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思い出せ(:灰)


View.グレイ



「く、くく、この精神的ダメージは、洗脳によるものか、私は打たれ弱いだけなのか、この状態では判断がつかないな……!」

「私めの言葉では差し出がましい事でしょうが、国のトップに立たれる御方です! 打たれ弱い事など無く、素晴しい精神の持ち主だと思います!」

「あ、ああ、そうだな。ありがとう」

「なに戦闘中に相手に気を使われているのです、国王陛下」


 さて、レッド様が何故か不意のダメージを受けて下さり、パールホワイト様が心配なさって駆け付けてくださったので相手陣営に隙が出来、先程までの防戦一方な状態は緩和された。

 とはいえあくまでも防戦一方ではなくなっただけだ。こちらが攻勢に出たという訳でもなく、ハッキリ言って分が悪い。人数に関しては五分五分でも、相手の勢いが強すぎるのである。


――身体能力の差が大きい……!


 相手は五人中四人が近接戦が得意であり、縦横無尽に駆けまわる。それに対しシャトルーズ様とスカイ様が頑張っては下さっているが、私とアプリコット様、フューシャちゃんはどうしても身体能力勝負に持ち込まれると分が悪いため、押されやすいのだ。

 これがそれぞれ一対一×五ならば、力や技が負けていても他で補う事が出来る。のだが、相手は力を力で。技を技で補ったりなど、乱戦である事を活かした強さの連続を繰り出してくる。

 例えばクリ様の大いなる力推しは大雑把になるのだが、大雑把な箇所をテツグロ様が数秒間の全力全開で補う。当然補うのは長く続かないのだが、テツグロ様の全力が出せる短時間が過ぎた瞬間にクリ様がその力を活かした大破壊(地面を叩きつけ周囲を大震動させるなど)を周囲に蒔き散らす。そしてその破壊が収まる頃に、再びテツグロ様が回復していて、再び攻撃を繰り返す。といった具合である。


「この、【流星闇――(タナト)】」

(シャ)ッ!!」

「くっ!?」

「アプリコット様!」

「下がれ、アプリコット!」

「出来れば下がっておる! だがすまない、助かったシャトルーズ!」


 そしてパールホワイト様が非常に厄介である。

 足運びには緩急があって読めず、乱戦でも間を蛇のように縫うようにして距離を詰めて来る。そして見た事の無い拳法を使い、こちらに詠唱、構えの時間を取らせない。先程指先が肩を掠ったのだが、掠った箇所はまるでナイフに引き裂かれたような傷が出来た。一撃でも当たれば大変な事になるだろう。あと、彼女は足音や打撃音、声を出しているのだが、どうやらこれは敢えてのようだ。普段は音通りに攻撃するのだが、この音を偶に遅らせたり早めたりする。これが非常に厄介で、彼女から目を逸らすのはとても危険だ。

 今の所はアプリコット様の探査魔法の応用で彼女の位置が見ていなくても分かるので、どうにかなっているが……油断は出来ない。


「カラスバー! 見ていてくれー!! ……いや、見ないでくれ、私のこんな雄姿!」

「…………」


 また、彼女達は楽しそうだったり、苦しそうだったり(恐らく後者が操られていない素)するのだが、独りだけ黙って指示を出しては魔法を繰り出す御方がいる。カラスバ様だ。

 彼が皆様を十全に動けるように補助をしている。この場面を支配しているのは彼であり、身体能力が優れている彼女達が、遺憾なく力を発揮しているのは彼が居るからだろう。彼を封じるのが打開の一歩になるのではと思うような動きをしているので、私はどうにか彼を封じる手立てを模索はしているのだが……


「【死線】」

「っ――このっ……!」


 だが、なによりもこの御方がいる。

 国のトップに立つ者が、国の兵たちより弱くてどうする。という私でも「なにか違うような」と思わせるような事を素でやってのける御方、レッド様。

 王族魔法は使わない。どころか魔法も使わない。使うのは刀身部分が私の身体程度の幅と長さがあるのではないかと思うような、無骨な剣だ。ティー君が使われている雷神剣と比べると、あまりにも華もなく、一国の王が使うにしては粗末に過ぎる。


「フューシャちゃん、あの大剣にはなにか特殊な効果が?」


 私とフューシャちゃんで防護結界を張り、シャトルーズ様とスカイ様の防御を張り、周囲を牽制しながら尋ねる。私にとってはなんの魔力も感じない武器でも、娘であるフューシャちゃんならなにか知っているかもしれない。


「分からない……お父様が戦っている所とか……見た事無いし……! ごめん……」

「いえ、気に為されないでください。私めも分からないのですから、責める理由はありません」


 フューシャちゃんは引きこもりがちな上、色々あってヒトと接するのを控えていた。戦いにおいてはより避けていただろうし、知らなくても無理はない。そもそも分かっていたら言うだろうし、変な事を聞いてしまった。反省せねば。


「シャル! 国王陛下の剣、アンタでどうにかできんけの!?」

「やるだけやっている! だが先程砕かれ、武器の無い今の俺では――っ! スカイ、後ろだ!」

「っと! 本当に強いの、クリ先輩! ――アプリコット!」

「ええい、避けるのだぞ! 【闇中級魔法二連(ダブル・シャドウ)】!」


 く、どうする。

 ただでさえ私達は二連戦で消耗している。武器もままならず、怪我の回復も完全ではなく、魔力も厳しい。そして一番厳しいのは、相手を倒す事が私達の勝利条件ではない事だ。

 これがモンスターなら遠慮なく魔法を放ち、攻撃も出来る。だが、相手を殺してしまっては、それも私達の敗北と言える。ただでさえ厳しい状況の中、それが一番の足枷になっていた。


――私が、またあの状態になれば。


 先程の戦闘で私は自分でもよく分からない状態になった。無意識に、知らない魔法を、知らない状態で、知らない言語を使い、戦場を駆けまわった。最終的には敵に抑えられるという

 “アレ”がなんだったのか、誰も分からないし、追及はしない。大丈夫かと聞かれ、なにがあったか分かるかと問われたが、分からないと答えるとそれ以上は話題として出さないようにしていた。そして、あのような状態にならないようにと優しく言われた。


――ですが、あの状態なら打開を……!


 一瞬だけなれば。私があの状態を思い出し、一瞬だけ力を振るえばこの状況を押し返せるかもしれない。もしくは前回のように飲まれる事なく操る事が出来れば、逆転も充分に可能であり――


「シャル!」

「っ!!?」


 ――迷っている時間は無い。

 シャトルーズ様に迫るクリ様の一撃を見て、私はあの状態を思い出そうとして。


「五星に演じて六芒の星」


 星の煌めきにより、私の感情は中断された。


「まったく、ちょっと目を離した瞬間にこれとは。少しは休ませて欲しいものだ


 現れたのは、アプリコット様の普段着の魔女服をやや大人っぽくしたようなデザインを身に纏う、ヴェール様。どうやら他の洗脳された方を安全区域まで非難させ終わったようだ。


「けど、まぁ、私の息子に手を出すのは、国王と言えど許せはしない」


 右手に杖、左手には袋に入った棒状のものを持ち、追撃をしつつも睨みつけるヴェール様。彼女はこの場面において救世主と言える存在であり、そして。


「だが、素晴しい肉体の集まりだ。その肉体を堪能させてもらうとしよう!」

「母上!?」


 なんだか安心感を持たせる言葉を言いつつ、参戦するのであった。

 ……ヴェール様、シキに住まわれないかな。多分合うと思うのだけれど。


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