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空を見上げて(:明茶)


View.フォーン



 森林エリアの、森林ではなくなった場所。

 周囲一帯の木々が戦いにより木屑すらも残らないレベルで消失した空間で、私とブラウン君は背中を大地につけ、普段より近くなった空を見上げていました。


「……フォーンお姉ちゃんの魔法、やっぱりズルくない? 魔力で疑似生命体を作って、生命体の決死行を無理矢理行わせて、小さな魔力を強大な魔法にするとかさ。しかも最後には一万どころかなんか百万近く居なかった? 正直気味悪かったよ」

「……否定はしませんが、それを対応しきるブラウン君もどうかと思います。なんですかあの剣技とビーム。どっちも通常攻撃感覚で万単位を削って来ないでくださいよ」

「削らないと駄目なレベルの攻撃をお姉ちゃんがしてくるからだよ」

「攻撃しないと駄目なレベルの攻撃を貴方がしてくるからですよ」

「…………」

「…………」

「……怖くなかった、僕の攻撃と……姿」

「怖かったですよ」

「わー、素直に言っちゃうんだね」

「私の知らない姿でしたからね。未知は怖いです。今は既知になったので怖くありませんが」

「……そうなの?」

「そうですよ。というかあの黒い目と血涙、そして私の種族と関わりがありそうなビーム攻撃はなんです。えっと……焦熱?」

「等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、無間だよ。順番に強くなっていく攻撃……というよりは、無間の方が近くなる攻撃だよ」

「近く、ですか」

「うん」

「仔細はお聞きしても?」

「ええっと……」

「嫌なら私が先に話しましょうか。私の種族や、生き恥を晒しているこの格好とか語りましょうか?」

「お姉ちゃんはあれなの? 自分で自爆して窮地に立つ事を喜ぶまぞひすとさんなの?」

「違います。こっちが色々話せば話しやすくなるという気遣いですよ」

「ごめんね、さらにボロボロになったお姉ちゃんの服を隠すために僕の服をかけてあげたいけど、かける体力も無くて……恥ずかしいよね」

「い、言わないでください! 私もこの戦いで大分感覚が戻ってきていて、この露出恥ずかしくなって来たんですから!」

「大丈夫、トウメイお姉ちゃんの格好を思い出せば今もマシだって思えるから」

「それ以上が無い例を挙げられても複雑なのですがね……むしろそれに近いのですか、今の私」

「うん」

「即答ですか。……まぁ胸とお尻周り以外ほとんど無いですからね、衣服」

「うん、きれーだけど、あまりその格好で居て欲しく無いなぁ」

「……そうですか。ともかく話しましょうか、私の先程までの感覚を」

「別に良いよ。言わなくても、僕の話はするから」

「大丈夫なのですか?」

「うん。聞いて楽しい話ではないけど、ようは僕の力は地獄に関わっているんだ。さっき言った8つの種類も、地獄の種類だよ」

「地獄?」

「東の方にある国の、罪人が死後に行くとされている罰を受ける所だよ」

「ああ、そういえば聞いた事がありますね。ですがそことブラウン君に関係が?」

「うん。そこから這い上がって来たのが、僕のお父さん」

「……はい?」

「鬼、ってやつだね。アップルグリーンお兄ちゃんの種族の【小鬼族(ゴブリン)】みたいな、悪魔の種族……ワイバーンとドラゴンの関係性的な感じかな? 原種とは違うけど、種族を語る上での大元となった存在だよ」

「……その鬼が、ブラウン君のお父さん?」

「そうだよ。地獄で生まれて、地獄で育ち、地獄から這い出て、地獄の要素を得ながら、現世と繋がっちゃって出て来ちゃった鬼。それがお父さん。生きていた時は見た事ないけど」

「生きていた時は?」

「うん、東の方の国で狩られた首だけは残っていたよ。剥製で飾られて、武勇の象徴としてね」

「……そうですか。……あれ、でもそんな存在が狩られたのなら、大騒ぎになっているような気がしますが。私は聞いた事がありません」

「だって狩られたの三十年前だからね」

「え」

「二十二年間、僕のお母さんは僕を妊娠し続けたらしいよ」

「え」

「しかも襲われた、とかじゃなくって、お母さんは“なんて力強い御方、これは抱かれるしかあるまい!”と自ら嫁になりにいったって惚気て? いたよ」

「凄いお母さんですね」

「だからこそずっと妊娠し続けていたんだろうねー。それで、お父さんは抱いたけどその後悪逆をしようとして狩られて、お母さんは隠れて僕を身籠り続けて、産まれて僕はすぐに大きく育って、色々あって化物扱いされて、色んな所に行って、お母さんも“さぁ、その力を持って奴らに復讐を!”とか言われて育ったのが僕だよ。今はこうしているけどね」

