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箱舟の解除方法


「……セルフ=ルミノスが、待っている」


 スミレさんが待っていると言ったあの男はこの状況を作り出し、ヴァイオレットさんを攫った憎き敵だ。例え高尚な理由があっての行動だとしても一度殴らなければ気が済まない相手である。高尚な理由、やむを得ない理由がない限りは、学園生時代のカーマインの時のように――


「スミレさん、アイツの所へと言いますが、貴女は敵……いえ、敵でも味方でもない、でよろしいでしょうか」


 ……落ち着け俺。

 学園生時代のカーマインの件は、同じ場面に時を遡ったとしても同じ事をするだろうという確信があるほどに、許す事は無い事ではあった。だがあの時の事はカーマインだけが悪い事柄では無かった。社会に属しながら社会のルールで裁こうとせずに暴力に走った俺も悪い。

 あの時と今を同じにしてしまえば、あの男を殴るのに俺も悪いという状況になってしまう。それは出来れば遠慮したい。


「私には私のすべき事があり、それはセルフ=ルミノスの味方をする事ではないものの、現在は敵対をしておらず言う事には従ってはいますが、クロ様の敵でも無い。そう思って頂ければ」

「……分かりました」


 あの時同じにしてしまえば、セルフ=ルミノスをこの機械達のように殴れなくなる。余分を含めば俺は先程のように動く事が出来ない。

 俺は弱い人間だ。相手にも事情がある、悪逆以外の理由があると思ってしまえば動きが鈍ってしまうほどに心が弱い。見逃すという選択肢、捕えるという選択肢が頭にチラつけばそれは致命となりうるだろう。

 だからセルフ=ルミノスには理由なき悪逆となっていて欲しい。そうすればかつて二度カーマインを殺そうとした時と同じ気持ちになれて、昔に戻れる。

 そう、昔に――


「……ふぅ」


 目を瞑り、息を吐く。

 身体の熱を逃がすように、身体を冷やして心を切り替えるようにする。

 そして数秒の後、ゆっくりと目を開いてスミレを見据える。


「――では行きましょうか」

「……承知いたしました」


 ――さて、敵の親玉が会うと言っているんだ。

 怖さを感じないように別の感情で心を埋めつつ、向かうとしよう。


「ぁ、はは」







「クロさんは居ましたか!?」

「落ち着けメアリー。近くには居ない。それとスミレの姿も見られない。ローズ姉さんは寝かすように丁寧に布で包み、動けないように拘束はしていたが……」

「ロボ、あのス、……メイドをなにやら不思議そうに眺めていたな。なにか分かるか?」

「ワタシと同じ感じがしたので見てはイマシタガ……駄目です、クロクンも含め、彼女らの痕跡がピタリと止まってイマス。此処に来るまでの物はアルノデスガ」

「アッシュ、カーマインではどうだ?」

「? ……あ、カーバンクルですか。どちらも分かりません。ミズ・ロボの言うように、魔力痕跡も途絶えています」

「くそっ、領主め……ヴァイオレットが戻って来た時に、お前が居ないと意味が無いだろうが……!」

「落ち着いてエメラルドちゃん。クロ君が傷付いたような痕跡も無いし、無事ではあるだろうから」

「そのとおりだ。ロボさんやオレ達と戦っても、強化魔法以外無しで戦いに付いて来る彼がそうそうやられるとも思えん」

「そうだね。クロさんの力量はおかしいと思う所もあるし……というより、僕達が閉じ込める魔法を同時に使ったのって」

「恐らくクロ子爵を孤立させるための策略だろう。俺達はそれぞれ、自分達が居る空間の外には、閉じ込められた自分達以外がこの古代技術のモンスターと戦っていると思っていたからな」

「思い返すとスカーレット殿下の様子にも不自然な部分もありましたし、誰も気付かなかったという事は同タイミングで閉じ込め魔法を発動させるように洗脳命令させられていた、ですか」

「ああ、だからスカーレットはあの時、閉じ込めた時にヴァーミリオンとアッシュも巻き込んだのを不思議がっていたのか」

「うん、閉じ込めるならエメラルドと二人きりになりたいのに、なんで二人を……ってね。すぐにその疑問は消えたけど――イテテ」

「大丈夫か? 私とヴァーミリオン、アッシュとカマソッソのフォースアタックが痛むか?」

「ファランクス組んで突撃して来た時は命の危機を感じたよ。それよりもメアリーちゃん、クロ君の事も心配だけど、そっちはどうなの?」

「……残念ながら、動力の停止は出来なさそうです」

「そっかー……」

「ロボさんならどうだ? 古代技術方面でなにか分かる事は……」

「ワタシではチンプンカンプンです。ゴメンナサイ」

「そうか……いや、気にするな。メアリー嬢でも仕組みが分からんのだ。ならばオレ達で分かるとは思えな――」

「いえ、仕組みはおおよそ分かったのですが」

「分かったのか」

「流石はメアリー。だが停止できないと言うのは?」

「まずは一つ。私だけでは処理が追いつきません。解除手順をこなすお方……ヴェールさんレベルが数名必要です」

「彼女レベルか……」

「もう一つはロボ……いえ、スミレが必要です」

「彼女が?」

「あるいは準ずるスペックがあれば良いのですが……機械(プログラミング)言語らしきコードが見られたので。C++やRならなんとか分かるのですが、それとは別のやつでして、処理をするのにスミレが必要なのです」

「……なるほど」

「ヴァーミリオン、適当に納得する返事をするな」

「分からないと言う事が分かったというなるほどだ。他にはあるのか?」

「最後の一つなんですが……ブラックボックスがありまして。こればかりは前二つを解決しないとどういう物かは分かりません」

「……そうか。では今は下手に触れない方が良いな」

「はい。今はクロさんを探しに行きましょう。話はそれからで――」


「今、クロって言った?」


「!? あなたは――」







「……悪趣味だな」


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