周囲と自分の恋_おまけ(:白)
View.メアリー
――まさか告白し、付き合い始めるとは思いませんでした。
グレイ君がなにやら思春期特有の悩みを抱えているように見え、そしてなにやら身を引こうとしているように思えたので、なにかキッカケになれば良いと考えて誘った今回の温泉のテスト入浴。
少々刺激が強いかもとも思い、状況次第では途中で方針を転換しようともしましたが、この位しなければならないと感じたので、やや強引に進めました。
恐らくグレイ君がアプリコットに対して興味……直接的な表現をするならば、性の目覚めのような物が生まれ始めているので、今回の入浴でアプリコットに対して照れると思ったのです(若干私にも反応するかと思いましたが、杞憂でした)。
そしてその様子を見たアプリコットがなにか反応を示して――というような事を狙っていたのですが。
――まさか、全裸の状態で告白するとは。
正確には両者共バスタオルは巻いては居たのですが、そんなものは無いに等しいと言っても構わないレベルでした。……歓楽街にある温泉施設で、裸で正面から向き合い大胆な告白。言葉にすると凄いですね。そのシチュにもってきたのは私ですが、流石に予想外です。これでもし「折角の告白だったのに、あのような場所で……」と将来言われたら、言い返せないレベルです、はい。
「~♪」
「ご機嫌ですね、グレイ君」
「はい、とても嬉しい――幸せな事があったので!」
「そ、それは良かったですね。……アプリコットはどうです?」
「む? そうであるな。間違いなく我にとっても幸福で、思い出深き日となるである。そしてこの幸福を糧に、これから進化した我を見るが良い。フフ、フフフ、フゥーハハハ!」
「よっ、アプリコット様!」
……とはいえ、本人達は楽しそうであり、恨み事などを言ってこなさそうなので今の所は助かっていますが。むしろ先程私のお陰で一つ壁を超えたとか感謝されましたし。
あと付き合っているのなら私はグレイ君に近付かない方が良いかもと思ったのですが、まさかの光景に固まっている所を二人に見つかったため近付いた所、二人共特に気にしていないようなので普通に温泉に浸かっています。グレイ君も性に目覚めたというより、単純にアプリコットを女の子として意識した、というだけのようなので、別に私のような女の裸を見た所で特に興奮は得たりしないようです。
――しかし、お付き合い、ですか。
以前フューシャ殿下が疑問視しているのを聞いた、「生徒会で付き合っているのはスカイだけ」という言葉。
フォーン先輩は生徒会を辞められ、クリームヒルトはもう実質付き合っているようなものであり、アプリコットは今先程付き合い始めました。
フューシャ殿下は恐らく気になる人は居るのでしょうが、本人の性格と立場から思いを告げる事は無く、このままいけば王族として誰かに嫁ぐでしょう。ようするにまだ恋にまでいっていないように思えます。
――生徒会で誰とも付き合っていないのは、私だけですか。
別に誰かと付き合っている事が偉いという訳ではありませんが、好きな人が居るのに付き合っていないのは私だけです。
ヴァーミリオン君が好きだと自覚したのにも関わらず、私の意志に気付いたシルバ君とアッシュ君の心情を気にしてしまったため、うまく動けずにいた――なんて事は、言い訳にもなりません。
結局お二人は私のいない所で、私には乗り越えられないだろう事に区切りをつけて一皮むけていました。彼らを言い訳にすれば、私は彼らを侮辱している事に他ならないのですから。
だからこそ……
――よし、決めました。
私は進むと決めました。
気付いた自分の気持ちに真っ直ぐ行くと決めました。
彼を夢中にさせると決めました。
彼が想像する最高のシチュエーションの予想を裏切り、期待を裏切らない形で想いを伝えると決めました。
私との身分差とか、周囲の反応とか、自分が告白したかったとか。そういった物を全て忘れて了承してもらえるような、告白をすると、決めました。
――感化されちゃいましたかね。
元々考えていた事ではありますが、二人が付き合った瞬間を見たのと同時に、私は今まで悩んでいた事が吹っ飛んだのです。
――私もなりたい。
付き合いたい。男女として、想いを告げて結ばれたい。
目の前で私が望んだ形を見せられた結果、最後の一歩を踏み出したのです。
――決行日は、学期末のパーティーです。
去年はヴァイオレットを追い出すキッカケを作ってしまった、夏休み前学期末のパーティー。その日が終わると、皆さんでシキに行って、クロさん達の結婚式に出席するために出発する日になるような日。
その日を、私の告白の日とします。




