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ビーム、ビーム


「カーマイン君さぁ」

「なんだセルフ」

「なんでクロに執着している訳?」

「それは何故クロ・ハートフィールドという男を愛しているのか、という問いか。長くなるぞ」

「意外と語る気があるんだね、というのはともかく、何故クロなのかな」

「他にも予想外の存在は多いのに、何故という事か」

「そう。確かに領主として優秀で、交友関係も広い。けどあくまで未発見を自ら開発するような冒険はしない」

「そうだな」

「それと言っちゃなんだけど、ドラゴンを相手にした時、メアリーやクリームヒルト……まぁエクルも有りか。彼女らなら対応策を用意し、単独でも撃破しうるポテンシャルを秘めているのは僕にも分かるよ。けど彼は身体能力は高くてもあくまで人間の()の範疇で、魔法は三人と比べると駄目。ドラゴンとか倒せる力を秘めていそうにない。転生した人達の中じゃ、対モンスター戦闘では一番弱くなるんじゃない? 戦闘なら彼女達の方が予想外の事をしそうだけど」

「否定はせん」

「しないんだ」

「対人戦は優れてる。身体能力は優れて身体強化魔法と合わせると手の付けられん動きはする。しかし俺達王子の男兄弟が王族魔法を使用して全力を出せば、一方的に倒せるという評価は未だにする」

「一対一で二度も負けたのに?」

「そうだ。……一度目の敗北、俺は地属性の魔法で壁を作った」

「君、地属性魔法得意だもんね。それで?」

「焦ったとはいえ、僕の地属性魔法の防御はそう簡単に壊れん。だが一撃で壊され、挙句には私に一発そのまま入れた。当時ルーシュ兄様の最大火力でも壊れなかった、魔法を壊して、な」

「つまり?」

「クロ・ハートフィールドの目には拙には理解出来ないなにかが見えている。……ドラゴン程度なら、単独で撃破しうるかもしれんぞ」

「……へぇ」







「ヒャッフー、間近で見ると怖くて恐ろしいぜ! さっすがドラゴン!」

「でっかいねー! 勝てるかな、クロお兄ちゃん!」

「頑張ろう!」

「おー!」


 ドラゴンに目を付けられ、逃げれば追い駆けられると悟った俺達。ならば闘技場の観客席の高低といった構造を利用して戦った方が良いのではないかと判断し、闘技場に降り立った。

 ヴァイオレットさんは先程もろに咆哮を受けたせいで万全でないと判断し、エメラルドに治療を頼んで外に避難。中に入るかは回復と準備が終わった時の状況次第。

 そして俺とロボ、ブラウンは内部で戦闘だ。ロボには上空から。俺とブラウンは地上で攻撃をする。


「いくよ、必殺――なんかすごい衝撃波!」


 とはいっても、ほとんどはブラウンが攻撃をしているんだが。

 ブラウン自身も理解出来ない力を持って衝撃波……ビームっぽい物を長刀から出す。

 あのビームっぽいものは本当になにかは分からない。魔法なのか、実は全く違うなにかなのか。ロボみたいなエネルギーキャノン的な代物なのかも分からない。


『GYArRRrRRR!!』


 だがブラウンの攻撃も、ロボの攻撃もドラゴンには効いていた。ダメージになっているかどうかは微妙な所だが、少なくとも攻撃動作や飛翔動作を妨げる程度には効いている。流石は訳の分からない力だ! ――っと。


「ブラウン、一旦闘技場の壁を沿うように移動だ。突っ込んでくる」

「りょうかいー」


 俺がそう言って移動を始め、三秒後。俺が指示した時に居た場所にドラゴンが突っ込んだ。


――うわぁ、闘技場の壁をあっさりと損壊させてるよ。


 闘技場は中で生徒達が魔法を全力で使うという特性上、物理的にも魔法的にもかなり頑丈に作られている。仮にグレイとアプリコット、メアリーさんが一斉に強めの魔法をぶつけてもヒビが入る事は無いだろう(全力では別だろうが)。

