歴史-フィクション-(:白)
View.メアリー
前世では飛行機に乗る事を憧れていました。
一日の大半をベッドの上で過ごさねばならず、家の外に出る事は余程調子が良くないと出来ないような、地に伏すばかりの私は空を飛ぶ乗り物を夢を見て、憧れたのです。
この世界に転生してからロボさんや気球で空を飛ぶ、という願い自体は叶えました。しかし巡り合わせが悪いのか、この世界で飛行機と呼ばれる物に乗る機会はありませんでした。
そしてその夢は、望まない形で叶う事となりました。王城、そして学園は、建物ごと空へと飛んだのです。
「【ノアの箱舟】というそうだ。流石の君達も知らないものだっただろう?」
本物か偽物かも分からないセルフ=ルミノスは、この状況を作り出した過去の出来事を見た事のように語ります。隠していたおもちゃを披露するような、無邪気な表情で語るのです。
ただ、成人男性が邪悪さを無邪気に表現するのは、子供のように可愛らしいと感想を抱く事は出来ませんが。
「……なにが目的だ?」
「ん?」
「かつて放棄された遺物を蘇らせ、王城、学園。そして王族に連なる者……なにより、この国を担っていく未来ある私の国民達を人質にとったような物だ。そのような事をして、なにがしたいんだお前は」
ノアの箱舟の説明を終え、その後狙ったかのように始まった、此処には居ないセルフ=ルミノスによる機内アナウンス。それらが終わった後、レッド国王は問いかけます。
当然と言えば当然の疑問でありますが、その問いの答えをこのセルフ=ルミノスが持っているのかは分かりません。
「そうやって答えだけを求めるのは良くない事だけど……まぁ良いか。えっと、この王国のトップである王様。名前はなにかな」
「……レッドだ」
「そう、じゃあレッド君。その問いの答えを言おうじゃないか」
これだけの事をしておきながら、レッド国王の名を今初めて知ったかのように振舞うセルフ=ルミノス。……いえ、事実今初めてそのように認識したのでしょう。過去に名を聞いていたとしても、その時の彼には覚える価値が無かった、というだけなのでしょう。
……大きな力を持ってしまった子供。そんな印象を彼から受けます。
「楽しい歴史を作りたい」
そしてそんな子供から放たれた言葉は、無邪気な言葉だったのです。
「王城が空を飛ぶ。実に馬鹿らしい。
生徒が多く居る学園も飛ぶ。なんておかしい。
偶然にも現国王の子供達がどちらかの建物に居るそうだ。
多くの者が操られているそうだ。
少なくない数が姿を変えられているそうだ。
そして首謀者は、いつの間にか悪魔の代名詞を司る名と同じ名を名乗っている。
うん、なんという脚本なのだろう。
将来歴史を学ぶ子達は、今日という歴史を学ぶ時に」
彼は言葉を一旦止め、私達に笑みを見せるのです。
「創作を読む様に、楽しんでくれるだろう」
そのための始まりが、今この時なのだと、彼は楽しそうに不真面目に、言うのです。
…………。
「お前が意図的に作り上げた脚本を歴史と語るか。そのような物は学ぶ価値など無い」
「つれない事を言うねぇ王妃は」
「生憎とそういう性格だ。そしてこのまま済むと思っているのか」
「それは僕を取り押さえるという事かな? 偽物にしろ本物にしろ、今この僕を調べればなにかが分かるかもしれないと。でも良いのかな。僕の強さは、そこで変化させられたマダー君より強いかもだよ?」
…………。
「仮にそうでも、私達にかかれば負ける事は無いと、証明してやろうか」
「わー、恐い。確かに多勢に無勢だ。ましてや僕は今この場では単独犯。とても君達には勝てないだろう。――だから、マダー君にアイリキュウー!」
「「承知いたしました」」
「っ!? ヴァーミリオン、クレール! 離れなさい」
「抑えて――なっ!?」
「この力は……!?」
「駄目だよ、油断しちゃ。操心も、変化もそれぞれに出来るんだ。そんな風に抑えているんじゃ、君達も被害にあっちゃうよ? それにそうやって脅されちゃ、僕も操っている彼らを“無理”させなくちゃいけなくなる」
「くそっ、この外道めが……!」
…………。
「さぁて、これで六対三。まだまだ僕が不利だ。ねぇどうかな。そっちの長髪の子や、胸がおっきな王妃様、僕のチームに入らない? そうすれば操心も変化も使わないって約束してあげるよ?」
「…………」
「母上、アッシュ、耳を貸すな。触れぬように警戒しつつ、奴らを無効化する」
「へぇ、出来るかな。そんな事出来るかな? でもいいね、その立ち向かい、打倒しようとするその表情。実に素晴らしい」
「言ってろ」
「どうだい、君が僕のチームに入れば、洗脳の解き方を教えてあげ――」
…………。
よし。
ぶっ飛ばす。
「ぶっ飛べ!!」
「――ようっふぐぉ!!?」
「メアリー!?」
ふふふ、なんですかもうなんですか。
こちとら折角最高の告白をしようと計画を練りに練っていたというのに、なんという事をしてくださいましたのでしょうか。
お陰でリカバーがどうとか言えない所まで来ているじゃないですかコンチクショウこの野郎です。
「へ、へぇ、やるね。けどそんな風にされたら僕もやりようが――」
「知りません眠って」
「ふごぅ!?」
「メアリー!!?」




