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婚前の作戦?_3(:紺)


View.シアン



「これは……まさかの天女伝説!?」

「天女伝説……!?」


 かつて、クリア神様の仲間である天女が居た。

 その天女はヒトには見えなかったが、クリア神様がヴァルハラへと旅立ってから数十年後、地上の様子を確認しに降り立った。

 そして地上で水浴びをしていると、その様子を偶然目撃したとある青年が見惚れ、天女を天へと帰らぬように、身に纏っていた羽衣を隠してしまう。天へと変えられなくなった天女は、青年に対し罰を与えるのだが……青年の真っ直ぐな心に絆された天女様は、羽衣が戻った後も地上に残り、風となりて今も人々を見守っている――という神話である。

 つまり今回の場合、誰かが私かアンちゃんに見惚れ、帰したくないという出来心で服を隠した、という所だろうか……!?


「モンスターか動物が持って行った、という方が可能性として高いかと思われます」

「……そうだよね」


 生憎と私は天女のような美貌は持ち合わせていないし、アンちゃんの言うように巣を作るために、布を集めている動物とかに持っていかれたという方が可能性としては高いだろう。


「……というより、そちらの方であって欲しいです」

「……だよね」


 ……それに、天女伝説のようなとまではいかなくとも、仮に私かアンちゃんのどちらかが盗んだ相手の性癖にフィットしたとしても、それで衣服を盗んだ、というのは想像したくない。神父様とかならまだ……いや、神父様でもアンちゃんの服を盗んでいる時点で駄目である。とにかく、出来れば人物ではあって欲しくない。

 どちらにしろアンちゃんの様子に気を取られ過ぎて、注意が疎かになっていたな……二人しかいないのだから、警戒してしかるべきなのに。……いや、それはただの言い訳か。監督すべき私の不注意でこうした状態になっているのだから、今言い訳しても仕様が無いし、反省は終わった後にしっかりするとしよう。


「どうする、周囲を一応調べようか? 足跡とかを調べればなにか分かるかもだし」


 出来れば動物であって欲しいが、ヒトの場合も考慮して周囲を調べた方が良いだろう。いつ無くなったかは分からないが、仮に修道服や従者服を利用し、シスターやメイドに成りすますために盗んだとかなら少しでも近くにいるだろう内に探し出し、取り返した方が良いだろうし。

 ただ……


「アンちゃんはまず身体を乾かさないとね」


 私は慣れてはいるが、アンちゃんは襦袢が水に濡れて今も寒い思いをしているだろう。如何に最近はもう暑くなってきているとはいえ、キチンと乾かさねば体調を崩す。

 これがむしろ全裸で水浴びであれば、まだ身体を拭くだけで済んだのだろうが……ともかくここはまずアンちゃんは火魔法などを使い身体を乾かしてもらい、その間に私が周囲を調べ、どういう方向性で行くかを決めるという形にしよう。


「ごごごご、ご安心を。私の手に掛かれば、ここ、この程度問題ありません事ですよ!」

「寒さで震えてるよ、落ち着いて」

「ふ、ふふ。落ち着いています。衣服の香に惹かれるのはヒトとして当然の性とも言える行為ではありますが、それで衣服を奪うなど言語道断です! 絶対に犯人は捕まえます!」


 あれ、もしかして既に熱出てないかなアンちゃん。さっきまで動物とか言っていたのに、何故か犯人って言っているし。あと衣服を奪う云々については同意なのだが、アンちゃんが言うとこう……素直に頷けないのは何故だろう。


「ふ、私に任せてください。ある程度香りの痕跡さえ残っていれば、私は追跡可能です!」


 うん、多分こういう所があるから素直に言えないんだろうな、と思いつつも、彼女の鼻は結構頼りになるので、この場は素直に頼った方が良いかもしれない。しかし頼る前に、


「まず、香りを辿る鼻を活かすためにも、しっかり身体を拭いてね?」

「ですが――」

「乾かしている間に私が動物かモンスターか、犯人のあたりをつけておくから、アンちゃんは乾かせる算段を立てておいて。そしてアンちゃんが乾いたら私も乾かしてね?」

「は、はい。畏まりました」


 私の“私のために”という文言を入れる事で無理矢理納得させた。……年上で普段はしっかりしているアンちゃんだけど、意外な一面を見れたな。

 そんな事を思いつつ、私達は衣服が無くなった原因を探すのであった。


「シアン様、まずはそちらに私達の物とは違う香りがするので、まずそちらからお願いできますでしょうか」


 そしてアンちゃんが乾かそうとする前に、とりあえずというように示された方に足跡を発見し、結果的にそれが盗んだ相手の場所を特定するキッカケとなった。

 ……凄いな、アンちゃん。





おまけ1 神話に登場するクリア神の仲間達の一部

賢者

あらゆる学問と魔法を修め、清廉潔白で人を救ってきた偉大なる御方。

彼の使う魔法は当時の人々には理解出来るものではなく、彼の行う魔法を記した本は現在においても全てを解明出来ておらず、喪われている本もある。彼の書く本は【叡智の本】と称され、原書は未だに存在だけ確認されているだけで見つかっていない幻の書である。


天女

普段は姿を見せないが、人々を守り戦う時だけ、太陽に透かして風に舞うような美しい姿、と評されるような幻想的な姿として顕現し、戦っていた。

クリア神が■■■=■■■■の封印を成し遂げた後はヴァルハラに戻ったが――後は本話で語られる天女伝説通り。一説では青年と結ばれて子もなしている。




おまけ2 とある全裸女性の、語り継がれる伝説の存在についての感想

賢者について

「あー、アイツ? 人前では厳かに振舞っているけど、隠れて酒飲んでたし、仲間だけの前だとだらけてるし、魔法も真面目に勉強しないから基本めちゃくちゃなのに何故か強い魔法を使えるし……私の女信者を、


『ふ、お前に倣って服を薄手にしている……その点はお前に感謝だな!』


 とか隠れてエロい目で見てたし、私の事は


『は? じゃあお前の姿に関して? ……ふ』


 と鼻で笑ってた生臭坊主だよ。……アイツが賢者、ね。……ふ」




天女について

「あー、アイツ? そっか、正式に結ばれたんだ。え、どういう事かって? ……ああ、アイツはある時、


『ねぇ聞いて、良い男見つけたの! けど私は戦いで忙しいし、あっちは姿も見えない! ねぇ、姿を見えるようになりたいから、さっさと戦いを終わらせて! そしたら私の見えない聖域を適当に弱めてくから!』


 ……と言ってたよ。だから多分、戦いが終わった後に一旦聖域を弱めに行って、ワザと覗かれる形を作って相手に求めさせたんだと思うよ。……アイツはそういう女だよ。え、神話だとヴァルハラに戻ってから地上に? な訳ないでしょ」


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