想いのぶつけ合い。Ver.金と臙脂
金と臙脂
「【円盤分離の星】」
「ッ――周囲が白く染マッテ……!?」
「これは王族魔法の一つでな。消費魔力は大きいが、対象を空間に閉じ込めるものだ。内外からの干渉は術者が脱出する以外は無理で、中の事は基本中で完結する」
「なにが目的デス。実は操られてイナクテ、ワタシだけでも安全な場所に移動させたい、というツモリナラ、すぐに出してクダサイ」
「生憎とそれは無理な話でな。むしろ俺とロボさんの攻撃が外に被害が及ばないようの気遣いだとでも思ってくれ」
「……ルーシュクン」
「すまない、オレも話したい所ではあるが、身体が言う事を聞いてくれなくてな。貴女と話したい、貴女と思い切り感情のまま言葉をぶつけあいたいという想いに歯止めが利かんのだ」
「ソレ、割といつも通りデハ?」
「否定はしない。オレは普段から愛を囁いているからな」
「叫んでいるの間違いデハ?」
「嫌か?」
「イヤじゃないデス。慣れて来ました」
「そうか。慣れては困るから、この戦いが終わったら新たな攻めを開拓するとしよう。その時、オレが貴女に顔向けできればの話だがな」
「……そうなるように、まずは一時的に倒させて頂きマスヨ、ルーシュクン」
「そうしてくれると助かる。……では、いくぞ。周囲の被害を気にしない分、早めにオレを倒してくれると助かる。――【絶対順守の防御陣】」
「ッ、【飛翔攻撃】」
「甘い」
「!? 早――」
「【嵐撃】」
「ッ、十字双剣に風……!?」
「【砂塵】」
「土の――ジャミング……!?」
「【乱気流】」
「斬撃――ソコデス!」
「敢えてだよ、ロボさん【電撃一閃】」
「ぐ、ぅ――!!? クラスターキャノン!!」
「っ! おっと――流石はロボさん。この程度では倒れないか」
「ハァ、ハァ……ナンデス、その動きと魔法技は」
「オレの攻撃だ。何度か手合わせしているから、見た事があるだろう? 貴女を超えるために、オレは――」
「違イマス、今のはワタシの知っている技より、技の鋭さも規模も違イマス!」
「…………」
「ルーシュクン、まさか今までの手合わせは、ワタシが相手だからと手を抜いて……!?」
「手は抜いていない。オレはオレの全力を以って、貴女と戦っていた。自分より強い男が良いと言う貴女の要望の元、貴女に勝とうとオレなりに全力を出していた。そこに間違いはない」
「……ダッタラ、何故」
「愛だ」
「ハイ?」
「今のオレは、愛と夢と絶望に満ち溢れている」
「そこは希望じゃナインデスネ」
「ロボさん相手に命を狙っている時点で絶望しかない」
「ソレハソウデショウガ」
「ともかく、今のオレはとても前向きで後ろ向きだ。そしてそのお陰で、トラウマを乗り越えているらしい」
「トラウマ?」
「ああ。九十七人ほど、オレを残して仲間が死んでしまった、トラウマのな」
「エ?」
「そう珍しい話でも無い。王族としての箔付けに、弱っているというA級モンスターを大ぜいで狩りに行って、甘く見過ぎた馬鹿共が自らの命を対価に討伐を果たした。それだけだ」
「…………」
「お陰でオレはモンスターに対しては憎しみを持って強くなって戦闘では姉弟一、とまで言われるようになったんだがな。オレが思っていたより、ヒトに対しては弱くなっていたようだし、弱っていたオレを救ってくれた初恋の女性相手だと特に弱くなって――」
「メガマキシマムクラスターキャノン!!!」
「危なっぁ!!? な、ロボさん、何故突然殺意の高い攻撃を!?」
「イヤ、なんだか“ここで貴方の過去に同情して攻撃の手を緩めたら負けかな”と思イマシテ」
「確かに同情はしなくて良い、というような事は言おうとしたが、まさか殺意が込められた攻撃を容赦なく放たれるとは思ってもみなかった」
「愛とは殺意デス」
「否定はしない」
「しないんデスネ」
