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王族の恋愛進展と事情_2(:真紅)


View.ローズ



「それで、どうなのですルーシュ達の恋模様は?」


 軍人然とした返答が姉弟の会話とは思えない。そういった一家もあるかもしれないが、私達は違うだろうと改めて聞いた。私達は王族だけれども、王位継承争いでギスギスしない仲良し姉弟です。そうに違いないです。だから恋のお話も普通にするんです。


「そう言われましても、進展は多くは有りません。彼女が成人になるまでゆっくりと、ですが確実に、育んでいっていますから、語れるような事は……」

「……そうですか」

「あ、ですが……」

「ええと、このような事を言うのは良くないとは思います。オレの問題なので自分で解決すべき問題でしょうが、相談をしてもよろしいでしょうか」

「構いませんよ」


 ルーシュは双子の弟ではあるが、意志が強くてなんでも自分で解決したがる傾向にある。王族としては相応しい在り方ではあるが、姉としては少し寂しくもあった。そんなルーシュが相談したいというのならば、私は喜んで相談を受けよう。


「オレはつい先日彼女と会ったのですが」


 おや、そのような事があったのか。シキから首都まで遠いとはいえ、空間歪曲石を使えばすぐに来れはするものの、恐らくブロンド嬢との逢瀬はそういったものを介さない、直接会ったものだろう。

 ……先日というが、ここ最近のルーシュは夢世界というよく分からない魔法の対応に追われて仕事をずっとしていたはずだが、そこは野暮なので言わないでおこう。


「なにやら様子がおかしいと言いますか、言動が……ローズ姉様と似ていたんです」

「私?」

「はい」

「……と言うと?」

「こう、淡々としていると言いますか、普段は互いに話すのですが、昨夜はこちらが話す事に相槌をうって微笑んでいる事が多いと言いますか、なにを考えているか分かりにくいと言いますか……」

「ふむ、確かに妙ですね」


 弟がなにやら私の事を分かりにくい淡々としている女だと思っているのと、会ったのは昨夜の話であったというのは置いておくとして、おかしな話ではある。ブロンド嬢は顔を隠していると陽気であり、素顔の状態だと人見知りをするが、親しい相手だと年齢相応の少女らしい無邪気に話すのを楽しむタイプだ。そんな彼女が愛想の少ない私のような感じに……?


「あ、それ私ももしかしたら似たような感じだったかな」

「というと」

「エメラルドと会ってテンション高くしてたけど、思い返すとローズ姉様みたいだったような……?」

「ちなみにいつの話です、スカーレット」

「昨日の夜十時です」

「……貴女達」

「言いたいことは分かりますローズ姉様」

「ですがオレ達にとってはわざわざ会いに来てくれるという事実が、あらゆる決まり事を覆す喜びに変わるのです」

「その通りです。辛さの中、エメラルドがこっそりと来てくれたという事実がどんなに嬉しかったか……!」

「規律と管理が出来ていない事を良しとしない」

『はい、申し訳ございません』


 恋愛に心理的リアクタンスによる盛り上がりがある事は認めるし、姉として弟達の恋愛を応援したいのは確かだが、認め続けると際限がなくなるので注意はしておかなくては。

 しかし、恐らくその二人はブロンド嬢の……滑空? 空を飛ぶ? により、王城まで来たのであろう。そこまでしてやったのは、それぞれとの会話のみ。しかも様子がおかしかった――私のような雰囲気であったという事だ。……なにがあったのだろう。


「ローズ殿下、公務中申し訳ございませんが、入ってもよろしいでしょうか」

「はい、今は休憩中ですから構いませんよ」


 と、私が悩んでいると、執務室の扉がノックされる。私はいつもの公務状態に戻りつつ、何度か仕事で話した事がある、騎士団所属の女性騎士を出迎えた。


「失礼します――ああ、良かった、ルーシュ殿下とスカーレット殿下もおられたのですね」

「む、その口ぶりからすると……」

「私達にも用がある感じ?」

「はい、御三方に伝言を預かっておりまして……もし御三方と同時にお会いした際には、こちらの文を開いて読み上げるようにと言われまして……まさか本当になるとは」


 ? よく分からない内容だが……誰かがこの状況を予想していた、という事だろうか。ルーシュやスカーレットと共に仕事をする事になったのは今朝の話だ。元々予定していない事だったのに、それを予想していた者がいる……?


「では、失礼して――カーマイン殿下からの御伝言です。私自身も内容を知らぬため、読みながらになる事をご容赦ください」


 カーマイン?


「ええと……“もしルーシュ兄様、スカーレット姉様が恋する相手の様子にお悩みならば、それは子供が大人に憧れて真似をする可愛らしい物。クロ・ハートフィールドの妻が思う毅然とした大人の印象を持つ相手を模倣し、母性として相手を見守ろうとしたキッカケですから、深くは考えず大人の余裕をもって接してあげてください。頑張れ、お姉様方!”……との事です。……どういう意味でしょうかね」


 …………。


「ねぇローズ姉様。私、カーマインが怖い」

「弟をそのように言うのはよくありませんよ、スカーレット」

「……イカン、理由はよく分かったのだが……カーマインの顔がチラつくようになってイヤダ……!」

「弟をそのように言うのはよくありませんよ、ルーシュ」

『ではローズ姉様はなにか思わないのですか!?』

「思う事と口に出す事は違います。……王族たるもの、そう簡単に他者の前で思った事を言うものではありません」

『あ、はい』


 ……そう、思うだけなら自由だ。

 ……カーマイン、貴方はなにが見えているのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんか一人だけ住んでる……見えてる場所が違うような………
[一言] 変態の多い王族の中でもぶっちぎりの変態、カーマイン。 なんて無駄に有能なんだ!
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