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~控え室から、会場へ。-漆黒と純白-~


~控え室から、会場へ。-漆黒と純白-~



「いやはや、凄いドレスだったね。まさに美。という感じのドレスにスーツだ。そう思わないかなヴァイス」

「そうだよね。教会に飾ってあったから何度か見てたけど、着る前と着た後でこんなにも印象が違うとは思わなかったよね、シュバルツお姉ちゃん」

「まったくだ。クロ君の腕前には感服するばかりだよ」

「でもお姉ちゃんにも感謝してたよね。糸と布を仕入れてくれたお陰です、って」

「まぁ力になりたいから協力したし、私の仕入れの結果があの美に繋がったのなら良い事だけど、割とシビアな仕入れだったな……その分見返りは貰ったが、割と口車に乗せられて集めた感じがあるね」

「そ、そうなんだ。クロさんって意外と抜け目ない所もあるし、目的のためなら、ってやつかな」

「最初の頃は領主をやるには警戒心が足りない抜けた性格だ、と思っていたのにねぇ。今は目的を決めたら突っ走るし清濁併せ呑み、そしてあの服の美に相応しい男性にしか見えないよ」

「最初……そういえばお姉ちゃんってどうしてシキに来たの?」

「仕事だよ、仕事。行商人としては、変な話は多いが質が良い製品が流れてくる、という噂がある土地にはいかないと駄目だからね。まさに商機だよ」

「そんな噂があるんだ」

「うん。他には“行ったが最後、正気ではいられない”という噂もあったが……」

「そ、そうなんだ。でも行ったんだね」

「あの頃はヴァイスの孤児院に送るお金も必要だったからね。色々突撃する勢いだったよ。あの頃の激しさはあまりヴァイスに見せたくないな、と思うくらいだ」

「そっかー。…………」

「どうした、ヴァイス? もしなにか気になる事か、結婚式の仕事で忙しい事があるのなら、遠慮なく私に――」

「ねぇお姉ちゃん。嘘、吐いてない?」

「……どういう意味かな?」

「シキに最初に来た理由。もしかして……もっと、なにか別の。例えばどうしてもお金が必要になったから、危険な事をするために、」

「そこまで、ヴァイス。憶測で、自分の中でも半信半疑な事を安易に口に出すべきではないよ」

「じゃあ憶測でも、半信半疑でもなくなる答えを聞かせて。……僕に隠している事は無い?」

「まずそれに答える前に、何故そう思ったのか聞いても良いかな?」

「……お姉ちゃんが何処となく最近、結婚式に出席するつもりがなさそうだったのと、祝いというよりはお詫びの品のような贈り物。それと……昔アゼリア学園の生徒さん達が来た時。その理由が操られた形跡のない、生息域から離れたフェンリルが現れた、って事かな。……お姉ちゃんはモンスター達と自分の子供のように話せるからさ」

「なるほど、色んな理由がある訳だ。そして今聞いたのも、今じゃないとはぐらかされそうだからかな。もし言った通りだと、罪悪感につけこんだ話し方だから、我が弟ながら良い交渉(といつめ)をするようになったと褒めた方が良いかな?」

「お姉ちゃん、答えて」

「今じゃないと駄目かな。結婚式の後じゃ」

「今、お願い。聞かないと結婚式に集中できそうにないから」

「そうかい。でもごめん、答えられない」

「お姉ちゃん」

「ごめん。確かにヴァイスには隠している事はある。だが、それを話しても楽になるのは私だけなんだ。だから話せない」

「僕とお姉ちゃんは唯一の家族だよ。辛さを緩和出来るなら、僕話してほしいと思う」

「そう言われると嬉しいよ。だが駄目なんだ」

「……僕がまだ子供だから?」

「それが理由じゃない。ヴァイスはマゼンタ君の過去も今も受け入れる覚悟を持つほど成長した。話しても受け入れてくれる強さを持っているだろう」

「だったら――」

「それでも駄目なんだ。話した方が私は楽になる。話さない方がヴァイスの私への不信感を抱え、信用してくれずに傷つくと分かっていても、話せない」

「……そう、なんだ」

「ああ、そうだとも」

「…………」

「…………」

「……そっか。じゃあ僕はお姉ちゃんが“こういう風に意味深に言っているけど実はたいしたことではなく、闇を抱えている自分が格好良い”と思っている事にするよ」

「おっと、それは厳しいな。だがそう思われるとしよう」

「でもお姉ちゃん。いつ話しても良いからね?」

「ああ。その時が来れば話すかもしれないね」

「うん。……あ、そうだ。もう一つ聞きたい事があったんだけど……いや、これは流石に違うか」

「内容は分からないが、気になったのなら一度聞いてみると良い。違うという事を改めて確認する。それも大事な事ではあるからね」

「じゃあ聞くけど、引かないでね?」

「可愛い弟に対して引くなんてないし、なんでも答えるとも」

「えっと……シュバルツお姉ちゃんが、シキではクリア様――トウメイさん以上に脱いで美しさをアピールしているって聞いたけど、所詮は噂だよね?」

「噂だとも。私が美しいから、願望も込めてそんな噂が立っているんだろうね」

「……。ねぇお姉ちゃん」

「なんだい?」

「嘘吐いているよね?」

「吐いていないとも」

「僕、ちょっとはヒトを見る目はあるんだよ。なにせ外見で避けられて来たからね。それで最近はお姉ちゃんも見るようになってきたんだけど、今のお姉ちゃんは嘘を言って――」

「ようしヴァイス、そろそろ(わたし)達にとって大切なクロ君達の結婚式だ。遅れてはならないぞぅ!」

「あ、待ってお姉ちゃん! ねぇ、噂の夜の全裸月光浴びとか、酒場で脱衣トランプで勝敗関係なく脱いだとか本当なの!? 僕には話さないようにしてたみたいだけど、昨日前夜祭で酔いまくったヒトに聞いただけだけど、なんだかシキの皆さんの共通認識みたいになってたから事実なら困るんだけど! ねぇ、お姉ちゃーん!!」



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