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幕間的なモノ-酒場で語り合うフラれた男達-


幕間的なモノ-酒場で語り合うフラれた男達-



「おや、シャルくんにアッシュくんにシルバくん。皆で飲み会かな」

「あ、エクル。そうだけど、もしかしてエクルも?」

「まぁね。お酒は禁止だけど“夜は用があるから俺は作れん。栄養のあるもの食ってこい”って感じでね」

「ふぅん。そもそもアイボリー先生って料理できるの? なんか怪我以外興味無さそうだけど……」

「怪我を治すのに栄養は大切だから料理は一通り学んでいるってさ。ただ味は保証しないらしい。座って良いかな」

「良いよ。……確かに怪我のためなら作りそうだと思ってしまうなぁ」

「はは、確かにあまりしそうにないからねー。所で君達は…………なるほど、正式にフラれたヤケ酒会か」

「勝手に」

「納得しないで」

「大体あってるがな」

「ははは、そうかい。じゃあ私はそんなキミ達に奢ろうかな。残念だったねという美酒に酔えるお礼さ!!」

「性格悪い!」

「自覚はあるさ」

「自覚あっても治そうとするべきであり自覚があれば開き直って良い訳ではないぞエクル」

「……厳しい事言うね、シャルくん」

「励まそうとして憎まれ口を叩こうとしている先輩に、それは必要ないと言っているだけだ」

「ああ、だからいつもより口が悪かったのですね。普段から割と悪いからちょっと気づきませんでしたが」

「うん、エクルって割と普段から悪役っぽく振舞って“憎まれるのが自分に相応しい”とか思っている節があるから気付かなかったよ」

「キミ達、私の事をそういう風に思っていたのかい」

「アレです、クロさんが言っていたチューニビョーってやつですよね」

「アプリコットもそうらしいけど、種類が違うタイプ」

「自分が罪を背負っているから罰を受けていないと自分を安定できない奴だな」

「……キミ達ねぇ」

「言いたい事があるのだろうが、今日はお前だけを仲間外れにはしないという意味で俺達も言っている」

「仲間外れ?」

「貴方も私達と同じメアリーにフラれた仲間という事ですよ。ささ、ノンアルコールで良いので飲みましょう?」

「……分かったよ。まぁ確かに私は正直“ワンチャンないかな”と思っていたしね」

「犬?」

「違うよ。――大将! へしことシニュッチェル! シニュッチェルにソースを浸して食べるからよろしく!」

「濃い味頼むね。というか後者はやめた方が良くない?」

「私の前世の立派な郷土料理だよ。かつてこの世界でも広めようとして失敗したけどね」

「あったし失敗したんだ。というかエクルも狙ってはいたんだね」

「まぁね。こういってはなんだけど、前世での私はメアリー様のお世話をするまでぼんやりと生きている女でね。彼女が生きがいだったんだ。そんな彼女も失って抜け殻のまま生き、死に、転生した。デジャヴを感じる今世で色々この世界を調べていたら、二度と出会えない生きがいと出会ったんだよ。そりゃもうお傍で喜んで貰えるならそれ以上は無いよ。――あ、どうも大将。カツ……シニュッチェルどうもです」

「なるほどねー。でも恋愛的にフラれた……とはちょっと違うね」

「違うのですよシルバ。エクルはこう言っておけば“自分は他と違う”という自己催眠をかけているのですよ」

「ああ、別種のチューニビョーってやつね」

「ねぇそれ本当にやめて。……ところでなんで急に今日飲み会を?」

「エクルの所にも来てないか? 交互に来るメアリーとヴァーミリオンを」

「ああ、皆の所でもすれ違ったんだ……という事は」

「そ、どうせ結ばれるだろうから改めて、って感じ。集まったのは偶然だけど」

「どうせって」

「そうも言いたくなりますよ。出会った時上手くいかないとかあると思います?」

「……ないなぁ。傍から見ても両想いだし」

「そのくせ告白まで長いしな」

「進むと言うくせに進まないしな」

「なにを見せられてるんだろうってよく思ったよね」

「「「「早く付き合えって感じだったなぁ……」」」」

「……うん、これフラれた男達の飲み会というより」

「見守ってきた者達としてアイツらを愚痴る感じか」

「見守って来たのかなぁ。邪魔とかちょっかいとかの方が多くない?」

「邪魔やちょっかいは、メアリーにゲーム通りに進んでいると思わせるために、イベント以外では割り込まないように裏で調整していた何処かに居る先輩がした事を言うのですよシルバ」

「え、そんな事してたのエクル」

「少しはしたけど……いや、うん、そこは謝るけど、これだけは言わせてねアッシュくん」

「なんです?」

「なにかしようと思ったらいつの間にかメアリー様が解決して、ゲーム通りに進めているから私の出来た事はあんまなかったりするんだ」

「……そうなんです?」

「いや、だって私も一緒にゲームをやる所を見ていたし設定本? を読んだから多少は知ってるけど、掃除とかで見ていない時もあったし“よく分からないけど楽しそうだなー”が基本だからね。……あと十数年前の話だし」

「あー、つまり裏で手は回した事は回したけど、メアリーさんが持ち前の力で事を運んでいくから不発が多いって感じなんだね」

「うん。不発に終わった奴……他国に行って商売をするとかそういう奴のために固めていた地盤はそのままフォーサイス家の事業に回しているけど……うん……本当に使わない奴が多かったなぁ……」

「……まぁメアリーは俺達の想像の上を行くからな」

「……むしろ収まった事の方が少ないよね」

「……偶に分身していたりするのではと思う行動しますからね」

「「「「でも惚れてしまったんだよなぁ……」」」」

「…………よし、私達は既に吹っ切れたメンバーですが」

「うむ、陰で愚痴を言うのは騎士として良くは無いが」

「過去のメアリーさん……二人について愚痴でも言い合おう」

「私は前世も含めようかな。気が付けばベッドの上でお金を稼いでいてそのお金でゲームを多く買ったメアリー様とか」

「どうやったか知らないけど、それは凄いだけで愚痴になるの?」

「一日で私の月給以上を稼いで無垢に“すごいでしょ!”とか言って税金対策に頭を悩ませたりしたものだよ」

「……凄いが、メアリーならありそうだと思ってしまうな」

「まぁ夜は長いです。色々と語り合いましょう――――」


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