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純白の決意と懸念


 俺達の結婚式に対し、何処か後ろめたい事を覚えていた露出強(誤字に非ず)な二人の女性は、女神バレという精神を揺さぶるイベントが起こりつつも結婚式への出席に問題は無くなった。

 別れ間際に「ここは女神様に張り合って自分の美を……いや、それは証明できてもヴァイスに嫌われる気が……でも張り合い高め合いたい……!」というシュバルツさんの言葉は気になったが、多分大丈夫だろう。……多分。


「あ、クロさん。おはようございますっ!」

「あれ、ヴァイス君。おはよう」


 シュバルツさんなら相手が女神だろうと張り合いそうだなと思っていると、彼女の弟であるヴァイス君と出会った。……こちらは本当に良い子で変な癖もないから、とても癒しになる子である。

 普段から祈りのために早起きをしているヴァイス君ではあるが、今日は一段と早く起きたような格好である。


「もしかして結婚式の準備かな?」

「はいっ、いても経っても居られなくなり、こうして最終調整中です! あ、早いですが結婚式おめでとうです!」

「ありがとう。嬉しいけど、あまり無理はしないようにね?」


 ヴァイス君は身体能力は高いけれど、まだまだ子供である。準備で頑張りすぎて本番で疲れてしまう……なんて事にならないようにと注意はしておかないと。


「はい、その事をマゼンタちゃんに注意されて、今はこうして外でトラブルが起きていないかの見回り中です……」


 しょんぼりしているヴァイス君には悪いが、その様子が理由は納得しても感情的には納得できていないからちょっと不貞腐れている、というのがありありと見えて微笑ましく思ってしまう。


「まぁお世話になっている神父様とシアンの結婚式でもあるからね。張り切るのも無理はないよ」

「クロさん達の結婚式だからでもあります!」

「はは、ありがとう」


 嘘が無いと分かる真直ぐな赤い瞳でこちらを見るヴァイス君である。なんだかグレイがもう少し成長すればヴァイス君のようになるんだろうなーと思うと何処となく父性を覚えてしまう。……年齢的には兄心か? いや、精神的年齢を考えれば父性で間違いないはず……多分。


――というか、ヴァイス君は俺にも本当に懐いてくれているよな。


 偶にシュバルツさんにジトーッと見られる程度に彼は懐いてくれている。初対面を除く最初の方から懐いてくれているし、嬉しくもあるが……そこまで懐いてくれるような事をした覚えはないので、少々困惑はしていたりもする。

 まぁ悪い事ではないのでそこまで気にはしていないが……ヴァイス君とシュバルツさんの言葉の端々から見るに、シュバルツさんと違って外見が好きじゃないみたいなんだよな、彼は。こんなに綺麗なのにもったいないとは思うが、そこは個人的に嫌だと思う事であるので触れないでおこう。


「ところでクロさんは今なにを――ハッ、まさかマリッジオルタナティブですか!?」

「そういうのじゃな――待ってなにそれ、初めて聞いた言葉なんだけど」

「え、王国では言わないんですか? 結婚前に“結婚前の自由な身はこれが最後だ。束縛前に自由に異性と遊んでいやる!”という男女問わない精神状態です」

「ならないし、しない。絶対しないよ」

「はい、なのでまさかと思ったのですが……安心しました」


 というかそれが一般言葉になる帝国は一体どうなっているんだ。笑い話の類かもしれないが。


「ヴァイス君はならないようにね?」

「はい? ……い、いや、マゼンタちゃんとはまだそこまで行っている訳ではないのですけど!」

「誰もマゼンタさんとは言っていないよ」

「!? え、ええと、僕はまだ見習いの身であって、そういう事を考える訳にはいかないと言いますか」

「見習いでなければ誰かしたい相手は居るのかな?」

「え、えっと……」


 とても白い頬が分かりやすいほどに紅潮している。やりすぎも良くないが、分かりやすい反応なのでついやってしまう。……さっきのトウメイさんの件もそうだが、思ったよりも緊張しているのだろうか。ならばこれ以上やりすぎないように気を付けねば。


「いえ、そうですね。僕は見習いでなくなり、自立出来るようになればマゼンタちゃんに対してアタックしますよ!」

「え」


 と思っていたら覚悟の表情で俺に宣言してきた。その表情は嘘偽りのない、子供ではないが大人でもない、成長していく過程の姿である。


「……問題はそれまで彼女の心が変わらないかどうかですが、僕は彼女を幸せにするために、好かれるために頑張ります。今日のクロさん達のように皆に祝福されるくらいにはね!」

「そ、そうなんだ。……うん、頑張って。ヴァイス君なら出来るだろうから、その時を楽しみにしているよ」

「はい、ありがとうございます!」


 ヴァイス君に何処かグレイがアプリコットと正式に付き合い始めたと言った時のような感情を覚えつつ、俺は彼の将来を楽しみにした。彼ならばこの決意を途中で諦める事も、失う事もないだろうと思う俺である。


「後は……そのマゼンタさんからの誘惑は多いだろうけど、頑張ってね」

「が、頑張ります」

「……未成年で父になっても、思いつめずに俺か神父様に相談してくれれば良いからね?」

「……その時はよろしくお願いします」


 ヴァイス君の言葉には、自分はともかく相手がどうするか分からず、そして可能性を否定しきれないという感情がにじみ出ていた。

 ……ファイトだヴァイス君!



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