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王族の恋愛進展と事情_4(:真紅)


View.ローズ



「言っておきますが、やるなら生半可では許しません。少しでも駄目だと判断した場合は、シキにいけないものと思いなさい」


 と、いう脅しをした所で、今日の所は私の監視は必要無いと判断した。言わずともこの数日は先取りした仕事すらもこなす勢いでするだろうという様子だったからである。

 姉弟で一緒に過ごせないのはちょっと寂しいが、私達も良い大人だ。そのような気持ちには封をして、二人には各々の執務室で仕事をして貰う事にした。そちらの方が効率的であろう。

 ……とはいえ、良い大人なら見張られずともキチンと仕事をして欲しいとは思うのだが。優等生止まりの私と違い、二人はとても優秀なので多少怠けても取り返しはつくだろうが、反復と継続は丁寧にやってもらいたものである。


――まぁ、私の型にはめてもあまり意味は無いでしょうが。


 私は何事も丁寧に継続する事が性に合うのでやってはいるが、ルーシュやスカーレットなど私の弟達は型にはまらないタイプの天才だ。反復・継続・丁寧はやって欲しいが、私と同じようにそれをやったら効率が落ちて能力を十全にいかせないだろう。自由奔放が彼らには合う、というものである。それはそれとして自由にやりすぎたら諫めるが。


――そういう意味では、弟達を繋ぎ止めた子達は感謝しなくてはいけませんね。


 ブロンド嬢、エメラルド嬢、メアリー嬢、クリームヒルト嬢。

 一目惚れした。在り方を理解した上で対等に接してくれた。救って貰った。根本に惹かれた。

 彼女達は弟達を縛り付けるのではなく留めさせ、そして飛躍させるように高めてくれた。堕落をさせる事無く、すくい上げてくれた彼女達には感謝してもしきれない。その感謝を示すためなら、相手が政略としては意味ないどころか「ランドルフ家は色に狂わせられ堕落するのではないか」という噂が立とうとも、私は弟達のために頑張れるというものである。それはそれとして相手を自力で落とせないようならば容赦はしないが。


――カーマインも、オールが……


 ……いえ、その考えは良くない。それは甘えにしかならない。

 私は状況を判断して、私が出来る事を可能な限り丁寧にやる。それくらいしか取り柄が無いのだから、何事もキチンと熟すとしよう。


「さて、やりますか」


 私は言葉に入れて気合を入れると、恋愛の話をしていたせいなのかは分からないが、家族の事をふと愛おしく感じ、今日は早めに仕事を終わらせて家に戻って子供達に癒されようと決めて仕事にかかるとした。さぁ、頑張りますよ、私!


――……それとシキに行く用事を見つけなければなりませんね。


 そんな事を思いつつ、私はペンを走らせるのであった。







「よし、今日の分は終了、と」


 ペンを走らせ、書類の確認をしてから判子を押したり添削したり、拒否したり。

 そのような事をひたすらに休憩なしで六時間やり、終わらせた。いつも通り、特に大きなトラブルも無かった。相変わらず丁寧に作業をするのは心地良いものである。

 私の仕事の様子についてはルーシュ達は「疲れた様子もなく、集中を切らさずにひたすら黙々と仕事をする姿は隙が無くて怖いです」という時はあるが、こればかりは仕様が無いと言いようがない。私には丁寧に事を運ばせるくらいしか取り柄は無いのだから。


「さて、帰りますか」


 弟達の評価はともかく、今日の仕事は終わりだ。隣室に居た秘書兼護衛の幼馴染にも今日は帰る事を伝え、私は帰り支度をする。私が一通りの片付けと明日の仕事の準備をしておくと、戸締りをして護衛の準備が整った秘書が近くに来たので一緒に出て、鍵を閉めて確認をするといういつもの行動をしてから、私達は帰路につく。


――すっかり日も長くなりましたね。


 少し前まではこの時間だと暗くなっていたのに、今は明かり無しでも問題無い程度には明るい。窓から見える空模様を見ながらそんな事を考え、季節が巡るのは早くなっている気がすると思うと同時に、そんな事を考えるのは私は年をくったせいなのではないか、と、先程弟達に老夫婦のような扱いをされたのも含めて、勝手に落ち込んでいた。


