白する相手は誰でも良いから、恋愛に積極的に行けとかそんな感じ?」
「おおよそはそんな感じだ。今のエクルは――」
「恋愛に臆病とか、だろう。トウメイくんとかにも言われたよ。……まぁ前向きにはなっているから、心配されるほどでもないから安心してくれ。いずれ結婚もするから大丈夫だよ」
「と言うと、良い相手がもう既に?」
もしやバーントとアンバーのようにいつの間にか、というやつなのだろうか。二人と比べるとエクルは接点が少ないのでおかしくは無い事ではあるが……
「必要ならするよ。皆が自由恋愛だから麻痺しているかもだけど、貴族の結婚ってそういうものだろう? その中でキミは偶然良い相性の相手だったというだけだし、私も同じになるかもしれない。だから、まぁ、それに期待してくれ」
「そうか。では私は全力でエクルにブーケを投げよう」
「話聞いてる?」
「聞いてはいるが聞く気はない!」
「堂々と!?」
傍に控えているアンバーが「止めた方が良いのだろうか」という目で私を見たが、大丈夫だと視線で返事をすると、すぐに視線を戻した。
「良いかエクル・フォーサイス!」
「は、はい!」
「お前は恋愛に関して、自分の罪がとか罰とかで“出来ないもの”と思っているかもしれないが――」
私はドレス姿のまま、右手人差し指でエクルを指し示しながら大きめの声で言葉を続ける。
「お前はモテないだけだ!!」
「えっ!?」
私の続く言葉が予想外だったのか、今まで見て来たエクルの中でも、最も衝撃……というよりは、不意を突かれて理解出来なさそうな表情になっていた。
「エクル。ショックなのは分かる。日本では数多の乙女に恋に落とした者と同じような外見と立場だから勘違いしたかもしれないが……時には残酷な事に気付かなければならないんだ」
「自分で言うのもなんだけど、私って結構モテる方だと思うんだけどな……」
エクルは女性人気は高い。外見は整い、仕草も嫌味もなく綺麗で、性格も人当たりが良くてよく相談されるような優しい性格だ。あと眼鏡が毎日変わってどれが良いのかとかの論争が巻き起こったりもする。
ただ、貴族の身分云々を関係しないにしても告白はされない。されないというよりは、されないように動いていると言った方が正しいかもしれないが、浮いた話はあまり聞かない。これもエクルの立ち回りの上手さによるもの、でもあるのだろうが。
「思い返せ。お前が向けられていた感情は――前世の時、どういう感情で向けていた感情だ?」
「…………。憧れでドキリとはするし、付き合えたら良いなとは妄想するけど、実際に付き合うとなって傍に居続けられると疲れる異性……?」
そうなのか。私はもう少し違う、憧れであって恋愛では無い的な事を言おうとしたのだが。
「まぁそんな感じだ。だから恋愛的に求められない……先程の三人とそう変わらない目で見られている」
「そ、それは流石に言いすぎじゃないかな!?」
「だからお似合いだと思うから、私はブーケを渡して告白させてみせる!」
「お願い話を聞いてよヴァイオレットくん。キミは今、学園の頃とは違う理不尽さを出してるよ!」
「知っている。という訳でスミレ、メアリーに“エクルにブーケを渡して告白する勇気を与えたいから協力してくれ”と伝えてくれ」
「承りました」
「承りしないで!? あ、ちょっとスミレくん!?」
スミレは素早く、凄い勢いで、しかし静かに音も立てずにメアリーが居るだろう所へと去って行った。追いかけようとしたが、追いつかないと判断したエクルは私を恨めしそうに見る。
「ヴァイオレットくん、私になにか恨みがあるのかな……?」
「謝罪はされたが、学園で私を孤立させるように、私の周囲に居た者達(※取り巻き)の所業以外も私のせいにするように噂を流していた事だろうか」
「それは……うん。まぁシキでの所業も含め恨まれても仕様が無い事ばかりだけどさ。もうちょっと違う方法があっても良いんじゃないかな?」
「そう言われても困る」
私はふぅと小さく息を吐き落ち着く。
その様子にエクルは疑問顔になったが、次に続く言葉に再び不意を突かれた表情となった。
「お前は自分の納得する罰の受け方でしか、罰を受ける気が無いんだからな」
「……え?」




