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恋人紹介_2(:黒)


View.ネロ



 一万の中の当たり五個を、五回連続で引く事が出来る幸運の持ち主であるフューシャ殿下。彼女なら前世で言うソシャゲの最高レアや〇番くじで狙いの賞を取れるのではないか、宝くじまで行くと流石に気が咎めるなーと思うような俺である。まぁ俺に前世は無いんだけども。


「……あのですね、ノワールさん。俺は未だ身分があやふやな一人の学生で、相手は我が王国の殿下なんですよ。流石に恋人に勧めるには身分差がありすぎる相手でしょ」


 この国の国王は基本世襲制だが、継ぐ者は指名制だ。長男とかの年齢は関係無い。さらに言えばローズ殿下の夫である、ランドルフ家とは直接的な血の繋がりは無いマダー様も国王になる可能性だってある。

 ようはフューシャ殿下は末妹だからと言って、兄姉達が存命であろうと国王になる可能性が皆無ではないのだ。むしろ他の姉弟を考えると、フューシャ殿下は国王に指名される可能性だって姉弟の中では高い方かもしれない(本人の希望は置いておくとして)。

 そんな国王になる可能性を秘めている女性と、住所不定無職みたいな存在の俺が付き合うなんて周囲から見たら鼻で笑われそうな話である。なのにこの父を名乗る不審者ことノワールさんは、学園長室に俺を呼ぶなり「彼女にどうだい!?」と勧めて来るのである。意味分からん。


「シキ在住の外見を覆う公では本名不詳の女性」

「はい?」

「シキ在住の毒を愛する同性女子。人心掌握が怖い域まで行くスー家から廃嫡気味の平民女子。急に伯爵家の子となった元平民女子」

「うぐっ」

「身分なんて――些末な事だよ」

「いや、それは違うような……?」


 確かに結婚していない現殿下の愛する相手って、身分が良いとは言えない子が多い……多いけども! それはなにか違うと思うんだ!


「というか、ノワールさんが決める事じゃないでしょう。相手は王族ですから、相手が選ぶくらいでしょう!?」

「はは、私の立ち回りを舐めないでくれ。息子――コフン、ネロのためならその程度は出来るのさ!」


 くそぅ、本当に出来そうで怖いなこの若作り学園長。なんだかんだ言っても、あの夢世界の後始末もこなしていたし、俺の扱いもメアリーさんと一緒に色々手を回して学園生にしてくれたし……うん、俺が望めばフューシャ殿下とお見合いとかセッティングしそうだ。彼女と仲のいいクリームヒルトさんやグレイといった周囲への説得もしてそうである。


「なにが不満なのかな。笑顔も素敵な可愛い寄りの美少女。勉学と魔法に優れ、性格的に気付き辛いが意外と運動能力も高い。本の知識も豊富で、立ち居振る舞いも静かで綺麗。しかも一人で料理も行い上手に出来る。それに以前グレイ君と共にお茶会をして楽しく笑い合おう程話も合うのだろう?」

「なんで知ってんだよ」

「そりゃ知っているさ。なにが不満なんだ――はっ、まさかネロは貧乳が好きか!」

「なに言ってんだアンタ」


 フューシャ殿下は確かに……服の上からも分かるくらいにご立派なお胸をしている。ヴァイオレット嬢よりも小柄だが大きい。あまり活発でなさそうなのに、とても良いスタイルをしているような天性の身体である。

 ……別に胸の大小で女性を判断する気は無いし、正直言うなら小ぶりな方が好みだったりするが、まぁ、その、あの胸はとても吸引力がある事を認めざるを得ない。失礼なので出来るだけ見ないようにはしているが……ともかくあの胸はどちらかと言えば好きである。


「さては美乳が好きか! ではこの子はどうだネロ!」

「そもそも胸だけで判断せんわ――って、まだ候補が居るんです?」

「そりゃそうだよ。私は恋人候補を君に勧めるためにここに呼んだんだからな! 私が選ぶ美少女揃いだぞぅ!」


 帰って良いかな。

 けど途中で帰ると色々言って「あの後こっちで決めておいたよ!」と言いかねないので、一応付き合うとしよう。


――それに、この人が言う綺麗な女性っていうのも気になるしな。


 ノワール・アルベールは人をキチンと認識できない。

 鼻や目といったパーツの形は分かるのだが、顔は分からず。

 筋肉量、骨格、胸などは判断で来ても、身体は総合すれば脂肪でぶよぶよした肉人形。

 世界は(ゆが)み、(いびつ)で、(ひず)み、歪曲されてしか彼は認識できない。

 彼の精神状態がそんな状況である事を、俺はあの世界から出る時に知った。それは彼と夢世界で鍵や器といった関係性だったからなのかは分からない。だが、知ってしまった。

 例外は美少年や美少女(特に美少年)。顔が良いと綺麗な形……俺が見ているような認識と同じ形で見えるそうだ。だからこそ生徒会を美少年ハーレムにしようとしたとか。

 そんな彼が認める美少女の紹介を、俺は興味があったので確認してみる事にした。


「こちら、私が知る限りでもトップクラスの美少女、名をシュバルツという」


 なんか知っている人だー!

 正確には知識で知っている暗殺者のお方だー! 何故かある写真でも知っているお顔だし、確かに美形だなこの人!


「彼女なら身分を気にしなくても良いぞ! 詳細は――」

「すみません、別の人でお願いします」

「何故!?」


 だってその人暗殺者なんだもの。いや、なんでも屋で暗殺自体は未経験だったような気もするけど……出来れば遠慮したい。


「ではこの子、スカイ・シニストラ君!」

「婚約者居るだろうがその人!!」

「まだ確定では無いし、彼女は君の外見に対して好感触だぞ!」

「だとしても嫌だわ!」


 というか彼女はクロを好いていたと聞いているし、俺を通してクロを見られても困るし……


「じゃあこの子、ヴァイス君はどうだ!」

「少し年下っぽいですが、確かに綺麗な子――待て、男性と書いてあるぞ!?」

「そっち系も良いかな、って」

「女の子を紹介してくれ!」


 愛に性別は関係無いと思うが、あくまでもそれは愛が前提にある。愛も無い状態で同性を紹介されても反応に困る。……いや、うん。綺麗な子だとは思ったけども。――けども!


「ではマゼンタ君とかどうだい?」

「やめてあの人は色々と、その……うぐっ」

「トラウマ? じゃあトウメイ君とか」

「わざとか。わざと紹介しているのか?」


 綺麗な人だとは思うが、この紹介には悪意があるぞ。もしかして俺の事嫌いなのかこの人。


「スカーレット殿下はどうかな」

「あれか、表向きに男性と結婚させる類のやつか。本当に恋人にする気あるのか!」

「ネロならスカーレット殿下とエメラルド君のハレムも出来るさ!」

「せん!」


 エメラルドって確か夢世界では同じクラスだったあの子で、シキでもあんな感じの子なんだろう? 良い子だとは思うけど、百合に挟まる気はない!


「帝国の幼女」

「俺になにを求めてる」

「共和国の老女」

「俺になにを求めてる!」

「東国の【地獄の熊猫】!」

「せめて人間紹介せいや!」

「通常形態は(ヒト)族だぞ!」

「変化形態が(ヒト)族じゃ無いんだろう!?」


 愛があれば年の差も種族も形態も関係無いけど、ここで紹介するのはなにか違う気がする!


「くっ、また駄目か――だがまだまだぁ!! 私の紹介は108人いるぞ!」

「多いなオイ!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 煩悩の数と同じやないかい
[一言] つまり紹介できる数は煩悩の数というわけですね
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