「……復讐しようとは思わなかったのですか?」

「やだよ。寝ている方が楽しいし、復讐って疲れるし、今はシキの皆と遊ぶの楽しいし」

「……ふふ、そうですか」

「おかしい事言ったかな?」

「いえ、ブラウン君が良い子に育って嬉しかったというだけです」

「……あんな姿だった僕が、良い子な訳ないでしょう?」

「あんな姿とやらを、悪いと認識出来るだけ良い子ですし、あの姿を今まで抑えていただけでも充分良い子です」

「……そうかな」

「そうですよ。私が良い子だと認めます。認めないなら私の目が節穴になりますから、良い子だと思わないと私が駄目だと言っているような物ですよ。さぁ良い子になりなさい」

「な、なにか違わない?」

「錯覚です」

「そっかー」

「そうですー。……あれ、ですがあの力を振るう際、私の魔の力を吸い取られるような感じがしたんですが、なんだったんです?」

「多分僕を通じて魔が地獄に行っちゃたんだろうね。あの姿、地獄と繋がっているから、攻撃しながら魔を地獄に送ったし」

「……繋がって平気なんですか?」

「とってもつらいよ。安眠妨害の“復讐をせよ”とか“助けてくれ”とか聞こえて来るし」

「……普段も聞こえたりします?」

「しないよ。だから普段はよく眠れるし。まぁ眠らずにしばらくすると聞こえて来るから困るけど。思考もなんかいつもと変わるし」

「今後は出来る限り、繋げないようにしてください」

「はーい」

「ですが、今回は助かりました。お陰であの力を振るってもなお、元に戻れました」

「どういたしまして。大好きなお姉ちゃんが戻ってきてくれたから、頑張ったかいがあったよー。……本当に、嬉しい」

「そ、そうですか。私もいつものブラウン君と話せて嬉しいです」

「そう言って貰えて良かったよ。まぁ反動でしばらく動けそうにないけど」

「私もです。……操っているヒト達は、まだ戻っていないでしょうから、早く回復してどうにかしないとですが。ああ、しかし」

「どうしたの?」

「私は全力を出さないと駄目なようにされていました。思い返せばセルフ=ルミノスがそう洗脳したのでしょう」

「みたいだね。」

「今回はブラウン君のお陰でどうにかなりはしましたが……クロさん達が居なくて良かった、と思いまして」

「…………」

「彼らが居たら、ブラウン君が奮闘しても恐らく彼らに被害が――どうしました、ブラウン君?」

「……フォーンお姉ちゃん、クロお兄ちゃんをあの時逃がしてくれてありがとうね。お陰で助かったよ」

「ええ、あの時はブラウン君の事だけを考えて――クロお兄ちゃん? 達、ではなく、クロさんだけですか?」

「うん。もちろんロボお姉ちゃんやエメラルドお姉ちゃんもだけど……あの時のクロお兄ちゃん、戦うならフォーンお姉ちゃんを絶対に倒す気でいたから。クロお兄ちゃんをあの場から居なくしてくれて、ありがとう」

「確かにクロさんは強い御方です。けど、【薬蜜(アガペー)】とは相性が悪いと思います。下手をしなくても、彼は大怪我を負っていたと思います。だから怪我を負う前に逃がしてくれてよかった……という訳ではなさそうですね」

「うん、多分戦ったら怪我は負っていたけど、クロお兄ちゃんが勝っただろうね」

「そうでしょうか。私の最高全力全開は、あまり負ける気がしないのですが……」

「そうだろうね。空を飛んで、蜂をぶつけるだけで大抵の相手は為す術もなく勝てるだろうし、クロお兄ちゃんは身体能力以外弱っちぃから、負けそうだよね」

「弱っちぃ……」

「けど、クロお兄ちゃんは勝ってたと思うよ。お兄ちゃんはそういうヒトなんだ」

「どういう事です?」

「……なんというかは分からないよ。ただ、クリームヒルトお姉ちゃんの昔のお兄ちゃん、と言われた時、納得いってしまった。……そんな感じかな」

「……?」


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