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千五百話記念:あるいはこんな愛に溢れる親達


※このお話は千五百話を記念した本編とはあまり関係のないお話です。

 キャラ崩壊もあるかもしれないのでご注意ください。

 読み飛ばしても問題ありません。




















「愛する我が息子、クロ! 結婚生活は大変だろう、先達パパとしてアドバイスをしに来たぞ!」

「愛する我が子であるクロちゃん! ちゃんと夫としてやっていけてる? いつでもお母さんに頼って良いからね!」

「愛する弟であるクロ! お兄ちゃんが先輩パパとして子供との接し方を教えよう!」

「大好きな弟クロ! お姉ちゃんが妻はどうされれば悦ぶか教えてあげるわ!」


「急になんだやめろ気持ち悪い!」


 ある日の事、仲の悪い両親と兄達が突然俺の元へとやって来て、甘ったれた声で甘やかそうとして来た。

 正直意味が分からない。意味が分かったとしても理解したくない。なんだこの状況。


「どうしたんだクロ。パパが折角シキにまで来たというのに。さぁ、いつものようにパパに甘えて良いんだぞぅ」

「二十歳越えた息子に対し自分で自分をパパと呼ぶな気持ち悪い」


 俺の事を政治道具としか見ていないブラック父さんは、今まで見た事無いレベルの満面の笑みを浮かべている。この人の笑顔は交渉の場においての、前世でよく見てきた詐欺師と同レベルの張り付いた笑顔しか見た事が無かったのだが、心の底から爽やかに笑っている。怖い。


「もうクロちゃんったら、そんな言い方はめっ、よ?」

「いや、あのお母様。私も成人の妻帯者なので、そのような言い方は……あ、いえ、なんでも……」

「そうはいっても貴方は私の息子だもの。それはずっと変わらない事だから、困った時はいつでも甘えて良いのよ?」

「あ、はい、ありがとうございます……」


 子供達を失敗した自分の貴族生活の代替品としているランプ母さんは子煩悩な母になっていた。いつもなら違うと否定すると癇癪を起こすため、常に機嫌を伺わないと駄目なのだが、今は今で相手の様子を探らないと、母性爆発マゼンタさんレベルで甘やかしてきそうなので困るし怖い。


「クロ、子供は良いぞう。なにせ可愛すぎて子供達と会えない時間が辛く、その辛さが会えた時の喜びの大きさになって返ってくるから頑張れるという永久機関なんだ」

「シッコク兄様、それ永久機関ではないと思う」

「愛する妻の子でそうなるのだから、愛する弟の子も同じように愛おしくなると思うから早く――いや、グレイ君がいたな。クロとグレイ君を愛させろぉ!!」

「テメェには子供が生まれてもぜってぇ会わせねぇ!!」


 嫌いな貴族男子と言われると真っ先に思い浮かべるシッコク兄さん(以前会って以降はそうでもなくなったが)は、なんかこう……あの子供を愛していた煩悩が俺にも向いている感じになっている。怖い。


「クロ。アンタ女性経験はヴァイオレット様だけなのよね? 大丈夫、夜の生活の方で相手を満足させられている?  テクニックで悦ばせられている?」

「ロイロ姉様。私は親しき間柄でもそっちの方面を話すのは苦手なのですが……」

「なにを言っているの。こういう事は話し難いからこそ、身近な私に相談できるってものでしょうが!」

「そ、それはそうかもしれませんが、姉様にそういった事を話すのはどうかと……」

「姉弟で遠慮するものじゃないわ。ようし、じゃあ今夜私が直々にテクニックを教えてあげる。具体的にはクロを誘導して、ヴァイオレット様の身体で女が弱い所を横でアドバイスしてあげるわ!」

「おいやめろマジやめろ」


 嫌いな貴族女子と言われると真っ先に思い浮かべるロイロ姉さん。相も変わらず見た目は肉感的で煽情的であり、男を誑かすことにかけては躊躇いもしない振る舞いだ。ただ問題はその振る舞いの活かし方を弟に教えようとしている事なのだが。怖い。


――なにがあった……!?


