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お互いおかしい


 ドラゴンというのは本来、存在が確認されれば即時討伐隊が編成されるレベルであり、場合によっては国を一つ滅ぼすのはおかしくもない強さを誇る。

 あの乙女ゲーム(カサス)でも主人公(ヒロイン)達に立ちふさがる大いなる壁であり、一部ルート以外では選択肢関係無く苦戦を強いられる描写も多いような、伝説の存在。

 いくらロボとブラウンが規格外の強さと戦闘手段を有していたとしても、一方的に屠るという事はまず無い。ここにメアリーさんやヴァーミリオン殿下といったメンバーを増やしても難しいだろう。

 だが現在こちらが最初の咆哮以外ほぼ無傷で済んでいる。それは恐らくこのドラゴンが起きたてというのが一番大きいだろう。

 闘技場の地下に封印され続け、弱らせ続けられた【地】を冠するドラゴン。あの乙女ゲーム(カサス)では正式な名前は無く、そのまま【地のドラゴン】と言われていたと思うが、名付けるならアースドラゴンとかそんな感じだろうか。他だとファイアドラゴンとか、アクアドラゴンとかになるかもしれない。

 ともかくこのアースドラゴンは少々“弄って”はいるようだが、弱らせ続けられた所に無理矢理目覚めされられたようで、動きが覚醒しきっていない。だから俺達三人でもこうして一方的に押せるのだろう。

 お目覚めの所悪いが、動きが覚醒しきる前に早々に眠って貰うとしよう。伝承とかだと目覚めると周辺の大地にある植物を全て枯らして不毛の大地にし、干上がった乾いた土の上にて暴れ続けるとか困った存在だしな! それが無ければ共存の道を模索したい所だが、どちらにしろこっちの命もかかっているのでまずは大人しくして貰うとしよう。


『GRxa――』

「おっと――ブラウン!」

「はい、クロお兄ちゃん、パス!」

「サンキュ――おらぁ!」

『xaxaAAAAA!!』


 口を開けてなにか(恐らく不毛の大地ブレス。地属性以外の魔力を減衰させる上にブレス自体に大地を抉る高威力判定がある)をしようとしたので、ブラウンに比較的大きめの瓦礫をパスして貰い、それを蹴って口の中にシュート! した。

 ただの瓦礫ではなく、闘技場の魔力障壁がまだ生きた瓦礫だ。勢いもあって相当効いたはずである。


「ロボ、あの昔見せてくれたなんかよくわからんブレードを展開してくれ!」

「了解デス! 銀河を駆ける、エーテルに宿りしディザスター……セットアップ【不明剣】!」


 不明剣って名前だったのか。……名前なのか?

 昔一度だけロボが剣のような物を展開させ、シキにやって来たワイバーンを一刀両断……一刀消滅? させた事を見た事があったのだが、確か使うのに時間がかかるし一度使ったらしばらく使えず、斬った部分の大地に存在する龍脈がしばらく死んでしまうからおいそれと使えないと言っていたが(基本シキで使うのは禁止した)、この空飛んでいる場所なら大丈夫だろう、多分!

 そしてこれなら、先程からビームを撃って怯ませる事は出来てもダメージにはなっていなさそうなアースドラゴンに、ダメージを与えられればいいが……


『GRYAAAAAAA!!!』

「やったか!?」


 よし、効いてるし体表面が斬れた!


『GRRRRRRR!!!』

「くっ、まだ駄目か……!」

「なんでかは分からないけど、クロお兄ちゃんの言葉を聞いたらなんかだめだーって思ったの。なんでだと思う?」

「今は考えるな」

「はーい」


 俺も若干思ったか、つい出てしまったんだ。気にしないでくれ。


「ロボ、連続で斬れるか!」

「残念デスガ、この武器自体に待機時間(チャージタイム)が個別設定サレテマス。この戦闘では使えないと思ってクダサイ!」

「了解、じゃあ次は――」

「クロお兄ちゃん、あぶない!」

「っ!?」


 ブラウンの声を聞き、アースドラゴンの全体に意識を向ける。するとアースドラゴンが先程の苦し紛れとは違い、明確に俺を目掛けて突進しようとしているのが見えた。


――ふむ、さっきみたいに逃げるのは無理そうだな。


 俺の大勢とアースドラゴンの動きから、先程ブラウンと一緒に逃げた様な安全圏への退避は無理そうだ。

 ならば回避をするべきだが、あのデカい図体の突進をどう回避すべきか。回避するだけでも一つ間違えれば潰される。


「クロ殿!」


 仕方ない、なら回避と迎撃をするか。

 声が聞こえ、聞こえた方向と高さから“来る”場所を推測する。

 彼女ならここに投げるだろうと判断した場所を、その方向を見ずに右手だけを差し出した。


――よし、取れた。


 差し出した右手には袋のような物が当たり、当たった瞬間にその袋を掴む。

 掴んだ瞬間にアースドラゴンは俺目掛けて突進して来た。

 しかし構えから突進するまでずっと全体を把握する事が出来たので、何処にどう来るかは見える。見えているなら、あとは当たらない隙間を縫って回避するだけの簡単な動作だ。


「プレゼント」


 そして身を捻り、スケート選手のアクセルのように回転しながら飛び、身体をアースドラゴンの頭近くをすり抜け、そのついでに手に取っていた袋をアースドラゴンの口に投げ入れた……というよりは、アースドラゴンの口が来る地点に放り投げて置いておいた。

 袋を飲み込んだアースドラゴンは、口の中、あるいは喉の中でその袋の中身が弾けて。


『GRAA■AA%AA“A‘*A!!??』


 溶けた。

 ……え、溶けた!?


「ようし、まさか上手くいくとは思わなかったが、体液と混ざる事で発動する毒が効いてるぞ! ハハハ、ドラゴン相手でも鱗を溶かすとは流石の私特製だ!」

「んなもの俺に気軽に渡すな!」

「渡したのはヴァイオレットだろう。というかあのタイミングで渡すのは予想外だし、なんでお前らは普通に渡せているんだ」

「え、そりゃあ……ヴァイオレットさんなら俺が分かっていると分かった上でこうするだろうと思ったから」

「うむ、私もだ」

「なるほど、お前達がおかしい事は分かった」


 ドラゴンに効く毒を生成できるエメラルドに言われたくない。


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