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そのくらいの強さが普通(:菫)


View.ヴァイオレット



 自動人形。正式には【Human Form Android】、通称HFA。

 Androidというのは、“人間そっくりのロボット”という意味として当時は知られ、ロボットいうのは“機械でありながら生き物に似た外見を持ち動作する”という意味であるそうだ。恐らくクロ殿が言っていたロボ(ブロンド)を見て「ロボ!?」と、つい言ってしまい名前を付けられた時のロボットで間違いないと思う。

 そんな自動人形は当時は様々な用途で作られていた。日常生活を従者のように補助する役割から、護衛・戦闘・戦闘興行(闘技場のような物だろうか?)といった役割、機械の身体を利用した汚染地域の清掃といった危険な仕事を行う役割、資産や資料を管理をする役割。用途は様々である。

 大抵はロボのような外見で“生物ではできないような戦闘をする”といった行楽目的や“単純作業を行う”管理目的が多かったそうである。

 日常生活での従者などは、なんでも「人間のような外見で行う人間のような事は、人間がやった方が安上がりだしわざわざ自動人形がする必要はない。贅沢品か、公共の一部」との認識が当時……古代では一般的らしい。日常には居るが、一般人が所有している訳ではない。……現代で言うと平民から見た貴族のような感じだろうか。


「その認識だと、さっき見た自動人形の子達は“贅沢品”……お金持ちの特権のちょっと変わった子達? になるのかな」

「変な子達、ですかマゼンタ様。機械という命の無い生命体ですから、子というわけではなないのでは?」

「あの姿を見ると、なんか生命の無い機械、と言いたくなくなる感じなんだよカラスバ君」

「なるほど?」

「それで、あの子達は日常生活を補助する子達のように見えるけど……ワイバーンを倒すってどういう事?」


 日常生活を簡単に補助する機能しかない自動人形ですら、一般市民が生涯で稼ぐ賃金程度には費用が必要で、それに見合う技術が必要な自動人形。だが高性能なものはとことん高性能であり、私達が見た自動人形はその高性能な自動人形であるそうだ。


「はい、日常生活の補助から護衛、戦闘、危険作業。彼・彼女らはそのあたりをマルチの行う我が社自慢の自動人形達です。補助はもちろん、護衛のためには強くなくてはいけないので当時のあらゆる格闘術は再現でき、脅威に対して対応……カラスバ様はご覧になられていませんが、先程の戦闘のような強さを誇ります」

「……A25。確か当時は魔法もなく、モンスターのような脅威も無かったと聞いたが」

「その通りでございますヴァイオレット様」

「何故当時にそのような戦闘力が必要なんだ?」

「当時の私達が仕える人間の方々はワイバーンクラスだと思って頂ければ」

『えー……』


 私達は同時に思った。「当時の人間、なんなんだ」と。しかも言い方だと私達のような戦闘に心得がある者ではない者達もそのような戦闘力を持っていたように思える。……確かにそれだと、ワイバーンを倒すのに苦戦していては意味がないな、はは。


――……笑いどころではないな。


 問題はそんな戦闘力を持った自動人形達が、なんらかの理由で“A25の管理下を離れている”という事だ。

 それが長年の時間経過によるただの不備、一時的な障害ならば問題は無い。A25も管理と今私達について来ているA25を分けているため機能が落ちている?(詳細はよく分からない)そうなので、単にそれが理由で認識に齟齬が出来ているならば良いのだが……そうでない場合、あの数の自動人形達が暴走状態で敵にまわる事もある。場合によってはセルフ=ルミノスが操っている可能性もある。そうなればただでさえ劣勢の状況が酷くなってしまう。


「私がまずは戻り確認すべきなのでしょうが、まず皆様を安全な所にお運びし、状況説明を優先させました。説明もせずに皆様の身体に触れてしまった事をお詫び申し上げます」

「それ自体は構わないが……」


 私達を王城の地下から脱出させ、王城の一室(コーラル王妃曰くレッド国王執務室の奥の部屋)まで連れてきたA25は深々と頭を下げて謝罪をする。私達は大丈夫であり、A25は悪くないとは言ってもA25自身はそう思ってはおらず、すぐにでも先程の所に戻りたいというような雰囲気を漂わせていた。


「……コーラル王妃」


 私がコーラル王妃の名を呼ぶと、声色と表情から言いたい事を悟ってくれたコーラル王妃が頷く。


「私達はここまでで構わない。後は貴殿は貴殿のしたいように行動すれば良い」

「ありがとうございます、コーラル王妃。処理が済み次第すぐに合流いたしますので、こちらの端末をお持ちに――」


 A25は何処からか黒くて四角の、板状のなにかを私達に渡そうとする。

 しかしその渡そうとした手は止まり、不思議に思いA25を見ると全体の動きがまるで静止した絵のように止まっていた。

 そして私達が様子を訝しみ、声をかける直前。


「皆様、開けた所へ行き戦闘準備を、もしくは逃げてください!」


 その慌てた声に私達は理由を聞く前に動き出し。


「くっ、スミレ、いつの間に貴女は……!」


 何処か恨みがましい表情をしたA25の言葉が聞こえた後。

 従者達が、私達が来た通路から勢いよく飛び出してきた。


 ――戦闘が、始まる。


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