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空と澄青との一種のイチャイチャ


「スカイさん、こちらにいらしていたんですねぐふっぁ!!」

「「スマルト君!?」」


 アッシュの弟にしてスカイさんの暫定婚約者であるスマルト君が、スカイさんを探しに来た様子で俺を見るなり何故か悔しそうに倒れそうになり、なんとか壁を支えに持ちこたえた様子であった。


「だ、大丈夫ですかスマルト君?」

「だいじょうぶ、です。申し訳ございません。クロさんの衣装を見た瞬間、自分との差にダメージを受けまして。やはり貴方は越えるべき壁……!」


 スマルト君、お前もか。

 というかそれでダメージを受けるのは良い。良いが、スマルト君も大分シキの影響を受けすぎやしないか。


「スマルト君。クロを超えずとも、貴方は――」

「言わずとも分かっております。私には私の美点がある。しかしこればかりは目標という壁と認識し、超える努力を続ける必要があるのです。そうしなければ、私が大好きで大切なスカイさんに申し訳なく思ってしまうのです……!」


 おお、何処かのシロガネと比べると健全な壁である。シロガネ自身も似たような感じなのかもしれないが、他者の不幸は喜ばず、まだ子供であるが自己研鑽を怠らず真っ直ぐな所が健全に感じるのだろうか。


「そ、そうですか。……あ、あのスマルト君。嬉しくはあるのですが、そう簡単に好きといわれると照れてしまいますし、言葉が軽くなってしまいますよ?」

「私は何処かの兄のように、気持ちを伝えられずに破局するくらいなら、想いを伝え続けたいと思うのです」


 言われているぞ何処かのお兄さん。そのお兄さんは好きになった相手が相手なだけな感じもあるので、あまり言わないでやって欲しいが。


「ありがとうございます。嬉しいです。……ですが、今の言葉は結構な相手に刺さるのでやめておきましょうね。かくゆう私も刺さりますし」

「え、あ、ご、ごめんなさい!」

「いえ、気にしなくて良いですよ」

「え、ええと……その……」

「ですが悪いと思っているのなら、刺さっても大丈夫なくらい、壁に挑み時には超えるような私を夢中にさせるヒトになってくださいね。私を立ち直らせてくれた、旦那様候補君?」

「は、はい。必ずなってみせますとも!」


 おお、これは仲が良くてある種のイチャイチャと言っても良いのではないだろうか。それともまだ候補止まりな事を姉弟のような感じで恋には発展していないと思うべきなのだろうか。どちらにしろ俺がとやかく言うべきことではないだろうが、仲良くやっているようでなによりである。


「つまりスマルト君の当面の目的は俺に戦いで勝つ事、もしくは服飾とかを越える感じかな?」

「それも目指しますが、まず最初にどうしても超えたい壁がありますね」

「へぇ、それは?」

「……腕相撲(アームレスリング)で、せめて片腕のスカイさんに両腕で勝つ事です」

「……そうか、頑張って。肉を食べるのと日々の積み重ねだ」

「お、多くは食べれないのですが、頑張ります」

「無茶はしないでね」


 スマルト君、アッシュと一緒で線が細いからなぁ……成長期がまだというのもあるだろうけど、腕だけ見たら華奢な女の子のような細腕だし、鍛えているスカイさんに勝てないのも仕様が無いだろう。まぁ世の中には華奢なのに純粋な力なら俺の両腕よりも片腕の方が強い妹も居るから、見た目はそう関係ないかもだが。


「そういえばクロさんは普段どのようなトレーニングを?」

「俺? 指立てとかランニングとかストレッチとかかな? 俺は感覚の維持に努めているから、鍛えるとはちょっと違うけど教えようか?」

「そちらも気になりますが、戦闘訓練の勘はどの様に習得したのです?」

「あー、そっちか」


 俺の戦闘の勘が鍛えられるようになったは、前世の二十一世紀という比較的平和な時代で喧嘩に明け暮れた日々が主だ。その経験と、格闘技を色々齧る(ビャク)に対し模擬戦を付き合ったりしたのが俺の勘を鍛えた日々である。

 その経験を今世でも活かし、充分な下地があるからモンスターとの戦いも上手くなっていった、という感じだ。正直この世界で格闘の道を進もうとした人達からすればズルに近い。だからアドバイスできる事があるとすれば……


「自分の良心を犠牲にすれば叶えられる方法はあるけど……聞いとく?」

「ほ、方向性的にはどの様な……?」

「気に入らない不良共に片っ端からぶん殴っていく感じ。良い奴とか普通の人々を殴ると警戒が強まるし周囲から非難されるから避けて、人に迷惑をかける奴を殴って行き、復讐に来る奴らとの極限の戦闘を――」

「自分なりに鍛えようと思います!」

「それが良いよ」

「……クロさんはそういう事をされていたので?」

「とある魂の妹がその身を賭して止めに来るまでは割りと」

「そ、そうなんですね。……ちょっと乱暴者の方が女性は惹かれる、という奴かな……?」

「「やめなさい」」


 俺とスカイさんは、変な方向に行きかけたスマルト君に絶対真似しないように強く言っておいた。ああいうのは正直真似して欲しくはない。スマルト君にはスマルト君の強くなるなり方があるのである。具体的に言うと、手数を増やしてヒット&アウェイの弱点を突いて罠を解除できるような強さだ。……この特徴だと斥候か、ゲームで言うと盗賊の職業みたいだな。

 ともかく、スマルト君はスマルト君らしくスカイさんと仲良くなって欲しいものである。



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