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快適な空の旅(:黒)


View.ネロ



 この世界にも空を飛ぶ乗り物は、飛行船などあるにはある。だが、あまり一般的に使用はされない。

 空を飛ぶモンスターが邪魔とか、空気中に漂う魔力が魔力飛行を邪魔して上手くいかないとか色々理由はあるそうだが、飛行技術は発展していないのである。


「君達にとっての遥か昔に作られたこの魔法技術は、文字通り世界の叡智をつぎ込んだ物だ。現代において魔法は長い年月を持って研鑽されてきたものだから、昔の魔法など大した事ないと侮ってはいけない。今もこうして生きているのだからね。ま、生き返らせて完成させたのは僕だけど」


 しかし俺が見ている光景は、前世(実際はないけど)の飛行技術を遥かに凌駕した代物であった。

 校舎だけでなく多くの生徒や教師が住む宿舎から、闘技場を含む広大な敷地を誇る学園と、王都に入ればまず目に入るレベルで大きく、長い歴史を持つ王国を象徴する王城。

 この巨大な大きさと質量を持つ二つの建物が、一つの要塞……飛空艇となって、空を飛んでいるのだ。スケールがでかすぎて、どういう技術だとか知ろうとする前に、馬鹿じゃないかと言いたくなるレベルである。


「さて、では案内でもしてみるか。学園にも王城にも、操っていない人達が大勢いるからね」


 そしてその馬鹿な事を現代に実行した男は、口元に魔法陣を展開させた。恐らくだが、あれは拡声魔法のようなものであり、声をこの飛空艇に居る者達に届けるための館内放送をするための魔法陣なのだろうと、この異常な状況下で思っていた。


「建物の中に居るお客様方。本日はセルフ=ルミノスが機長を務めます本艦にご搭乗頂きありがとうございます。本艦は空を飛びますが、行き先に関しては不明とさせて頂きます。もし先行き不透明で不満があるようであれば、非常口をご利用ください。僕達はお客様を止めません」


 相変わらず巫山戯ているような口調で、真面目に案内を言うルミノス。僕“達”というが、それが他にも仲間がいるという事なのか、この洗脳された人達を含めて言っているだけなのかは、判断がつかない。


「非常口はこの飛空艇の外へ飛び出せば大丈夫です。そのまま死の国(ヴァルハラ)に直行いたします。なお、安全装置などはありましたが、格好良くないので外しましたのでご了承ください。機内に居ります頭上に輪っかのついた人達は乗務員になりますので、なにか御用がありましたらお気軽にお話しください。この放送が終了後、特定の場所以外で話しかけられ次第、お客様を攻撃いたします。彼らに仕事をさせたくない場合は、逃げるか隠れるか致しましょう。なお、彼らは僕の気持ちに応えてくれて、無理矢理意志を奪ったボランティアですのでご注意ください」


 ルミノスはそこまで言うと、まるでルミノスの姿が声と共に行き渡っているようにうやうやしく礼をする。


「それでは快適な空の旅をご堪能下さい。――楽しい生き証人になろうじゃないか」







 そして、俺達は会場に取り残された。

 機内アナウンスをしたルミノスは、「じゃ、後はよろしく」といってそのまま去ったのである。ルミノスが去った後は俺達に武器を向けていた操られていた人たちも武器を下ろし、そのままこの会場を去っていった。


「……どうしましょうか、エクル先輩」


 ルミノスの言葉を信じるならば、この会場は安全な場所との事だ。

 この場に居る限りは操られていた人達も攻撃をしないらしい。正確には入って来ないだけで、ここから攻撃をすれば反撃はしてくるのかもしれないが……それを確かめようとする気は起きない。


「ひとまず、情報収集だ。メアリー様を含む、他の生徒会の皆がこの場に現れなかった事を含めて現状を把握したい。協力してくれるかな?」

「俺で大丈夫ですか?」

「君は充分な戦力だよ。この場で混乱していないというだけでも充分にありがたい」


 エクル先輩はいつもなら笑顔を浮かべる言葉を言いつつも、その表情は決して笑顔では無かった。状況が状況であるから仕様が無いだろう。

 この場、学園の生徒達が多く居るこの場は、エクル先輩の指揮によりある程度落ち着きは取り戻したが、あくまでもある程度だ。暴動や混乱で勝手な行動をしない生徒がまだ現れていないだけでいつ現れるか分からないし、混乱でざわついている事には変わりない。それでもここまでに落ち着いたのはエクル先輩のカリスマ性と、家格の高い貴族生徒がまだ落ち着いていてくれたお陰であろう。

