近くで高め合う男友達(:白)
View.メアリー
ととのう、で色々ありましたが、温泉でさっぱりし意気揚々とヴァーミリオン君を探し始めました。今の私なら例えドラゴンが来てもセルフ=ルミノスが復活しても、トウメイさん現象がシキで起きてもどうにでも出来そうな気分です。そしてその気分を全て告白につぎ込むんです!
「どうやら告白を決めたようですが、張り切りすぎて空回りしないようにしてくださいねメアリー」
「最初の一言がそれですかアッシュ君」
もう様子を見て感じ取られるとかそういう以前に、確信を持って今日初めて会うにも関わらずアッシュ君にいきなり告白を見破られました。
なんですか張り切っているだけなんですからクロさん達の結婚式が楽しみとか色々あるでしょうに、なんでそう簡単に見破られるんですか。ヴァーミリオン君が告白すると言うのはアッシュ君は知っているんですから、告白を受けて浮かれているとか考えてもいいじゃないですか。
「分かりやすいんですか。私はそんなにも分かりやすいのにヴァーミリオン君だけにはバレていないとなると、彼は鈍感難聴系主人公ということなんですか?」
「落ち着いてくださいメアリー。そこは恋は盲目という言葉に倣い、好きな相手だからこそ相手の素晴らしさに夢中になってしまい分からずにいてくれる、と思いましょう」
そう言われると、その……なにも言えなくなってしまいますね。複雑ではありますが、そう思うとしましょうそうしましょう。
「ごめんなさいアッシュ君。ほぼ四連続で気付かれて少々取り乱しました」
「構いませんよ。まぁヴァーミリオンの奴が鈍いのは確かですから、伝えるのならば思いっ切り伝えた方が良いですよ」
「どっちですか。というよりアッシュ君、よく気付けましたね? いきなり気付いたのはアッシュ君が初めてですが……」
シャル君は私の“気”で分かり。エクルさんは会話をして雰囲気で。シルバ君はなんとなく普段と違うようなというものでした。
アッシュ君は私が彼を見つけ、挨拶をしようとしたら私に気付いて振り返っての先ほどの言葉です。挨拶より先です。それほどまで私は空回りしそうだったという事かもですが、いくらなんでも早すぎやしませんかね。
「はは、私も盲目だったのですが俯瞰して見えるようになった。ようは苦い経験を経て元の私に戻ったというだけです」
「元のアッシュ君、ですか」
「はい。ああ、メアリーと会う前の鬱屈とした私に戻ったのではなく、成長して視野が広くなった私が、恋を引きずらずに出来た事で、惑う物の少ない前の能力を発揮出来る私になった、という感じです」
今までは恋に迷ったり惑ったりで上手くいっていなかった部分を、自身の能力発揮、成長に使う事ができている、という感じでしょうか。つまりシルバ君……いえ、シャル君のような精神状態のアッシュ君は相手の機微に気付く事など造作も無い、と言っているように見えます。
「だとしても挨拶よりも先に言うのは。もうちょっと――」
「そうすれば私が変わった事を示すのにも、メアリーが浮き足立って自爆してしまう可能性があるのを諌めるのにも丁度良いですし、なったでしょう?」
「……なんだか初めてアッシュ君の腹黒感を味わった気がします」
設定としては把握し、カサスのアッシュ君と彼は違うと理解した後も何処かで思っていた事ではあるのですが、これからはアッシュ君のこういった所がドンドン発揮されていくと、ワザと見せている意地の悪そうな笑みを見るとそのように思えてなりません。
「この程度で感じているようでは、将来王族としてやっていけませんよ?」
「そこは大丈夫です。優秀な近侍と話していれば、自然と教えてくれるでしょうから。いずれ慣れます。違いますか?」
「……そうですね。ただ貴女を見ていると私程度ではすぐ学習されて掌の上で踊らされそうです」
「何処を見て思ったかは分かりませんが、踊らないようにより腹黒になってくださいね?」
「その頼み込みは流石に変じゃないですか?」
「変じゃないですよ」
なんだか互いが互いを「この人は自分より腹黒いな……」的な事を思っているような感がありますが、私達はまだ確定もしていないのに、互いがあると思っている未来を語り笑いあいます。
しかしそれにしても、昨日のヴァーミリオン君とのお酒の場を覗き見た時もそうですが、彼は随分と――
「? どうしました、メアリー」
――いえこれは聞くだけ、言うだけでも野暮という奴ですね。
彼は私が知らない所で、私を過去の女にして成長した。ただそれだけの事です。
「いえ、アッシュ君が以前と変わったのはカーバンクルと男女の仲になったからという噂が本当だったのかと思いまして」
「それは無いです。カーバンクルからすれば私の魔力は好みだそうですが、外見に関しては“ドラゴンメスが人間のオスを美形といって興奮すると思うか?”だそうなので」
「前世でドラゴンが車に興奮するというシチュも需要はありましたし、ありえるかと」
「車……馬車? え、せめて馬じゃなくて……? ……なんですその理解が及ばないシチュは。カーバンクルも困惑していますが……」
「性癖なんて他人から見ればそんなものですよ。ですが尊重されるべきです。私もよく分かっていませんが、あの世界は分かったら違う世界を見る事が出来るとだけ分かってるので、シュバルツがドラゴンと話せたら聞いてみようかとは思っています!」
「やめてくださいね!?」
「あ、カーバンクルさんが話せたりしますか?」
「メアリー。カーバンクルが“これからもこういう事を要求する相手の傍に主は居るのか”と怯えています。正直私もちょっとこの点に関しては不安です」
「不安を乗り越えてこそ成長です!」
「その答えはおかしくないですか!?」




