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婚前の作戦?_1(:紺)


View.シアン



 私、シアン・シアーズは幸せである。


 愛しの神父様との結婚式は近付き、

 可愛い弟のような後輩は


 ……つい最近なにやら可愛い妹のような後輩が母性溢れて、それにやられかけたが、まぁ、問題無い。

 とにかく私は幸せだ。未来がこんなに明るく見えるなんて、なんと私は恵まれているのだろう!!


「……シアン、太ったな?」


 そして私は、現実に負けかけていた。

 クロが作っている、私が着るウェディングドレス。正確にはクロがいくつか出したデザイン(クロが一から作った物ではなく、前世のデザインからの流用だとか)に近いデザインのウェディングドレスを発注し、クロが装飾を施したり私が着る用に合わせたりするというものであるのだが……まぁ、結局クロが作っているという点には変わりない。

 そんなクロが私のために作っているウェディングドレスだが、現在危機に瀕していた。


「ふ、ふふ、ふ。クロ、そういう事は疑問で気軽に言って良いものじゃないんだよ」

「そうだな。――シアン、太った」

「断定した!」


 そう、私のサイズが全体的に増えているのである。入らない、というほどではないのだが、試しに着て「ちょっときついかな?」という感じがして、「ここからクロが微調整する感じかー」と思っていたら言われたのが断定系の言葉である。


「断定も仕様が無いだろう。以前測った時と比べ明らかに増えているんだから。サイズ調整自体は出来る範囲だけど、このまま行って結婚式の日に“きつくて動きにくい”思い、嫌な思い出にならないようにするための友人としての気遣いと思え」

「うぐ」


 そう言われると言い返せない。クロは私の事を思って言っているのは分かっているし、私自身も言ってくれた方が助かるし。


「そ、そんなに太っている感じがしたかな、アンちゃん?」


 そして私は確認と、若干否定の言葉を求めて、着るのを手伝ってくれたアンバー(アンちゃん)に聞く。手際よく着せてくれたから感じなかったけど、まさかメイド流の着せ方とかであまり太っているように思わせなかったのだろうか。そんなのあるかは分からないけど。


「そうですね、やや肉がついたかと。ただシアン様は元が細身である分、気にされる範囲ではないとは思いますが」

「そっかー……お腹?」

「脇腹ですね。あと胸周りです」


 後者はバストが大きくなった事によるものなのかどうかが気になる所である。……神父様、大きい方が好きなのかな。

 しかし脇腹……脇腹か。今まで太った事が無いので意識した事が無かったが、確かに以前より肉があるような気がする。


「御主人様、シアン様は細身の部類です。それが平均程度になったからと太ったと言われるのはどうかと思われます。痩せている事を強要されているようであり、同じ女として抗議いたします」

「アンちゃん、大丈夫。庇ってくれなくても太くなったのは事実だし……」

「いいえ、抗議させてください。……私のお腹はシアン様のようでもなく、森人族(エルフ)の特徴も引いていないのです……!」


 お、おお。珍しくアンちゃんが感情をあらわにしている。そしてエルフの特徴というと、リアちゃんみたいな肉のつきにくい細身の体質の事か。ハーフエルフであるアンちゃんは見た目はスラッとしているけど……そういえば普段から身体のラインが分かりにくい服を着ているね。意外と気にしているのだろうか。


「申し訳ないです、アンバーさん。ですが女性全体の話をしているのではなく、シアンに対して言っています」

「……失礼、主語が大きくなってしまいました」

「いえ、誤解を招く表現でこちらこそすみません。……シアンでなければ、俺も言わないんですよ。軽くそれとなく注意で終わらせます」

「どういう事です?」

「シアン、太った原因に心当たりはあるか?」

「原因、ね……」


 太った原因……そういえばそうだ。原因も無しに太るという事は無い。理由を突き止めて、対策しないといけないし、原因について考えるとしよう。

 お勤めはいつも通りやっているし、むしろ多いくらいで外で仕事をする事も多い。書類仕事ばかりで運動不足という事も無い。

 加齢によって肉が落ちにくくなっている……という事は無いだろう。というか流石に十九でその事を心配はしたくない。

 そうなると、もしかして純粋に筋肉がついたのだろうか。アンちゃんも肉がついたと言っているだけで贅肉とは言っていないし、鍛えられたという事か。

 それならそれで別に構わないとは思う。神父様もそれで私に幻滅するという事は無いだろうし。


「……シアン、思い返せ。最近の教会の食事事情を」

「へ?」


 と、私が結論をつけようとすると、クロが私の様子を感じ取って「これは直接行った方が良いな」という面持ちで私に思い出すように促してくる。


「えっと、食事事情? 食事は相変わらず、神父様、マーちゃんが主に作っていて、スイ君も二人に料理を教わってドンドンと上達して――あ」


 私も作る事はあるが、基本は今言った感じの料理担当である。

 そして神父様はシキで一、二を争う料理の上手さであり、マーちゃんも同程度には上手である。多分二人共、この国でも上位に位置する料理人と言っても過言ではない。なにせたまにある粗食の期間で作られる食事ですら「これ、欲を抑える目的の粗食の意味あるんだろうか」と思う程度には美味しく作れるのだから。

 ……まぁ、ようするに。私は贅沢な料理人三人が料理担当をしている訳で、ここ最近は結婚が決まって、事前祝いに色々とシキの皆が食べ物をくれて、それを使ってご飯を作っている訳で……


「やっばい。食べれば食べるほど皆喜ぶから、最近めっちゃ食べてる……めっちゃ美味しいだもの……」

「……自制しないと、それに慣れてどんどん行くぞ?」

「……うん」


 ……クロが注意した理由がよく分かった。……頑張ろう。


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