幕間的なモノ-違和感があったので聞いてみたとある領主-
幕間的なモノ-違和感があったので聞いてみたとある領主-
「やっぱりあの二人、告白上手くいったんですね」
「うむ、どういうキッカケかは私も知らないが、急に告白をすると言い出してな。どうやらヴァーミリオン殿下も同じような感じだったらしい。そして上手くいった」
「まぁ傍から見ても両片想い……なのかな。普通に両想いで単にキッカケ待ち、という感じでしたもんね」
「ところでクロ殿は何処で気付いたんだ? 風邪の完治を報告した際に言われた訳でもないのに。……まさか目を?」
「いくら俺がなんか“恋愛の香りがする!”とか感じたからといって目の力を使ったりはしませんよ。トウメイさんじゃあるまいし。力とか使わずになんか違和感あるなーって思っただけですよ」
「違和感……浮かれていたとか?」
「それもありますが、俺がヴァーミリオン殿下に結婚するのならまずは相手に受け入れられないと、という感じの事を言ったら返答が今までとズレていた感じがしたので」
「なるほど」
「あとメアリーさんが俺の噂消しに奔走したにしては噂が全然消えていなかったので、なにかあったのではと。彼女シキの領民に崇められているレベルなのに消えている噂の量が少なかったので」
「な、なるほど」
「しかし結ばれましたかー。正式に報告があるまでは知らぬ存ぜぬで行きますが、お祝いの品とか用意した方が良いんですかね?」
「初めは言葉だけで良いと思う。贈り物は精々特産の物に留め、正式な婚約までは贈り物は避けた方が良いと思うぞ」
「分かりました。……シキの特産って水槽で生まれ育った海産物とかって含まれると思います?」
「……野菜だけでも良いと思うぞ」
「……ですね。特定の特産物、というより人材が誇りみたいな所がありますからね、シキは」
「と、ところでクロ殿。ヴァーミリオン殿下と結ばれた場合のルートにはどんなのがあるんだ?」
「どんなのというと?」
「オトメゲームでの話だ。主人公も違うし、時期なども違うだろうが、殿下と結ばれた場合にはどのような出来事が起きるのかと思ってな」
「そうですね……色々ありますが、ヴァーミリオンルート、真ルートとか攻略をするルートで共通している事と言えば……」
「言えば?」
「とりあえずシキは滅びます」
「とりあえずで!?」
「ほら、シキの地下には封印されたモンスターが眠っていたりするじゃないですか」
「う、うむ」
「他のルートでは目覚めなかったり目覚める前に討伐されたりしますが、ヴァーミリオンが主人公に惚れれば目覚めますし暴れるのでシキは滅びます」
「その世界の殿下の好意はなにか悪いものでも発しているのか?」
「でもシャトルーズルートになると、クレールさんとヴェールさんが思い出したかのように死にますし……」
「その者に関わる物語だから、近しい存在に影響を及ぼして物語を盛り上げる、という感じか……?」
「そんなもんです。それで封印モンスターは基本王家に関わるので王族である殿下の恋に対し“お、恋したな。じゃあ障害となって盛り上げるかぁ! そのためにこのシキは邪魔だぜ!”みたいなノリです」
「ノリかー」
「ノリですー。まぁ本当は流石にそこまで軽くは無いですし、他にもダメージを受ける所はありますがね。それに乙女ゲームの世界の話ですし、関係ありませんから」
「そうだな。……いや、しかし……」
「どうしました?」
「……単に無事なだけで、そのオトメゲーム世界の災厄はルートによっては起きない物も、この世界ではもれなく全て起き出しているから、この世界の方が危ういのではないか……?」
「……セルフ=ルミノスとか、善良ですけどトウメイさんとか目覚めていますしね」
「ノアの方舟も本来起動すらしない物であるし……」
「…………」
「…………」
「よし、事実は小説より奇なりというやつです。という事にしておきましょうそうしましょう」
「う、うむ、そうだな。奇でも滅びなかっただけ良しとしよう」
「ですね。むしろ解決したから凄いんです。起こるべき災厄を前倒しで処理しきったと思いましょう」
「うむ。……結婚式を機に、穏やかな日常をクロ殿と過ごせるようになると良いな」
「はい、そうなるように祈りましょう」
「シキに居る間は穏やかさとは無縁になりそうだがな」
「ですがシキ以外というのも今更な感じがしますがね」
「ふふ、確かにな。穏やかではなくとも、楽しい日々を過ごせると良いな、クロ殿」
「はい。ヴァイオレットさんやグレイ達と楽しい日々を――」
「御主人様、御令室様! ブライ様とアリスブルー様が少年と少女の想いをぶつけ合って間に挟んでいた互いの武器が生命の鼓動を放ち始めています! 念のためお二人も確認をしてください!」
「待って意味分からないだけどアンバーさん」
「……とりあえず見に行こう、クロ殿」
「そ、そうですね。……本当、退屈はしないな、シキは」




