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母性相談_3(:菫)


View.ヴァイオレット



「良いか。私とロボ、二人に足りないのは圧倒的に色気だ」

「色気……はっ、胸デスカ!?」

「確かに私もお前も薄いし、そこもあるかもしれないが……いや、胸は大事かもしれんな」

「そこで私の胸を見るな、エメラルド」


 確かに私の胸は大きいという自覚は有るし、大きくなり始めの頃から異性が胸を意識し始めたのは分かってはいたし、他の大人の男性も女性の大きめの胸に視線が行く事が多いのを見てきたから、大きな胸が女性の色気に含まれる、というのは否定はしないが……


「今話しているのは母性についてだろう? 何故色気という話になるんだ」


 私も母性については詳しくはないが、色気と母性はあまり関係無いような気がする。私のイメージとしては【母】と【女】は違うというものがあるからだ。そんな中、性を魅力的にアピールする手段の一つである色気は、母性とはあまり関係無いような気がするのだが……?


「良いか、ヴァイオレット。私とロボには人妻の色気は無い」

「そうだな」


 十三歳の未婚女子にそんなものがあったら困る。


「そう、無いんだ。私達に母性は無く、人妻の色気も無い。そして基本的に人妻になってから母になる。分かるな?」

「う、うむ?」

「ならば母性というのは人妻の色気を経てから、手に入るものなのではないか。そう、だからこそ人妻の色気を得ているヴァイオレットに、人妻の色気という母性の一つを学ぶべきだと判断した!」

「ナルホド!」


 成程、ではないロボ。

 いや、しかし間違ってはいないのだろうか。人妻を経てから母になるのはおかしい事ではない。のならば、人妻というのは母になる過程であり、人妻の色気は母性の一種である事はおかしい事ではない……のか? いや、落ち着け私。エメラルドが自信満々にそれらしい事を言うから騙されそうになるが、その理屈はおかしいはずだ! ……はずだ。

 というより、私は人妻の色気というものは分からない。

 基本的に私が会っていた貴族の女性は、私が会った頃には既に結婚をしていて、いわゆる人妻の状態だった。スカイといった貴族女子……未婚女子とも交流はしたものの、基本は同年代と話す事が多く、交流している間に結婚して人妻となった者は居なかった。

 ようするに私にとっては色気のある女性は最初から色気があった。それが人妻による色気なのかは見分けは付かないのである。


「という訳でヴァイオレット。私達に人妻の色気について教えてくれ!」

「それは本当に分からないんだが」


 なので私がその人妻の色気と言われても、自覚を持てないので教えようがないのである。……胸は以前より大きくはなったが、それが人妻の色気によるものなのかは分からない。そもそも私は結婚してから全体的に太くなったというのもあるが……


「私は人妻の色気(そういうもの)とは無縁だと思う。だからそれを聞く相手は間違っていると思うぞ」

「そんな事は無い。バーント、お前も主人は以前と比べると色気が増したと思うだろう? 男として答えてみろ」

「……私にはそういった事を答える立場にはありませんので」

「ヴァイオレット」

「いや、流石に言うように命令するのは酷というものだぞ」


 同性であるアンバーであれば命令しても良いかもしれないが、異性であるバーントに言われるのは憚られる。あると言われても無いと言われても複雑だからな。


「クソ、では……おい乙女判定家のシュネー」

「オマエ、ボクの事をそんな風に思ってたのか」

「吸血鬼とはあれだろう。なんか乙女の血が大好きで興奮するとかそういう特性があったような気がするからな」

「正確には異性との交じりがない生物だ。男女は問わん――待て、それはつまりボクがそういう血を好むという事は、人妻を嫌う。だから人妻の色気判定をしろとでもいうのか」

「難しいか?」

「出来ない事は無いが……まぁ、彼女には色気はあると思うぞ。前を知らんのでハッキリとは言えんがな」

「そうか」

「あと、オマエの血も美味そうに見えるからな」

「……私をそんな目で見ているのか?」

「複雑な気分になるだろう? その逆もしかりだから、あまりそういった事を聞く者では無いと覚えておけ」

「む、すまん。それと運んでくれたお礼に、美味しそうというのなら吸うか?」

「いや、オマエのを吸うと中毒になりそうだから遠慮する。というか躊躇え」

「私の血が中毒……ふふふ、良い響きだ……!」

「嬉しそうデスネ、エメラルドクン。ところでワタシの血は美味しそうナンデス?」

「……ボクに言うのは良いが、ヴァイスの奴にはそういう事言うなよ? まぁ美味そうだけどさ」


 三人の会話はともかく……あるのか、人妻の色気。

 ……よく分からないが、今後その方面でクロ殿を誘惑するのも有りだろうか。それとも既に感じ取っている以上は、下手に武器にしない方が良いのだろうか。無自覚だからこそ手に入れたという可能性もあるし……いや。


「よし、エメラルド、ロボ。そしてバーントにシュネー、人妻の色気を知るために話し合おうじゃないか」

「ご、御令室様?」

「どうした急に」


 武器を知らねば戦える物も戦えない。クロ殿も言っていたが、商売道具(武器)を大事にしないヒトは大成しないと言っていた。つまり武器は大切だ。

 私は私なりの人妻の色気を知って、武器として使えるようになるべきだ。つまり――


「人妻の色気とはどういうものかを深く語り合い、解明していく。そしてそこから母性に発展するならなお良しだ」

「その良し、というのはつまり……」

「そう、母性を武器に出来るのなら武器にする。無理ならば無理で構わない。だが、私は私が既に持つという人妻の色気を武器にしたいと思う」

「具体的に武器にしてどうするんデス?」

「クロ殿とイチャつきたい」


 それをするために学ばずにいられようか。いや、いられない。


「いつもの事デスネ」

「これ以上するのか」

「御令室様、さすがの向上心……!」

「なにこの三者三葉の反応。ヴァイスの教育に悪い気がする」


 反応はともかく、これはロボ達の相談であると同時に、私の欲望を満たすための戦いにもなった。

 さぁ、始めようではないか。私達の私達のためによる――


「母性相談会議を――始めよう」

「ハイ!」

「ああ、語り合うぞ!」

「私に出来る事があれば、出来うる限り協力いたします!」


 さぁ、賽は投げられた。

 話し合って様々な事を解明していこうではないか……!





「……やっぱりヴァイスの教育に悪い気がする……ちょっと辛いけど、もう少しヴァイスの意識を鎮めておくか……ん、あれ。そういえばなんでこの相談にエメラルドが……いや、そこを突っ込むのは野暮というもの、かな」


備考1 各々のスタイル(胸→ウエスト→ヒップの順)

ヴァイオレット:大きい、細い、やや大きい

エメラルド:壁、肉無し、細い

ロボ:でっかい、でっかい、でっかい

ブロンド:年齢相応小さめ、細い、スリム


備考2 “そもそも私は結婚してから全体的に太くなったからな。”

とても痩せている→痩せている に変わった程度。油断をすれば“太って弛んだ肉体は貴族としてあるまじき姿だ”という精神的な影響ですぐに痩せてしまうので、クロ的にはもうちょっと頑張ってほしいらしい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 昔はでかければでかいほどいいと思ってた 今は小さくてもいいなって 肉まん
[一言] 数値上はデブであるボディービルダーを見て、太ってると思う人はいないから、ようは見た目なんだよなぁ…… ヒロインと悪役令嬢は正反対のスタイル(攻略対象の性癖の不一致による不仲)だから、クリーム…
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