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とある少年の失恋_7(:銀)


View.シルバ



「で、そちらの女の子のような、男の子のような新緑のように綺麗な子がカーバンクルさんだと」

「おっす!」

「お、おっす!」

「で、そちらの未だに堂々と見せつけているハクはなにをしているのです」

「闇落ちしかけた息子をエロで元に戻そうかと」

「なるほど、服を着なさい」

「えー」

「えーじゃありません」


 聞く所によると、アッシュが連れていた謎の存在はカーバンクルであるそうだ。急に姿を現した理由は分からず、今までのように姿を見えないようには出来るそうなのだが、今は「アッシュと一緒に冒険をしたい!」という事で姿を現しているようである。

 ならばアッシュはカーバンクルに付き合ってこの森に居るのかと思ったけど、どうやら別の理由……なんでもストレス発散のために討伐依頼をこなしに来たらしい。ある意味では僕と一緒だ。


「しっかしハクちゃん話すのはひっさしぶりー」

「ああ、久しぶりだカーバンクル。封印される前に会ったが、随分と姿を変えたな」

「それはそっちもでしょう? 前は雄だったのに、今回は雌だし」

「私のドッペルゲンガーとしての特性上仕様があるまい。まぁ私の基本は女だから今回は丁度良い感じだよ。そっちは……どっちだ?」

「マスターであるアッシュの趣味とだけ答えておくよ」

「なるほど、私と同じという事か。互いに変態だね」

「だね」

『待て』


 ハクとカーバンクルが知り合いというのは今更突っ込むまい。精霊の年齢の概念なんてよく分からないし、ハクだって封印される前や最中には色々あっただろうし。

 けど色々と変なレッテルを貼られるのは困るという物である。ハクの場合は僕の要望関係無しに、“クリームヒルトが一番長い間過ごしていたの姿”を借りているだけだろう! アッシュは……まぁそういう趣味があるヒトも珍しくは無いだろう。シキじゃ女性騎士さんと半ゴブリンさんが結婚しているしね。多分そんな感じだ。


「カーバンクルのその姿は、単に私の魔力の属性によって形作られただけで、私の趣味は入っていないだろう……」

「うん、まぁね。契約してしばらく経つと大体似た見た目になるよ」

「まったく……ああ、そうだシルバ。ここで会ったのもなにかの縁だ」

「?」

「私達と一緒に、ストレスを発散しに行かないか?」







「それで、僕を誘った理由はなんだアッシュ」

「誘うつもりはなかったんですが、気が変わりましてね」

「なんで?」

「半裸のハクを見たからですよ」

「……持て余しているなら、ハクに相談しようか?」

「違います。ハクがああせざるを得ないような状況に、なっていたからですよ」

「……僕の精神ケアの話?」

「分かってはいるんですね」

「やり方が間違ってはいると思うけど、やっている理由はよく分かるよ。ハクが僕を心配であんな事をしている事くらいはね。そっちはどうなんだよ」

「と言うと?」

「こんな風に、モンスターの群れに飛び込んでひたすら狩りをするような、野蛮な行為をしている理由だよ」

「言いましたよね、ストレス発散です。モンスターから脱却するためにね」

「モンスター脱却?」

「シャルの奴に言われましてね。モンスターと話すつもりはない、というような事をね」

「どういう――ああ、成程。ある意味僕と一緒か」

「そういう事です。……まったく、私を“話の通じない、分かり合えない存在”として扱うとは、シャルも言うようになったもんだ」

「はは、でも実際最近のアッシュは話が通じない感じだったんじゃない?」

「シルバも言うようになったな」

「何処かの誰かが、必死に身体を張ってくれたお陰でね。そんな風に言えるくらいには余裕が出来たってだけだよ」

「つまり、失恋の傷は癒えたと?」

「そっちも失恋の傷は癒えたのかよ」

「…………」

「…………」

「癒える訳がないだろ」

「だろうな。同じだよ」

「本気で愛していた」

「本気で好きだった」

「彼女に最高の幸福を与えたかった」

「彼女と細かな幸せを過ごしたかった」

「共に歩みたかった」

「一緒に過ごしたかった」

「彼女以外に他は居ないと断言できる」

「彼女以外に他は居ないと断言できる」

「…………」

「…………」

「未練がましいですね、私達」

「割り切れるような事じゃないって事だよ」

「それだけ本気だったて事ですね」

「そういう事だ。――ああ、ちくしょう!!」

「うおっ」

「メアリーさんのばーか!!」

「シルバ!?」

「あんな勘違いさせたり、惚れさせるだけ惚れさせておいてヴァーミリオンを好きになりやがってー! 残された僕はどうすれば良いんだよちくしょうめ! 傾城傾国女! 絶世の美女! 聖女! よっ、器量が良くて可愛らしい女め!」

