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母性相談_2(:菫)


View.ヴァイオレット



「で、デスカラ、年齢が近くて、身近な母親になったばかりのヴァイオレットクンなら、母性を感じるなにかが分かるのデハト、思っただけデスヨ!」

「そ、そうか。すまない、そのような説明をさせてしまって」

「イエ、ワタシも、軽率であったと反省していマスノデ……」


 ロボに言われて詰め寄って説明を求めてしまったが、よく考えなくともロボの説明を予想し納得していれば問題は無かった。いや、考えていなかった訳ではないのだが……どうしても複雑な感情を得てしまったのである。反省しなければ。


――しかし、母性、か。


 母性。

 それは言葉としては理解できるし、他家の親を見て感じたこともある。ただ、私自身がそれを受けた事はあまり無い。……正確には受けた事はあるかもしれないが、感じたことはない、という事かもしれないが。

 なにせ私の母、フェルメールブルー・バレンタインは一言で言うなら貴族の仕事人間だ。

 父との婚姻は営利と政略。夫婦で互いにそれを理解しており、子も“時期が良いと判断したから”と、いうような理由で三人設けたような女性。言い方は悪いが、バレンタイン家に相応しき母であると言えよう。

 母として面倒を見てくださり、愛情を感じる事も数えるほどにはあった事はあるのだが、あれを母性と言えるかは……私には判断がつかない。


――なので、私が母性があるかと言われると……ううむ……?


 シキに来てから、間違いなく私は心に余裕が出来た。

 お腹を痛めて産んではおらず、血は繋がってはいないが、グレイという息子を持つ母親にはなった。そしてグレイと過ごしていると、クロ殿に感じる感情とは別の“愛おしい”や“この子のために頑張りたくなる”という感情が湧いては来る。

 これが母性と言われればそうなのかもしれないが……


――なんだろう、ロボの求める母性とは違う気がする。


 母性は母性でも、私の母性は“自分に感じる幸福”に対し、ロボが言うものは“他者に与える幸福”であるように思える。つまり自己強化型母性と、他者強化型母性の違いというか……イカン、よく分からなくなって来た。


「ロボ、私は確かに母性とやらを持っているかもしれないが、それは――」


 混乱してきたので、とりあえず私の思う“ここ一年で感じている、今までとは違った感情”を簡単に説明し、そしてそれはロボが求めるものとは違うのではないかという事も話した。


「ナルホド、そのような感じなんデスネ」

「ああ、そうだ。しかしグレイと過ごして得た感情と幸福に関してはまだ言うべき事がある。私の事を敬称で呼んでいたグレイが、母上と呼んでくれた時には感情が内側からとめどなく溢れ出て来て――」

「エ、ヴァイオレットクン、アノ……?」

「なんだロボ。母性を知りたいのだろう。ならば例え種類が違うものでも、私が感じた経験と感情の喜びを語って――」

「御令室様、そのお話は素晴らしいかと思いますが、今はロボ様のお話を聞きましょう」

「む、そうだな。すまないバーント」


 私の変化とグレイとのエピソードも重要だが、話をするのは私というよりはロボだ。私の話を聞いて、ロボはどのような事を思い、相談したいと思うのか。つまり相談においてロボに話させる、それが今必要な事だろう。バーントにフォローをされてしまったな。反省せねば。


「と、まぁ私の母性はロボがいうものとは違うものかもしれないが、今の話を聞いてロボはどう思った?」

「ソウデスネ……思った事があるとスレバ」

「すれば?」

「……手に入れようとして、すぐに手に入る類のものではない、という事デショウカ」

「そうだな」


 恐らくだが、この類は手に入れようと思っても手に入るものでは無いし、母性という名ではあるが、長い間、母であるからと言って手に入れて身に纏える物でも無い。得ようと思って得た物は、時に独りよがりになってしまう。そんな代物であろうな、母性は。……多分。


「マゼンタクンのアレも、やはり長い間子供が居たからこそ、得たものなのデスネ……」


 ……マゼンタ様のそれを見た訳ではないので分かりはしないが、多分彼女は特殊なタイプなだけであろう。もちろんお子さんの事もあるだろうが、メアリーと同じで母性を得ようと思ったらなんか得られるタイプのヒトだ。……多分。


「まぁそういう訳だ。だが、包容力がある女性を目指すというのは良いかもしれないから、その方向性で――」


 なにが出来るかを話し合おう、と続けようとした所で。


「それは違うぞ!」


 突然窓から大声をかけられた。ちなみにここは二階である。


「何奴!? いや、この声と二種類の鼓動が織りなす音達(ハーモニー)は……エメラルド様と、シュネー様ですね!」


 バーントがよく分からない方法で誰が来たかを確認する声をあげ、私も窓を見ると、吸血鬼状態のシュネーが、エメラルドを背負った状態で窓からこちらを見ていた。どうやら吸血鬼のパワーを使って僅かな壁の突起を使って壁を登り、窓から入ろうとしてきたようである。……普通に入って来れば良いのではなかろうか。


「それで、エメラルド。違うとはなんだ。あと今回は許すが、次はマトモに正面から来い。来ないと……」

「親父でも呼ぶのか?」

「私が毎日家に訪れてやめるように家へ通おう。仕事が有ろうと、雷雨だろうと、体調が優れない日であろうとな」

「おい、こちらの良心につけこんだ作戦はやめろ。分かった、もうしない」

「まったく、それでなにが違うんだ、エメラルドとシュネー」


 反省はしてくれたようなので、今回は窓から部屋に入れて要件を聞く。

 入って来た時の言葉からして盗み聞きかなにかをしていたようだが……今はそこは問うまい。


「そうだった。違うぞロボ。確かにヴァイオレットに先程感じた母性を聞く方向性は間違っていない。いないが、その方向性の聞き方は駄目なんだ」

「どういう事ナンデス?」


 む、エメラルドもマゼンタ様の母性にやられていた(?)のか。だが聞き方が駄目とは一体……?


「ヴァイオレットに聞くべき母性は――そう、私達にはない人妻の色気についてだ!」

「ナルホド!」

「おい待て」


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、ヴァイオレットとマゼンタの共通点にして、某シスターにはまだ足りてないもの……、人妻感か! 確かに、恋人同士のイチャイチャとは一線したじっとり?とした愛の深め方は夫婦特有のものかもしれな…
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