「あれ、ローズ姉さん」


 と落ち込んでいても表には出さないようにしていると、先程まで居た王城の関係者以外は入れない場所と比べると比較的入れる、ヒトが増えていく場所にて声をかけられた。

 私の事を姉様ではなく姉さんと呼ぶのは今の所この世でただ一人、ヴァーミリオンだけだ。何故学園に居るヴァーミリオンが此処に居るのだろうと思いつつ、声のした方を見る。


「こんばんは、ヴァーミリオン。王城に用事ですか?」

「こんばんは。はい、俺達が直接赴かなければならない用事がありまして……ローズ姉さんはお帰りで?」

「ええ」

「では邪魔をする訳にはいきませんね。俺はこれで失礼します」


 ヴァーミリオンは偶然見かけたので声をかけた、程度でなにか用事があった訳ではないようである。それならそれで構わないのだが……折角会った事だし、コミュニケーションとして用事の邪魔にならない範囲で少しだけ会話をしておこう。


「その前に一つ聞いても良いでしょうか」

「構いません。なんでしょうか」

「……ヴァーミリオンは愛しの女性に対し、母性を感じて甘えたくなる事ってあります?」

「なんの話です!?」


 しまった、会話の選択肢を間違えただろうか。私とした事が、変な知識欲が出てしまったのかもしれない。しかし聞いたからには答えを聞いておこう。


「先程ルーシュやスカーレットと話していたのですが、恋愛において母性で攻める事は、攻める選択肢としては良い物なのかという話になりまして……」

「どういった経緯でそういう話になったか気になりますね」

「ヴァーミリオンだったらどうかと思いまして。成人の男性でも、甘えたくなる事はあるのですか?」

「……答えなくてはいけないでしょうか」

「無理にとは言いませんが」

「ええっと……あるとは思いますよ。もし全くなければ、それは好きな相手に対してなにも求めていないようにも思えますので。それは相手をヒトと見るならば当然かと」


 つまりヴァーミリオンは……相手に好かれたい、相手と支え合いたい。そういった相手になにかを求める事を甘える事と見做し、それを求めなければ好きな相手を所有物のように扱っているように思える、という事か。

 少々想定したものとは違ったが、弟の恋愛事情が見えて良かったとも思える。


「答えて頂きありがとうございます、ヴァーミリオン」

「お役に立てたのならば嬉しい限りです」

「こちらも新たな一面を見れて嬉しかったですよ。これからもメアリーに甘えてくださいね」

「それは……なにか違いませんか?」


 違うのだろうか。……うん、自分で言っておいてなんだが、違うな。訂正しておこう。


「ほう、ヴァーミリオン君は甘えたいのですか……」


 あ、メアリー嬢だ。そういえば先程“俺達”と言っていた。もしや彼女と一緒に来ていたのだろうか。


「メアリー!? いや、違うぞメアリー、今のはだな」

「大丈夫ですよヴァーミリオン君。ヴァーミリオン君が同年代の私にバブみを感じようとも、私はそれに応えましょう!」

「単語の意味は分からないが、前後の文脈から違うとだけ言っておくぞ!」

「ふふふ、ヴァーミリオンくーん。ようし、ようし。良い子、良い子ー」

「今その状態で寄って来るな!」

「甘えなさい!」

「甘えを強要するな!」


 ……この状況は私が原因なので止めるべきなのだろうが、少し……いや、かなり意外な光景に動きが止まってしまう。

 この二人、今までと比べると距離感が近付いているように思える。やはり私の知らない間になにかあったようである。それがなにが原因かは分からないが……仲が進展したならなによりである。


「お二人共、ここは王城ですよ。……分かりますね」

『あ、はい。申し訳ございません』


 それはそれとして、騒ぐ事自体は注意しておこう。流石にそこは注意をしなければ。

 ……しかし、ヴァーミリオンは拒否をしていたが状況次第では甘えそうであった気もする。……今度マダーを今のメアリーのように甘えさせてみた方が良いだろうか。……一応聞いておくとしよう。


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