 それなのにただの苦し紛れで態勢整っていない、ただの体当たりで壁を崩れさせた。流石は暴力の化身と言える存在だ。(多分)主力の地属性を使わずとも、素の払い除けだけでも絶命に繋がる代物という事か。


――さて。


 とにかく、“武器”は手に入れた。

 折角用意してくれたのだから、単に動き回って視界の端でうざったいだけ、なんて役目だけをせずに使ってやるとしよう。


「はい、クロお兄ちゃん。ガレキ」

「サンキュ。ひとまず――そこっ!」


 ブラウンも俺の武器……闘技場が損壊した事により発生し周囲に飛散した瓦礫の存在に気付いたのか、俺が持っていた物とは違う瓦礫を放り投げてくれる。

 真っ直ぐではなく放物線を描くように投げられた瓦礫が俺の所に届く前に、まずは俺が手にした瓦礫を身体強化も含めてドラゴンに投擲し、投擲した後の空いた手でブラウンが投げた瓦礫をキャッチ後、そのままドラゴンから離れるように駆けていく。


『GYArrRrRRR!!』

「うわー、おっきい声」

「あれだけでも怖いな。もう少し静かに痛がってくれないかな」

「それは無理じゃないかなー。でもクロお兄ちゃん、よく効いたね、あれ。確かにすごい勢いだったけど、僕の必殺より、効いてるんじゃないかな?」

「だと良いんだがな。なら今投げた所が弱点っていう事になるからな」


 いくつか見つけたドラゴンの弱点だと思った場所。ひとまずその内の一点である左翼の付け根上の二枚目の鱗を目掛けて投げた。

 当てる事が出来た結果は、瓦礫が特殊素材という事もあるが、叫ばせるほどには効いた模様である。ならばあの辺りを狙えば――あ。


「じゃあ僕もあの場所をねらって――」

「駄目だブラウン、弱点が移動した」

「いどう?」

「魔力の流れを弄ったのか、弱点耐性がついたのかは分からないが、今の場所が弱点ではなくなった」

「わかるの?」

「確証は無いがな」

「んー、了解。じゃあ僕はてきとーに動きをせいげんすればいいかな?」

「頼む。さっきのを指定の場所に撃って欲しい時は、指示するから」

「りょうかいー」


 もしかしたら弱点を見つけたら、大火力の一点集中をした方が良いのではと思う。しかし仮定をした事でそれしか見えなくなってはいけない。一つの手段として考え、油断せずにいかなくては。なにせ一つのミスが命取りになるのだから、常に最善と最悪を考えて行動を――


「よーし、そして今はクロお兄ちゃんが作ったすきがあるから――生死の狭間、剣禅は静思黙考を巡って大悟へ至る」


 え、ブラウン?


「臨兵闘者皆陣烈在前――」


 待って、なんだかブラウンが難しくて格好良い言葉と共に、なんか凄い力を溜めてる! なにアレ!?


「罪障消滅。私は敵を屠る剣となる」


 なんだかブラウンの近くに集まり出した謎エネルギーは、ブラウンの剣へと集約していき、そして。


「【陸劫(ビーム)】!!」


 ビームとして放たれた!

 ……結局ビームだ!


『GYArrRrRRRRRRRRR!!』

「むー、効いてはいるけど、これでもだめかー」

『GR――rrrrr!!?』

「フ、ワタシヲ忘れて貰っては困りマスヨ。そしてブラウンクンだけに活躍はサセマセン!」

「おー、僕の陸劫とにてる攻撃だー」

「上からと地上――ドラゴンよ、暴れる前にワタシタチの攻撃でその身を再び眠りに誘いマショウ!」

「ましょうー!」

『GYAAAA!!』


 …………。

 うん、本当に頼もしいな、この子達。俺が居るかと思っちゃうよ、うん。






「……なんだアレ。なんだアイツ、弱点の場所と消失を見抜いているんだよ。初見だろう? 怖っ。……そして面白いね」


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