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幕間的なモノ-後遺症とこれからと性癖-


幕間的なモノ-後遺症とこれからと性癖-



 王城のとある一室。

 本来なら国賓が招かれるような場所にて、俺はヴェールさんから治療を受けていた。


「――うん、これなら身体は大丈夫そうだ。ただ、しばらくは無理な運動は控える事。良いね?」

「はい、後始末でお忙しい中、ありがとうございます、ヴェールさん」

「世界の救世主相手ならこの程度なんてことはないさ」

「その言い方は、ちょっと恥ずかしいですし、言いすぎかと」

「言い過ぎではないと思うけどね。君のために国の最高位の魔法使いが君の検査を念入りにするなんて事はおかしくはない程度の活躍はしたんだ。素直に誇りなさい」

「えっと……はい、分かりました」

「よろしい。では次は――」


 俺はヴェールさんの茶化すのではない言葉に、どう反応していいか分からず頷き治療を受ける。

 治療といっても、治すという事に関しては殴った時の反動による自傷程度や、身体に問題が無いかを調べる程度だ。怪我の程度で言えばヴァイオレットさんの方が酷いのだが、そちらの治療も治療魔法専門の人とエメラルドの薬ですぐに動ける程度のモノであった。

 だが、俺の方がより念密に治療という名の検査を受けている。

 治ったとはいえ脳を損傷したし、目の方は見えない・見えてはいけない物を見ていたんだ。当然と言えば当然ではある。自覚症状のないまま後遺症が数日遅れてやってきて、そのまま倒れる……なんてことも普通にあるだろうから、念密に受けている訳である。


「ううむ、しかし夫の最高の身体に、そそる身体になったクリア神。そしてクロ君を念密に……これが役得というやつか」

「クレールさんに言いつけますよ?」

「夫は“なんか妻が幸せそうで良かったよ”くらいの反応で見守るだけだよ」

「それはそれで良いんですか?」

「そういう目で見守る彼も愛おしいから良いのさ」

「あ、はい」


 ……ちょっと変わってはいるが、なんだかんだラブラブ夫婦だよな、カルヴィン夫妻は。

 ヴェールさんは傍から、というか俺から見たら身体目当てで選んだようにも思えるが、間違いなくクレールさん自身を愛していると分かる。

 クレールさんも表情は無表情だけど、なんか愛妻家というのは伝わってくる不思議な感じだし。……まぁ考えている事が分からなくてまだちょっと怖いけど。

 言葉とはまた別の所に感じる愛。熟年夫婦のような見えない愛。……俺やヴァイオレットさんも似たような感じになるのだろうか。


「私達の愛は私達の愛の形だから、熟年だと全てがそうなり、それが正しい形だという事はないから悩む必要はないよ」

「心を読まないでください」

「そもそも君達、言葉にしない愛も良いけど、言葉にして相手の反応を楽しむ愛じゃないか。言葉にしない愛とか我慢出来る?」

「出来ません」

「そう言う事だよ。はい、じゃあ目をもう一度見るから、出来る限り瞬きしないようにね」


 ……ううむ、これが大人の余裕、というやつなのか。生きた年数で言えば俺の方が上だけど、やっぱり経験の差か。俺達もこのくらいの余裕は欲しいものである。そしてその余裕をすべてヴァイオレットさんとのいちゃいちゃに使う。そしてさらに余裕を持つ。そしてさらにいちゃつく。成程、これが永久機関か。


「そういえばクロ君、結婚式はどうするのかな」


 俺が目をヴェールさんになにやらよく分からない魔法を使って至近距離で見て、俺が永久機関の成り立ちを実現させようとしているとそのように話しかけられる。

 結婚式……か。予定通りなら来週末、いや時間的には今週末? になるのだろうか。どのくらいノアの方舟に居たかが曖昧だからちょっとふわふわしているな。ともかく十日以内には俺達の結婚式の予定日だ。

 だが、この調子だと予定通りというのは難しいだろう。


「なんかメアリー君が動力源を気が付いたらまるっと掌握して、ノアの方舟をひょいっと元の位置に戻し、なんやかんやでなんとかなって、てんやわんやで私はこの後の忙しさを考えるとクロ君の身体で癒されたいところだけど」

「その矛先は貴女の旦那さんに向けてください。少しなら良いですけど」


 しかしヴェールさんが言いたい事も分かりはする。

 メアリーさんは本当にどうやってそれをしたのかというレベルで、ノアの方舟を元の王城や学園の位置に戻した。完全に元通り、とはいかず、復興も必要なㇾベルではあるが、あの被害状況を考えると奇跡レベルで元に戻っている。ヴェールさんが曖昧な表現でしかその有様を言えないのも無理はない。

 そして俺はまだ辺境の領主であるが、ヴェールさんは魔法研究所の最高責任者だ。俺と違ってやる事も膨大だろう。


「という訳で予定通りに結婚式を行うなら、私は行けそうにないよ。申し訳ない」

「それは構いませんよ。そもそも知り合いに来たかったら来てね、という程度のものでしたし」


 貴族の結婚としてはあるまじき招待方法ではあるが、一応シキの皆に祝ってもらうとはいえ、基本身内でやるような結婚式だ。なにせ俺達の場合婚姻自体は一年前だし、今更感もあるので互いの両親も来ない。一応報告はしたが。

 クリームヒルトとかメアリーさんとかその辺りを呼んだら、気が付けば王族殿下達がほとんど来るという返事があったり、スカイさん目当てで来るスマルト君とかみたいに俺達の結婚式目当てというよりは会いに行く口実で来たりと、学園時代の悪友達に「お前、この面子が集まる結婚式にどういう気持ちで行けば良いんだ!?」とツッコミの手紙を貰ったりするほど集まる事にはなったが、そこまで厳しい集まりの結婚式という訳でもない。

 ……いや、うん。面子が凄い面子になったことは否定しないが。王族、公爵家、侯爵家、辺境伯家にあと神様とかなんやねん。

 今回の一件で来れなさそうな人は多いけど……一応、シキに帰る前にそれとなく来れなくても問題ない、と伝えておくか。


「まぁ、事が事ですからね。既に向かっているだろう友人達とかには説明しますが、予定よりは遅れるかと。そこまで遅らせる気もないのですが」

「そうかい。ま、君達がしたいと思った時にすると良い。遠くから祝わせて貰う――いや、次会えるのがいつになるか分からないから、今言っておこう。おめでとう」

「ありがとうございます」

「しかし、素晴らしい衣装を身にまとった君の身体――ではなく、クロ君を見れなくて残念だ」

「もうちょっと取り繕ってください」

「だから今、堪能するとしよう!」

「もうちょっと抑えてください!」


 く、予定通り来ていたら俺は複雑な気持ちで結婚式を挙げるところだっだ! 本当にこの人は俺の身体が好きだなチクショウ複雑だ!

 ……まぁ多分、自分が来なくても変に気にする事ない、という冗談なのだろうけど。そこは分かっても言わないでおこう。


「ま、本音と見れない本気の悔しさは置いておくとして」

「どっちも心からの言葉なんですね」


 ……冗談だよな。だよね?


「それで、なんです?」

「君の目の事だけど」

「はい、なにか分かりましたか?」

「おめでとう、アプリコット君から羨ましがられる目になったよ」

「……はい?」


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