大事の前のイチャつき_6
「さて、夕食も相変わらず美味しかったですし、明日の準備も整った所で……寝るとしますか、ヴァイオレットさん」
「そうだな、子供を作るような事をするのか?」
「……根に持ってます?」
「さて、食事の時に思い出したかのように言い出し、食べたものを噴き出しそうになった事など、なんとも、思って、ない」
「ふむ……ふむ?」
「なんだその、ふむ、は」
「つまり俺はヴァイオレットさんの機嫌を直すために、いまから色んな事を出来るのか、という“ふむ”です」
「……待て、それはどういう意味だ」
「なるほど、言わせるプレイですか」
「ち、違う。そういう意味では――だからと言って無言で顔を近付けて来ないでくれ、顔が良い!」
「まさか俺がその言葉を言われるとは……ですがヴァイオレットさんは機嫌が悪いようです。夫として、妻の機嫌をとるために色んな事をしないと駄目なので……まずはキスをしようと思うんですが」
「思うんですが、ではない。キスで機嫌が直るとでも――」
「したくないんですか?」
「したい! ……あ、違う。今のは――んむっ」
「――――ふぅ。どうでしょう」
「…………。そのどうでしょう、が機嫌の事なら、まだだ」
「ふむ、では……激しく行きますか、それとも優しく行きますか?」
「な、なんだ。なにに対しての方針だ!?」
「…………」
「そこで黙られると困るのだが!?」
「ではいっそ両方――」
「そういえば、そろそろ学園の夏休暇前のパーティーがあるな!」
「おお、露骨な話題逸らし。そうですね」
「つまり私が婚約破棄から学園を追放されてから一周年だ」
「そ、そうですね。自分で言える分には回復はしているようでなによりです」
「むしろ過回復し過ぎて幸せ過ぎるくらいだからな。過去の不幸は笑えるほどに、な」
「……だとしたら嬉しいです」
「そしてそれが終わると、私達が婚約を結んだ日だな」
「会うまではまだ数週間ありますけどね」
「ふふ、確かにそうだな。不思議な感覚だ」
「そして俺が襲われる日でもありますね……」
「うっ。あの日は、その……」
「すみません、変な事言って。……しかし、夏休みか。グレイ達はどうするんですかね」
「グレイの事だから私達の手伝いをする、と言い出しそうだ」
「可能性はありそうですね。ですが、夏休み課題を考えると、そうもいかないですね」
「モンスター討伐など、社会貢献活動を記録、か。一応私達の領地経営手伝いも課題の内には含まれるだろうが……可愛い子には旅をさせよ、というし、アプリコットに任せた方が良いだろうか」
「ですね。寂しくはありますが、子離れもしないと駄目ですから……とはいえ、万全は期しますがね」
「ああ。資金と道具など、必要な物は出来る限り用意しよう」
「はい、手を抜く事は出来ませんね。……ところで、一つ賭けません?」
「賭け事はあまり良くないが……内容を聞こう」
「グレイとアプリコットの仲が進展しているかどうか、です」
「しているようでしていないに賭けよう」
「では俺はちょっと進んでいるに賭けます」
「……賭けにならないな」
「……ですね。バーントさん達か、シアンとかも巻き込みます?」
「あまり大きくはしない方が良いだろう。恋愛絡みだからな」
「そうしましょう。では進んでいなかったら俺達の勝ちで、勝者として今後の恋愛に役に立ちそうな物でも渡しましょう。ペアルック的な物とか」
「もし進んでいたら……私達の結婚式で、一緒に祝ってみるか?」
「はは、良いかもですね。シキの皆も祝いそうですしね」
「他から来る者達も祝うだろうな。……他から」
「どうしました?」
「……いや、それぞれロボに会うなど、他の名目があるとはいえ、私達の結婚式に殿下達などが来るのが、改めて思うと凄いな、と思ってな」
「確かにそうですね……とはいえ、ヴァイオレットさんという素晴らしい女性の結婚式なのです。当然と言えましょうね」
「いや、クロ殿という素晴らしい男性の結婚式だからだろう」
「いや、ヴァイオレットさんの」
「いや、クロ殿の」
「…………」
「…………」
「よし、結婚式の前にどちらが正しいかを決めますか?」
「良いだろう。どう決めるんだ?」
「……激しく行きますか、それとも優しく行きますか?」
「……良いだろう。私はそんな二つ程度で絞れるような女では無いと証明しよう」
「手数で勝負は決まりません。単純でシンプルでも、それ単体のレベルが高ければ充分な武器になると証明します」
「行くぞ、クロ殿――」
「ええ、ヴァイオレットさん――」
『イチャラブするぞ!!』