「悪口……ではないな?」

「というか僕が一番ムカつくのは! 貴女を嫌いになろうと思っても嫌いになれない事なんだよ!」

「…………」

「貴女を嫌いになれればこんな苦労はするものか! 嫌いになれれば応援も出来たんだよ! なのに――なのに……ちくしょう! ばーか!!」

「……シルバ、女性相手に馬鹿呼ばわりはよくありませんよ」

「……男女問わず馬鹿呼ばわりは良くないだろう」

「その冷静な返しが出来るのならば良いでしょう。ともかく、あまりそういった事を叫ぶのは良くありません」

「分かっているよ、そのくらい。でも――」

「ですが今日は許しましょう。悪い事しまくりますよヒャッホウ!!」

「アッシュ!?」

「これはいけない、あれはいけないと溜め込み過ぎては良くないんです。良い子ちゃんぶる必要はないんです。いえ、良い子でいる事は大切ですが、常に良い子でいると勝ち取れないものもあるという事です!」

「まぁ僕達は既に勝ち取れなかった訳だけどな」

「そういう事言わないでください。まぁともかく――よし、あそこにいるモンスターはヴァーミリオン……あの頭に生えてる赤い髪とかまさにヴァーミリオン……!」

「それだと王族全員……いや、うん。そうだね。それでどうす――」

「くたばれヴァーミリオン、この恋敵がぁ!!」

「カーバンクルと共に風最上級魔法!?」

「ふぅ、スッキリしました。今後ヴァーミリオンを見てムカついたら今の散り際を思い出すとしましょう」

「本物に同じ事をしない事を祈るよ」

「ですが……はぁ」

「どうしたの?」

「フラれたなぁ……」

「テンションの上げ下げ激し過ぎない?」

「シルバに言われたくありません」

「うっさい。……まぁ確かに、フラれたね」

「メアリーという好きな存在を思えば思うほど、これが覆らないと分かりますよね」

「ああ、確かに。彼女は決めたら一途だーって分かるし、そこを好きになった訳だし……ここまで来て、“シルバ君もアッシュ君も私の事好きなら、私は皆さんの気持ちを受け止めます!”みたいなハーレム宣言をされても困るよね」

「解釈違いですね」

「解釈違いだね」

「…………」

「…………」

「おい、シルバ」

「なに、アッシュ」

「ストレス発散をしませんか?」

「今していないか?」

「どうも夜で周囲が暗いせいか、気持ちも暗くなりやすいと言うやつのようなので、明るくなるまで暴れたくはないですか?」

「そうだね。もういっそフラれたという沈む気持ちを全てモンスター討伐という形で吐き出してしまいたいね」

「ですね」

「だよね」

「そうと決まれば」

「失恋の八つ当たり――」


『行くぞ!!』






「……元気になったのかな、あれ」

「……みたいだね」

「うーん、いわゆる女の傷は女にしか癒せない――って類かと思ってシルバを癒そうとしたけど、意味無かったか」

「意味ないなんて事は無いと思うよ。少なくともハクちゃんが居なければ、沈んだままだっただろうよ、彼。わたしの方が意味無かったくらいだ」

「その姿で顕現した時、無理矢理彼を浮上させただけでなく、適当に言ってシャトルーズを呼んだのには意味があったでしょうに」

「さて、そうだと良いんだがね」

「……しかし、ねぇ」

「……ああ、言いたい事は分かる」

「……ずっと喋りながら、モンスターを討伐し続けているね、彼ら」

「……マスターはわたしの力を借りてはいるが……ここら一帯の生態系を変えそうだね」

「…………」

「…………」

『ま、元気になったようだし、いっか!』


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