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そして(:淡黄)


View.クリームヒルト



「なんていうか……防空壕? みたいな感じがするね」

「ぼうくうごう?」

「ええと……危険な攻撃から身を守るための頑丈な部屋みたいなの」

「確かにそうですね」


 気持ちは逸るが、安全を第一に慎重に進みながらこの場所についての予想をたて、私の抱いた感想は防空壕のようなものに思える、というものであった。いわばいざという時に王族を生き延びさせるための緊急避難先だ。

 見た目からして豪華というよりは堅実な作り方だし、場所もあの分かれ道を塞げば早々に見つかりにくいし入り込みにくい場所だ。理屈としてはおかしくない。おかしくないが……


「なんだろう……あの“王族の結婚相手とは結婚前に本気で戦え!”とかするランドルフ家王族が自分達だけ助かるための場所を作るのは考えにくい……?」

『あー、確かに』


 “楯”を意味する家名を持ち、戦う時は最前線に立つような性格、学園に入学する前に少数の護衛を付けてまたは単独で討伐依頼をこなす、戦闘強者が多く居る王国を束ねる王が国民より弱いとでも思ったか! とか言いそうなランドルフ家がそのような場所を作るのか、という疑問はある。

 別にあってもおかしくは無いだろうけど、避難先ならあの地下室とかに行けばいい訳だし……引っかかるなぁ。


「……スミレ、ランドルフ王族とはどういう一族だ? 何故か皆様が納得しているが」

「ここ数日の稼働時間自体はそう変わらない私が知る訳ないですが……現代の王族とはそのようなものかもしれませんね」

「……そういうものか」


 あとスミレちゃんとA25ちゃんがなにか誤解をしている気がするが、的外れという訳でもないのでそおっとしておこう。


「ともかく、その答えは先に進めば分かるだろう。行くぞ」

「はーい、イオちゃんは前に行かない。私とティー君が先行するからねー」

「む。……分かってる」


 ヴァイオレットちゃんが先に突っ走ろうとするのをシアンちゃんが宥めつつ、シアンちゃんとティー君が先行して前に出る。

 何故守られるべき王族のティー君が前に出るかと言うと、当初は私の予定だったのが「私が行きます! 楯となります!」と譲らなかったためである。時間も惜しいので言われた通りにしている。……うん、やっぱり前に出るランドルフ家が防空壕は考えにくいなぁ。

 ちなみに一番後ろは私とスミレちゃん、前にアプリコットちゃんとグレイ君で、そしてA25とヴァイオレットちゃんという並びだ。今の会話の時はスミレちゃんとA25ちゃんは近付いてはいたが、基本二人は念のために近付けないようにしている。そして若干の監視の意味も兼ねて真ん中付近に配置している訳である。

 ちなみにヴァイオレットちゃんも一応監視対象だ。シアンちゃんが言ってたけど、なんか様子がおかしいんだよね。ハイになっているというか、能力が高まっているというか……まぁグレイ君も似たような感じではあるけど。


――黒兄が心配でリミッターが解除された、とかなら良いけど。


 私も黒兄は心配だ。

 黒兄は特殊な魔力を込められた銃弾で撃たれ、頭部付近に怪我を負っている。

 脳や目など重要な箇所には直接命中しなかったモノの、あの黒兄が意識を失いそのままだと失血死する状態であった。死自体はスミレちゃんの治療でどうにかなったが、銃弾に込められた魔力のせいで銃弾の摘出が出来ず、意識は失ったまま、予断を許さない状況――というのが、スミレちゃんが見た最後の黒兄だ。

 ヴァイオレットちゃんには銃弾を受けて怪我を負っている、という情報だけは伝えたが、充分に慌てさせる要因ともなり、今すぐにでも黒兄を見つけなければ精神が摩耗して倒れてしまいそうな状態のようにも思える。

 私も早く見つけたいが、ヴァイオレットちゃんのためにも早く黒兄の無事を確認しないとね。


「皆、ちょっとストップ。なんか雰囲気が変わったから、此処からちょっとゆっくり行くよ」


 シアンちゃんの言葉に、私達は走っていた足を小走り程度まで速度を緩めて進んでいく。鋭いシアンちゃんだから早めに気付いたが、確かに言われて見れば何処となく空気が変わったように思える。

 なんというか、薄暗くて奥まで見えなかった通路の先に、大きな空間があるような感じがする。


――よく見えない。


 大きな空間があるというのは分かるのに、何故か距離が離れると暗くて先が見えない。その状況が胸騒ぎを覚えてしまう。


――目印も無いし……


 先程までエクル兄さん達が記したであろう目印が定期的に見つかったのだが、今まで見つけてきたペースからすると大分開いている気がする。


――音がしない。


 私達以外の音がしない。まるで光りだけでなく空間が音を飲み込んでいるようだ。


――大丈夫。


 油断しなければ大丈夫。

 最悪を想定し、最善の行動をする。

 黒兄が前世でたまに言っていた事だ。

 私はあらゆる警戒をして、対応すれば良い。


「ティー君――」


 だけどふと不安になって、私は先頭を行くティー君の傍に近寄ろうとする。

 失いたくないと言われて真っ先に思い浮かぶ二人の内の、どちらが黒兄よりも大事かと問われると返答に詰まる大切な人の傍に近寄ろうとして。


「……あれ?」


 そして、ティー君が居なくなった。


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