表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1804/1904

気兼ねなく話せる同じ年齢の男友達(:白)


View.メアリー



「ととのう、はやり方を間違えれば死にます!」


 サウナに入り、氷魔法で冷やしておいた冷水をかけるとエクルさんの言っていた通り寿命を縮めている感覚を味わう事が出来ました。冷氷水はサウナに入っている間に氷が解けて少し温度が上がっていたのでまだ大丈夫でしたが、熱くなり過ぎた身体に氷は死ぬ。それを学びました。別の意味で気持ち良くなってそのまま行く感じになりそうでした。ちなみにエクルさんは来ませんでした。来てたらそれは違うと聞けたかもしれません。


「まぁととのう? ってやつには水は使っても氷まではいきなり行かないだろうからね……なんでいきなり行こうと思ったの」


 私が温泉からの帰り道、偶然温泉に来ていて男湯の方から心配そうに声をかけていたシルバ君が「相変わらず滅茶苦茶やってるなぁ」というような様子で私に尋ねてきます。


「前世でサウナの後にそのまま積もった雪に、というのがあったので、真似をしようかと……」

「そりゃこの世界の連邦共和国でも同じ感じらしいけどさ。ああいうのは体質とか慣れがあるから、そのどちらも無い王国民(ぼくら)だと勝手が違うよ」

「そうですね……」


 前世のテレビで見たとある国では、サウナの後に雪にダイブするとかあるそうですが、素人がいきなりやってはいけない物と学びました。……ヒートショックみたいな物ですし、本当に気をつけねば。


「ところでメアリーさん。なんか変わった? 昨日までとなにかが違う気がするけど……」


 おっと、シルバ君はなにかが違うと分かっても告白云々に関してまでは分からない感じですね。これも温泉に入ってさっぱりな私になったお陰で内心に留めておく余裕が出来たという奴でしょう! ……多分。

 と、それよりもシルバ君の問いに答えねば。


「昨日の私よりはスケベイになってるかもですね」

「そうなんだー。……そうなんだ?」


 おっと、シルバ君が歩くのを止め、意味が分からない事をどうにか飲み込もうと必死な様子です。同じ年齢にも関わらず仕草一つ一つが小動物じみてて可愛らしいです。


「あ」


 そして理由が分かったのでしょうか。思い当たる出来事を思い浮かべ、私をじっと見ると何故だか先ほどまでの小動物さを感じさせない、大人びた達観ともとれる表情を浮かべ……?


「そっか……おめでとう、メアリーさん。ただ学生の内は気をつけてね。僕らの前の世代の先輩で、学園生の内に子供を授かって問題起きたらしいから……」

「ストップですシルバ君。貴方はなにか勘違いしています」

「良いんだよメアリーさん。愛し合う二人が歯止めが聞かなくなるのはよくあるらしいし、サーカス団の方で最近そういう話は聞くから耐性もあるから」

「待ってください。本当に待って」


 シルバ君が大いに勘違いをしていたので慌てて止めます。いずれそういうのがあるにしてもまだ早いですし、学園生の内は流石に色々と無責任すぎるので遠慮願いたいです。


「――という感じで、ええと、告白を決めたので、昨日までの恋逃げてきた小娘とは違い、大人の女になったという意味で言いました。スケベイ、に関してはクリームヒルトのラッキースケベイに引っ張られただけです」

「そ、そうなんだ。……いや、だとしてもその言い方はどうかと思うよメアリーさん」

「はい」


 言葉自体はクリームヒルトの影響でも選んだのは自分です。大いに反省しなければ。……アダルティックにエッチくなったとかの方が良かったでしょうか。……なにか違いますね。


「というより告白して付き合った所で大人になる訳でもないし、自分で大人の女、とか言っている内は子供が背伸びしているようにしか見えないんじゃないかな」

「……言いますねシルバ君」

「ここ数日のサーカスのヒト達を見ていると、なんというか……大人にこだわっている内は子供の証拠で、未熟を認めて自分に誇りを持つ事が大人だって感じだから」

「……難しいですね」


 言いたい事は分かるような分からないような感じですが……確かに付き合っただけで大人になれるのであったら、前世の療養する前の小学校の同級生であったいっちゃんとろーくんとはーちゃんも大人になりますからね。大事なのは積み重ねていき続ける事を忘れない事、という事でしょうかね。


「僕もよく分かってはいないけどね。でも詳細を分からずともとりあえず今は色んな事を認めようかなって思っているよ」

「認める、ですか?」

「なんでもかんでも受け入れる、って訳じゃなくてね。頭から否定せず、“自分とは違う世界かもしれないけどこういう世界もある”と知る事が大切かなって思うんだ。それがサーカスとか……夜の方の世界を見て思った事だよ」


 なんだかシルバ君が大人びて見えます。今までは同じ年齢でも弟のように可愛らしかったのに、視野が広くなって私よりも大人びてすら見えます。……当たり前ですが、シルバ君も私の知らない所で成長していっているんですね。


「今までとなにかが違う気がしますね、シルバ君」

「そう?」

「はい、大人びて見えます」

「自分ではよく分からないけど……まぁ今までとは違う世界を見たのと――失恋したからかな? メアリーさんは違う世界はもう見ているから、失恋すれば大人びて見られるかもだよ? さぁメアリーさんも失恋しよう!」

「うーん、ならば私は子供で良いですかね」

「だろうね。まぁ僕も別に仲間が欲しい訳でもないし、むしろメアリーさんが仲間になったら僕は王族に暴力を振るった男になっちゃうから、頑張ってね」

「大丈夫です。王族を殺害寸前まで追い込んだクロさんは今はこうして立派な領主になれてまからシルバ君も平気です!」

「そっちの保証をしてどうするの!?」

「今までの事を考えると私が直前にヘタレる可能性もありますし」

「それはそうだね」

「否定してくださいよ」

「だって、ねぇ……」

「くっ、シルバ君が酸いを味わった大人びた昔を懐かしむような視線で私を見てきます……これがサーカス団のとある女性と付き合って大人になったシルバ君ですか……!」

「な、なんで知っているの! いやまだ付き合っていないけど!?」

「ほう、“まだ”ですか」

「あ、違っ」

「認めましょうシルバ君。普段からデートをしているほど仲の良いカップルと認めるんです……!」

「ぐ、うぐ……まだだよ。まだ僕は――うん、認めよう。僕はデートはしているよ。そういう意味ではメアリーさんの先だ。残念だったね!」

「シルバ君が強くなってます!? ですが今日告白を成功させればまだ追いつけます。首を洗って待っている事ですね、ギンさんで子供ではなく大人になったシルバ君!」

「その言い方やめて!?」


 私とシルバ君はそんな、仲の良い同級生同士で気兼ねなく馬鹿話をしながら、温泉から戻る道を歩いていくのでした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