 そして一番の落ち着かせる事が出来た理由は……


「……ティー君、大丈夫?」


 銃で撃たれて、今もクリームヒルトさんの治療を受けていたティー殿下が居てくれたお陰であろう。ティー殿下が最初に必死に大声で落ち着くように言わなければ、エクル先輩が指揮をしても混乱が続いていたと思われる。


「弾は貫通していたし、なんとか肺や心臓を避けていたから大丈夫だったけど……応急処置だから」


 そのティー殿下は応急処置とはいえ、やけに医療行為が上手かったクリームヒルトさんのお陰で死は免れ、これ以上の重症化は防がれた。しかし怪我には変わらず、しばらくは安静にしていなければならないだろう。


「皆さんの叫び声でなんとか急所を避けられたんですよ。助かりました」

「あはは、でも私はなにも出来なくて……」


 あの時叫んだのは、俺とエクル先輩の他にもいたとは思ったが、クリームヒルトさんも叫んだようであった。誰か女性の声とは思ってはいたが……俺が知っている、明るく朗らかな声とは違う声色に思えたから、気付かなかった。


「……ごめんね。役に立てなくて」

「それを言えば私もなにも出来なかったんですが……」

「ティー君は前に立って一番最初に対応したし、さっきも混乱を静めてくれたよ。けど、私は……なにも出来なかった」


 そして今も、クリームヒルトさんの声はいつもと違う声色だった。明確に落ち込んでいる声。自身の無力さを嘆く、外見の幼さよりもさらに幼く見える、子供のようであった。

 その様子と発言から、俺は彼女に「そんな事は無い」と言って励ましたいと思うが、それは俺の役目ではないだろう。俺が言ったところで意味を成さない。

 怪我をして居るティー殿下には悪いが、彼が励ますべきだと様子を見守る。


「確かにそうですね。結果的になにも出来ませんでした、はい」


 あれ、ティー殿下?


「貴女のした事は、ものすごく速い攻撃を素手で掴み投げ返し、攻撃しようとして出来ず、ただ相手を見守る事しか出来なかった。はい、それだけです」


 いや、その弾丸を掴む事すらも本来できないような神技なんだけどね。今思い返しても「なんで出来るの?」と思うレベルである。


「しかも自分で自分に攻撃しようとしましたね? 死を覚悟して、生き残る術があった訳でもないのに」

「うっ」


 ……あれ、ティー殿下もしかして怒ってる?


「人質を取られていたから、仕様が無かった。というのは理解出来ます。私も貴女の立場であればしたかもしれません」

「そ、そうだよ。ティー君だってやったんだろうし、ああするしか――」

「それはそれとして、文句を言いたいのです。とりあえず雷神剣っときますか?」

「ティ、ティー君……!?」


 雷神剣っときますかってなんだろう。痺れさせますか、的な感じだろうか。


「……貴女の行動は賞賛に値します。結果的に皆さんが生き残り、貴女も生き残ったのですから。……貴女が生きていてくれて、本当に良かった」

「…………」

「ですがやっぱり文句は言いたいのです。なにをしているのかと文句を。感情が雷神剣っていて怒りたく思います。とりあえず抜刀しておきましょうか」

「ティー君!?」


 雷神剣って動詞かなにかなのだろうか。あるいは本気で言っている訳でないからてきとうに言っているだけなのだろうか。


「ですが、今は怪我をして抜刀できないので、後で怒ります」

「後で?」

「はい。……お願いしますから、私が怒るためにも、共にこの状況を生き抜きましょう。貴女が居ないと、私は生きる意味を見失う」

「……うん、ごめんね」

「……出来れば感謝を言われるようにしたいですね」

「……うん」

「……そのためには、まずこの状況を乗り越えなくては、ですね」

「……うん。――絶対に、許さない」


備考 弾丸キャッチ(ライフル速度)

クリームヒルト:頑張れば出来る

クロ:頑張れば出来る

ネロ:頑張れば出来る

メアリー:頑張れば出来る

エクル;出来ない


エクルの感想「待って。これだと日本が誤解されない? 私が少数派どころか一人だけなのおかしくない? ふ、普通出来ないからね!?」


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― 新着の感想 ―
[一言] エクルさん?全く、日本人たる者、弾丸くらい掴めなくてどうします?(目がバタフライ) 電磁バリアとか雷神剣の応用でできるようになったら銃弾効かないかも
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