 ともかく、全員が俺を愛してくる。

 いや本当になんだよこれ。コイツら俺が学園でやらかして以降は碌に連絡も残さないし、結婚した後も公爵家の繋がりを持ったからと利用するだけ利用して、俺にはなにも言ってこないような感じだったではないか。それなのに――


「パパは愛する息子の子供が見たいぞ!」

「まーご! まーご!」

「甥っ子か姪っ子!」

「やはりそのためには私がアドバイスを!」


 それなのになんで違う意味で傍迷惑な感じになってるんだ。いくらこちらの方が俺を愛してくれているとはいえ、これなら今までのような感じの方がありがたいぞ。あとロイロ姉さんの言葉に触発されて、父も母も兄も夜のアドバイスをしようとか手伝うとか言うんじゃない。まじでやめてくださいお願いします。


「ク、クロ殿!」

「ヴァイオレットさん?」


 と、俺がこれは夢なのではないかと思っていると、愛しの妻であるヴァイオレットさんがやってきたようだ。

 だがこの状態の家族と会わせるとかとても嫌だ。いざとなったら両親達を気絶させるか、ヴァイオレットさんを抱えて逃げようそうしよう。そう思いつつ、俺はヴァイオレットさんの方を向き――


「愛する娘であるヴァイオレット! どうしてお父さんから逃げるんだ。仕事は部下に任せてあるから思う存分遊べる。だから親子で遊ぼうじゃないか!」

「愛する娘であるヴァイオレット! お母さんは心配なのよ。子を三人持つ母として色々教えてあげるから! だから私の膝の上に座って、そして話しましょう!」


 お前らもかい!!

 ええと、多分ウィスタリア公爵とフェルメールブルー公爵……ようは俺の義理の父と母だ。俺は今まで話しに聞いているだけで会った事がないので、はじめましてである。

 …………理由はなんにしても、こんなはじめましてはなんか嫌だ。


「ク、クロ殿。私の父上と母上がなにかおかしいんだ。普段はこんなんじゃない。こんなんじゃないんだ!」

「お、落ち着いてくださいヴァイオレットさん」


 ヴァイオレットさんが両親を「こんなん」とか言っている辺りとても困惑しているのが伝わって来る。だが困惑しているという事は、これは異常事態と把握しているという事だ。良かった、ヴァイオレットさんはいつものヴァイオレットさんだ。


「む、これははじめましてだなクロ君。折角だから君も一緒に遊ばないか? 親子二代……いや、グレイ君含めて三代で外で遊ぼう!」

「もうあなたったら。外で遊ぶ年でもないんだから、談笑した方が楽しいでしょう? という訳でクロ君。私の膝の上が開いているから、どうぞ座って話しましょう?」


 くそ、なんだこのダンディなおじさんから放たれる子供のような提案と、ヴァイオレットさんと似ていて艶のあるマダムからのお誘いは。初めて会うのに「こんなの違う」と脳が理解を拒否しているぞ。そもそもこんなんだったら婚約破棄した所で娘を見捨てねぇだろこの夫婦。


「バレンタイン公爵夫妻。申し訳ないが息子達は私共と遊び、談笑し、相談し合うのです。此度は機会が無かったと思い諦めてください」

「はは、ハートフィールド男爵は冗談が上手いようだ。私が此処に来た以上、娘夫婦と遊ぶのは確定しているんだよ」

『…………!』


 そしてお前達は勝手に争うな、睨み合うな、兄達は臨戦態勢になるな!


「よし、ではどちらが遊ぶか勝負をするとしよう」

「内容は?」

「お互いの子供達の過去のエピソードを話し合う」

「なるほど、どちらが子供を愛しているか言い合うんだな」

「その通りだ。――見せてみろ、お前達の子供への愛を!」

「ふ、後悔するなよ! そしてそちらの話も堪能してやるからな!」

「ああ、お互いに堪能し合おうじゃないか!」


 なんだこの状況は、本当になんなんだ!

 いや、これは夢だ。夢に違いない。

 こんなカオスな状況が夢でなければおかしい。だからそろそろ夢から覚めるはずだ!

























「覚めない!」


 ※数時間後に覚めました。


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― 新着の感想 ―
[一言] クロの羞恥心が煽られる夢……
[一言] ホラゲーでは無かろうか?
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