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白銀の壁


「くっ、相変わらず仲がよろしいようですね、クロ様」

「シロガネか」

「あ、シロガネ君だ。やっほー」


 俺がカナリアといつものように話していると、血涙を流しそうな勢いで悔しんでいるのをどうにか我慢しているような表情のシロガネが表れた。傍にソルフェリノ義兄さんやムラサキ義姉さんが居ないので、カナリアを探して此処にきた感がある。


「(神父様。確か彼ってシロガネ・V・スチュアートという、ソルフェリノ卿の従者で幼馴染で従兄弟でしたっけ)」

「(ああ。そしてカナリアに一目惚れしアピールし、同時にご覧の通り俺でも分かるレベルでクロに嫉妬心がある)」

「(神父様が言うならよっぽどですね)」

「(ネロもそれを言うか……ちなみにクロが呼び捨ての理由は、単にカナリアと付き合うなら俺を越えていけ! というような感じの事をシロガネに言われて突っかかるから、もう面倒で呼び捨てになっている)」

「(クロが言ったんじゃないんかい)」


 スノー達の会話が若干聞こえるが、カナリアは大事だから変な男と結ばれて欲しくないという思いはある。もちろんカナリアの気持ちが大切なので、あまりとやかくは言わないが、俺を超えていけ的なまでは行かないが俺から見てしっかりした相手が良いとは思う。

 けれどシロガネはなんというか、俺を超えたがっているというか、「クロ様を超えずしてカナリアさんに相応しい男か。いや超えてこそ相応しい!」という感じでいる。一応俺はそれに対し「俺を超える云々よりカナリアに本気で好きになってもらう前提を叶えろ。そうすれば自然と俺を超えているだろう」的なスタンスであり、正直彼ならカナリアと付き合ってもいいと思う男性であると思っている。が、何故か今ではシロガネにとってはカナリアに好きになってもらうと同時に、俺は超えていくべき壁となっているのである。


「改めまして、此度は御結婚及び、式のお招き頂いたばかりか、屋敷の件など様々な便宜もはかってくださりありがとうございます」

「いえ、ノアの箱舟の時にお世話になりましたし、当然の事です」

「時に先ほどクロ様のスーツやヴァイオレット様方のドレスが変態と聞こえたのですが……私には素晴らしい衣装に思えますが、どういう意味なのでしょう。今後のためにお聞かせ願う事は出来るでしょうか?」

「あー、それはなんと言いますか……カナリア」

「うん、ピッタリで似合いすぎていて、もう本人の趣味とかそういう次元ではなく、身体の隅々まで熟知した上で作ったんじゃないかと思うほどの衣装だった、って意味だよ」

「な、なるほど。……実際熟知されているので?」

「数値上は、まぁ。後は相手の事を思いながら縫うと、自然と良くするためのアイデアが浮かぶんですよ」

「なるほど、職人としての経験則、というやつですね。デザインも素晴らしいですし、流石はクロ様」

「ありがとうございます」


 まぁ細かなアレンジはともかく、デザインに関しては前世の友人がデザインしたものだけどな。俺のデザインセンスだとなんかテンプレートなデザインにしかならないし。それでも俺の中での組み合わせで現状最高傑作にはなっている。あの衣装を作れて本当に誇らしく思う。

 なお、ヴァイオレットさんとシアン、俺とスノーの衣装のどちらが最高とか優劣は無い。俺が作る、その相手にとっての最高傑作という意味だ。


「しかし今後のために、というともしやシロガネと……」

「今後お二組に触発されて、もう一度結婚式をしようと言いかねない我が主達のために、ドレス発注の技術者選定の参考にしようかと」

「な、なるほど」


 確かにあの夫婦……というかソルフェリノ義兄さんはやりそうだな。ムラサキ義姉さんは止める側だろうが、流されるというかやってみたいと思う可能性もある。それを考慮すると、少しでも聞けるものは聞いておいたほうが良いであろう。従者兼右腕も大変だな。


「あと、変態を褒め言葉のように言っていたので、私もなるべきなのかな、と」


 おい、惚れた弱みとは言わんが、似たような感じで変に暴走しようとしてやいないか。それだと壁になるぞ。


「で、どうなんだカナリア?」

「どういう変態かにもよるけど、シキの皆みたいな感じだったら楽しそう」

「今の私は……つまらない男……!?」

「えっ。いや、そういう訳じゃないよ!? 一緒に居ると楽しいし、つまらないなんて事はないから!」

「ほ、本当ですか!?」

「もちろん!」

「クロ様と一緒に居る時とはどちらが楽しいですか?」

「シロガネ。そこでそういう事を聞くのが良くない所だぞ」

「クロと一緒だと楽しい、とは違うなぁ」

「よし!」

「シロガネ。そういう所だぞ」

「クロとは安堵感で心地良いって感じだからね!」

「私の先の領域――!!」

「え、なんでそんなにショックを受けるの!?」


 なんだろう、このカップル結ばれたとしても面倒な気がしてきた。

 あと俺とカナリアは先の領域にいるかは分からないが、カナリアを異性としてドキドキさせるような事が出来るのは、シロガネが一番出来るのだからそこは誇りに持って欲しい。

 ただバーントさんとアンバーさん、ソルフェリノ義兄さん夫婦やその従者達が「今まで見てきた彼と知らない彼が同時に存在して頭が混乱する」と言われるような態度は控えた方が良いと思う。それも彼らしく恋を楽しんでいるので控えなくても良いと思う時もあるが、ここまでだと俺も思うところがあるのである。



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