大事の前のイチャつき_3
「これは要約すると、一定のリズムで音を出す。ただそれだけの魔法道具だ。それ以外なにも出来ない」
「おお、確かに屋敷の何処かに設置すれば、それらしい演出は出来そうですが……」
「なんでそんな道具を扱っているの?」
「なに、こういったのは遊び心だ。売れたら面白そう、というやつさ。というか、興味を持っているヒトが事実目の前に居るのだから、その発言はどうかと思うよ」
『うぐ……』
「ちなみにかけると服だけを溶かす薬っていうのもあるけど、いる?」
「さ、流石にそれは……興味はあるけど、神父様にかけるのは……!」
「え、そんなのあるんですか。めっちゃ欲しいです!」
「えっ、クロ?」
「ほほう、興味があるのかい?」
「医療現場で活躍しそうな薬ですし、アイボリーにでも提供してみます。怪我をした際に患部にかければ服を排して怪我を見る事が――なんです、二人してそういう目で見て」
「なんでもないよ。ああ、うんそうだね。そういう目的か……ちなみにシアン君は必要だったりするかな?」
「……チリョウノタメニ、モラオウカナ」
「?」
と、シアンがなんかロボみたいな口調になったというよく分からない会話はあったものの、結局音が出る魔道具を買ってしまった。とても安くはあったが、帰路に着く途中になってこれをどうしようかと思い始めている。本当に使えるのかと今更ながらに思う。冷静に考えれば当たり前の事ではあるのだが、あの時の俺は冷静では無かったのだろう。なにせイチャつきたかったからな。
ちなみに服を溶かす方の薬も一応買いはしたが、こちらは医療現場での活躍は難しいらしい。そもそも謎の錬金女(多分というか絶対ゴルドさん)が提供して量産は出来ないそうだし、服が溶けると液体となるそうなので、患部に溶けた液体が流れ込み大変な事になるからだそうだ。だが一応アイボリーの奴には説明をして渡しておこうと思う。俺が想定した方法での使い方の薬の開発の足がかりになるかもしれないしな。いらない、あるいは開発できないと言われたらオーキッドに渡して成分でも調べて貰おうと思う。
――ま、一旦帰るか。
なんにせよ今日はもう良い時間だし、買った物を置くためにも屋敷に戻るとしよう。そして戻るまでに道具をどう使うかと、見つかってしまった時のための言い訳でも考えるとするか。
そんな事を考えつつ、手のひらサイズの音が出る魔道具を指先でコロコロと回しながら歩いて行く。
「わーい、バンバンバーン!」
「わー、うたれたー。くぅ、だけどまだたおれないよー!」
「えー、そんなー……あ、領主様だー、こんにちはー!」
「はいこんにちは。だけどもうこんばんはの時間だから、御両親が心配する前に帰るんだぞ?」
『はーい!』
と、そんな風に手遊びをしていると、シキに居る無邪気に遊ぶ子供達と会ったので挨拶をする。あの年頃の子は油断をすると時間を忘れて暗くなるまで遊んでしまうので、日も長い今の時期だと暗くなってからでは大分時間が遅くなる。先程の注意事項の事もあるし、一応大人として注意をしておかないと。
「ようし、じゃあ次は僕がけんじゃのやくー!」
「じゃあ私はてんにょさまー!」
しかしそれはそれとして、ああやって遊んでいるのを見ると微笑ましく思えてしまう。シキには自分の欲求に正直な連中が多すぎるが、あのような子達も居る。ああやって子供が子供らしく遊べる姿というのは宝だと思うし、領主として誇るべきだし、領主として守らなくてはと思う。
そしていずれはヴァイオレットさんとの子も……いや、それはまだ気が早いか? だが何度か話はしているし、俺達の子があの子達のようにはしゃぐ姿はみたいとおもうし、けどヴァイオレットさんの体調と意思も大切だし……うん、この話は俺一人で悩む事では無いな。ヴァイオレットさんと一緒に話すとしよう――ん、あれ?
――おかしいな。今の子供達の言葉や行動に妙な所があったような……?
なにかはハッキリと分からないが、ふと、おかしくはないけどおかしい事があった気がする。そう思いつつ、歩いた分距離が離れた子供達の方を振り替える。
そこにはまだまだ元気だと言うように、神話を子供達用に読み聞かせるために作った大衆絵本の物語を真似している子供達が居る。特におかしな様子はない。ないが……なんなんだろうな、この違和感は。
「ところで、クリア神様はだれがやる?」
「私がやりたいけど……だいじょうぶかな? 私ぐらいのこどもがクリア神様みたいにぬぐと、こうじょりょうぞくにはんするんじゃないかな?」
「でも、とうめいお姉ちゃんはいつもぬいでるよ?」
「あのヒトはもうそういう存在だからだいじょーぶだけど……私のねんれいだとみているヒトがつかまるトラップになるんだって」
「そっかー、じゃあやめておこうー!」
――……うーん、シキの子供だなぁ。
無邪気で可愛らしい事には変わりないのだが、会話の内容が既にシキの領民らしい会話となっている。アレが英才教育というやつか。……違うか。
あの中から、将来は大人シキ領民に匹敵するような子達が育つのだろうか。
――……よし、そうならないように領主として頑張るとしよう。子供を守るのも領主としての責務だ。
そんな事を思いつつ。俺は違和感の事はすっかり忘れ、屋敷へと歩いて行くのであった。




