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周囲と自分の恋_1(:灰)


View.グレイ



 学園の恋愛の空気が変わってきている。

 それは無事フォーン生徒会長様の会長引継ぎが無事終わり、父上と母上の結婚式が近付いてきている、ここ最近の話だ。


「~♪」

「ご機嫌ですね、ティー君」

「はい、最近クリームヒルトさんと良い感じなんです!」


 ティー君は最近ニコニコとしている事が多い。それは普段私や皆さんに振舞うような爽やかなものではなく、何処となく小さな子供のような笑顔だ。普段が作っている笑顔という訳ではないのだが、抑えきれない喜びを身体も使って表現している、というような様子なのである。


「クリームヒルトちゃん、最近変わられました?」

「確かに変わったと思うけど、グレイ君的にはどう思う?」

「そうですね、明るく朗らかで……私めが今のクリームヒルトちゃんの方が好きと言えるような雰囲気に変わられたかと」

「あはは、ありがとう! 私も今の私の方が好きだよ!」


 そしてティー君の好きな相手である、クリームヒルトちゃんも変わられた。

 前向きになったというか、吹っ切れたというか。今まで自分が幸せになってはならないという感じだったのが、自分の幸せのために頑張っているというか。ともかく、素敵な雰囲気になられていると思える。

 クリームヒルトちゃんも友達であるし、ティー君も友達だ。その二人が今までより仲良くなられたというのなら、私はとても嬉しい。


「スカイ様、なにやら良い事でもありましたか?」

「え? ……そんな風に見えますか?」

「はい、なにやら……ほわんほわんとした、幸せオーラが漂っております」

「ほわん……? そんなつもりはないのですがね。掃除道具を買い替えた訳でも無いですし、最近変わった事と言えば……昨日スマルト君からの手紙を貰ったくらいですかね」

「ほう?」

「ふふ、可愛い文面の手紙でしてね。見ているととても微笑ましくなりますし――ほら、見てください。この文章の所とか、私のために頑張ってくれているという背伸びしている感じがして良いんですよ。ほら、ここです。どうです!」


 手紙を差し出した相手に対して、手紙を持ち歩いて自慢する、という行為を無意識に行うほど幸せオーラがあるスカイ様は何処となく微笑ましさを感じた。

 ただ恋愛というよりは、まだ慕われている弟に対する姉目線のような気もするが、ともかくスカイ様は元気そうだ。一時期は色々と複雑な時期もあったのだが……今のスカイ様を見ていると、その時の不安はもう既に無いようなので、私としても嬉しい限りである。


「フンフンフーン♪」

「ご機嫌ですね、フォーン様」

「おや、恥ずかしい所を見られてしまったね。でも確かに気分が良いんだ。なにせ実家に私の体質が知られてね」

「体質……夢魔族の件ですか? サキュバスと知られたという事なのです?」

「サキュバスというのは知られてないけど、サキュバスの特殊体質(※愛する相手で無いと子供を身籠れない事)を知られた感じさ。祖母が手伝ってくれてね」

「つまり……政略結婚ではなく、好きな相手と結婚しなさい、と言われた感じでしょうか?」

「その通りさ! ああ、生徒会長という重荷から解放されたし、これから私の生き方が変わっていくぞー!」

「おお、フォーン様が輝いておられる……!」


 フォーン様はこれからの恋愛の攻め方が変わると喜んでいた。その喜びのオーラは、普段は油断をすると見失う影の薄さが払拭されるレベルであった。なお、それは一時のモノであり、後日よく見失う事になった。

 しかし攻め方はともかく、年齢差とかについては解決していない気がするのだが、そこはどうするのでしょうと問うた所、「……愛でどうにかするよ」と仰っていた。なるほど。


「おうおうヴァーミリオン。ちょっとツラ貸せぇ」

「あ、アッシュ? どうしたお前、妙に柄が悪くなって――」

「細かい事は良いんだよヴァーミリオン。僕とアッシュに付き合えよぅ」

「シルバまで!? い、いや、俺はこの後会長としての用事が――」

「それはさっき終わらせておいた。こんな事もあろうかとな」

「ついでに後の事はシャルにも任せたよ」

「任されたぞ」

「シャル、お前急に現れたな」

「これで後顧の憂いなくヤ――遊べるねぇ」

「ま、待て。なにをする気だ、お前達!? ぐ、うぉ!? お前ら二人共、精霊や自分の特殊魔力を身体に宿しているな!? 本当になにをする気だ!?」


 ヴァーミリオン様とアッシュ様と、シルバ様は……なんなのだろう。

 アッシュ様とシルバ様に関しては、ここ数日心ここにあらずと言った様子だったが、昨日と今日はとても調子が良さそうだというのは分かる。なにせ今もクチナシ様と戦われた時に使われたという秘術を身に宿しているし、その宿した状態で避けていたヴァーミリオン様と遊ばれるようですからね。やはり皆さんは仲良くしていると嬉しいです!


「うぅ……えぐっ」

「あのー、エクルさん。退院したのが嬉しいのは分かりますが、その……」

「退院なんてどうでも良いんです。私は、私はメアリー様が前に進まれて学園生活を送っているのを見ただけで、もう、涙が止まらなくて……!」

「も、もう、良いじゃないですか! 泣くのをやめてください!」

「今度のクロさん達の結婚式、トリプルにするように打診しておきましょうか?」

「き、気が早すぎです!」


 それと恋愛とは少し違うが、エクル様が退院された。本来はもう少し入院する必要があったのだが、「メアリー様の愛が進んでいるのに黙っていられません!」とメアリー様への愛で回復したとかなんとか。愛、凄い。

 確かにメアリー様は変わられたように見える。クリームヒルトちゃんと同じような方向に進まれたような気がする。進んだ事により、別の事を心配しているようには見えたが……昨日と今日の様子を見る限りでは、その心配事も解決方向に向かっているようである。


――皆様、良い方向にいっているようでなによりです。


 なにがあって良い方向に行っているのかは分からないが、良い方向に行っているのは確かなので私としては喜ばしい。皆様がこの調子ならば、父上と母上の結婚式の時も、良い雰囲気で祝えるのだろう。

 後は……


「辛い」

「ネロ君……どうしたの……?」

「周囲が恋愛一色で、フラれたばかりの私にはとても辛いのですよ、フューシャ殿下……!」

「ファ……ファイト……!」


 ……ネロ君を、どうしよう。


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