「狂おしいほど愛しているという言葉もあるくらいだしな。愛と殺意は紙一重だ」
「ハイ、ワタシハ多分、ルーシュクンを愛してイマスカラ、殺意を込める事が出来たんデス」
「……愛してくれているのか?」
「愛はまだまだ勉強中デスガ、そう思っていマスヨ」
「操られて攻撃をしているオレを?」
「はい」
「……トラウマを抱えて本気をだせないなどという、情けない男を?」
「ダカラコソ――だからこそ、ワタシは今の貴方を本気で攻撃させていただきます」
「……何故だ?」
「トラウマを払拭した所で、トラウマを乗り越えて強強になったところで、ワタシは貴方より強いという証明をするためです」
「つよつよ……」
「貴方の過去の仲間がどういうヒトだったかは分かりませんが、今のワタシは強い事は確かです。少なくとも、ルーシュクンの愛を……あ、愛を受け止めるくらいには……!」
「そこは照れるのだな。可愛いぞ」
「喧しいです殺意の波動を出しますよ。ともかく、ワタシは思ったのです。せっかくルーシュクンが愛の力で一番強くなったのに、それを受け止めないのはどうなんだ、と」
「だからこそ、本気で行かせて貰うと?」
「はい。ぶっ飛ばしてやります。そしてこの戦いが終わっても何度もワタシに挑ませてやります」
「……そうか。ロボさんは優しいな。オレが洗脳されているのも、トラウマの事も気にしないようにしてくれて――」
「そうですか殺します」
「照れ隠しで殺しにビームを放たないでくれ!?」
「全ての攻撃を掴んで無効化しているルーシュクンに言われたくないです。どういう理屈でビームを掴んでるんですか」
「それを言うならロボさんはどういう理屈でビームを放っているんだ」
「よく分かりません」
「それと同じだ」
「なるほど」
「…………」
「…………」
「なぁ、ブロンドさん」
「……なんですか」
「俺は嘘吐きだ」
「……はい」
「戦闘では姉弟一と言われているが、単純に死にたがりだったんだろうな。道連れにしてやるという気持ちで戦っただけだ。正義や国民のためなんかじゃない」
「はい」
「そして本当に道連れになりそうだった時、貴女を見て、一目惚れして、生きる希望が湧いた」
「奇遇ですね。ワタシもその時に誰かを助けられたと、こんなワタシでも誰かのためになれたんだと、生きる希望を見出しましたよ」
「そうか」
「そうです」
「けれどあの時から俺は贖罪から目を逸らしていたのだろうな。アイツらは俺は俺のために生きてくれと言うだろうから、それで良いんだ、と」
「では、本音は?」
「俺は誰かに救われたい。身勝手な話だが、救われて仲間を忘れたかった。過去の事だと切り捨てたかった。背負いたくなかった」
「そうですか。ですがそれは出来ないのでしょう?」
「そうだな。出来ていたら苦労はしていないし、こうして話してもいない」
「ではどうしますか?」
「そうだな。まずは――好きなヒトに、自分の強さでも証明してみせるかな」
「いいでしょう、かかって来なさい。それを出来ないように――プライドをへし折ってみせましょう」
「はは、成程。折られないように頑張らなくてはな。――行くぞ」
「はい――来なさい!」
備考 技
・絶対順守の防御陣
ルーシュの特殊武器である十字双剣を使った防御の構え。あらゆる攻撃を“掴んで”、“無効化”し、自身の攻撃へと転化する
・飛翔攻撃
ロボの攻撃。飛んで攻撃し、上からビームを放つ。「ビームではなく一方的な多重銃撃では?」というのは、一度モンスターが喰らって吹き飛んだのを見た事があるクロ談
・嵐撃
十字双剣を中心に風魔法を乱立
・砂塵
土魔法による砂の波状攻撃
・乱気流
竜巻のような風を起こし、その一部を十字双剣からの斬撃に転嫁
・電撃一閃
十字双剣による挟み込みからの、剣を媒介にした電撃攻撃。大抵の相手は気絶する




