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会場に戻る、ちょっと前に起きた彼の小さな変化


 二度目の殴り合いの喧嘩もヴァイオレットさん達に未然に止められた。

 そして互いにもうこれ以上口論をしないように軽く説教を喰らう。……しかし、王族である殿下にあのような説教をする平民など、メアリーさんやクリームヒルトさん位だろうな。信頼関係や性格がそれを許しているのだろが。


「そろそろ会場ですね」

「…………」

「殿下?」


 俺達はパーティー会場に戻ろうとし、そろそろ離れて別々になろうとした周囲に人通りが少ない場所で、殿下は立ち止まった。

 何事かと俺達は殿下を見る。すると殿下は周囲を一旦確認すると、ヴァイオレットさんの方へと向き直った。


「ヴァイオレット。俺はお前という存在が許せない」


 好きや嫌いではなく、許せないという言葉。

 唐突な言葉にメアリーさんも殿下に言葉を挟もうとするが、


「ええ、知っております。私の行動は殿下の目に余るものばかりでしょうから、先日お会いした時も仰っていましたが、酷く煩わしかったのでしょう」


 ヴァイオレットさんが表情を変えずに殿下の言葉に応じたため、口を挟むべきではないと思ったのかメアリーさんは言葉を飲み込み会話を見守った。

 ああ、バーントさんとアンバーさんは落ち着いて。闇夜に気をつけろと言わんばかりの視線をこっそり向けるのはやめて。


「ああ、以前も言ったが俺はお前が学園の地を踏む事さえも許せる事では無かった。お前を見ると、あの時の記憶が甦るからな」

「はい」


 殿下は先日の劇の前に会った時に、完全にヴァイオレットさんを敵として見ており、排除しようとしていた。なにかやらかそうものなら、追い出すだけでは済まないだろう害意すら持っていた。


「今でも許せない気持ちは変わらない。メアリーとなにを話したかは分からない。もしメアリーが許したとしても、俺は簡単に許す気はない。それはエクルやシルバも同じだろう」

「はい」

「俺はこれから挨拶などで忙しいためゆっくりとは話せない。だから今謝罪の言葉を聞くきにはなれん……だが、お前の…………いや、許せないという気持ちは変わらないが……」

「殿下?」


 殿下の歯切れの悪い言葉に、表情を変えずに対応していたヴァイオレットさんが疑問の表情を浮かべる。

 殿下は少し考えた後、視線を逸らしパーティー会場がある方向へと顔を向けながら言葉を続けた。


「いつか話し合う機会くらいは設けよう。……一方的な会話では、許す許さないの判断も正常にできないからな」


 その言葉に、ヴァイオレットさんだけではなく、メアリーさんやバーントさんとアンバーさんも驚いた表情になる。が、ヴァイオレットさんはすぐに元の表情に戻り、殿下に礼をした。


「……ありがとうございます、殿下」

「機会を設けるだけだ。許すと決まった訳では無い」

「いえ、私のような失態をした者に機会を頂けるだけでも嬉しい事です。……かつて殿下は、私に姿を現すなと仰られていましたから」

「ふん、今のままではその気持ちも変わらんがな」


 殿下は不機嫌そうにこちらを見ずに言葉を返すと、そのままこの場を去ろうと歩を進めていく。


「ああ、それと」


 だが殿下は会場に向かう前になにかを思い出したかのように立ち止まり、振り返ると何故か俺を見てから改めてヴァイオレットさんを見る。


「今日のドレス姿似合っている。今までのような高慢さは感じられない。そのドレスを作った者はお前を想って縫ったのだろう。――大切にする事だ。大切に想う者が居る、というのは善い事だからな」


 その言葉にヴァイオレットさんが一瞬虚を突かれたような表情になった後、小さく微笑みながら返答をした。


「ええ、勿論です。大切にいたします。……今の言葉は、貴方に貰った言葉で一番嬉しいものかもしれません」


 殿下はヴァイオレットさんの言葉を聞き、表情を見た後返事をせずに今度こそパーティー会場へと去っていった。

 メアリーさんもこちらに礼をし、殿下の後へと付いて行く。


「成程、あれがヴァイオレットの笑顔か。……確かに、久しく見ていなかったな」


 殿下はなにか呟いていたが、距離と喧騒のせいで上手く聞こえなかった。


Q忙しいのにクロと殴り合うつもりだったんですか

A彼にとってメアリーの件は全ての予定を壊してでも許せない事だったのでしょう

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― 新着の感想 ―
[一言] 偉そうに。 お前が本当の意味で王族の務めを弁えていれば良かったぢけだ。 何を謝罪される立場だと勘違いしてやがるのか。 今すぐ首括れ、下半身王子めが。
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