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ツンツンなんだからね(:淡黄)


View.クリームヒルト



「失礼な。戦いや争いなんて無い方が良いに決まっているよ。私を戦闘狂みたいに言わないでネロ」

「え、お、おう。すまん」


 人間同士の殺し合いとか、傷つけあう戦いとか、虐めのような満たすためだけの蹂躙とか。そんなものは無い方が良いと私は思う。そんなものは物語やゲームだけの世界で充分だ。

 もちろん私が住んでいた場所と時代が良かっただけで、世界にはそういったものが常に存在しているのも知っている。経験こそした事があるとしても、戦争を対岸の火事として子供の頃を過ごす事が出来た、というのは幸福以外の何物でもないだろう。それなのに自ら戦う事を望んだ挙句に飢えるなど、馬鹿以外の何者でもないと言える。


「無い方が良いとしても、身体は強者との戦いを求めているんだよ。戦おう肉弾戦!」

「俺の謝罪を返せや!」


 まぁそれはそれとして、私は馬鹿である事は自覚があるので戦いはしたくはある。傷つけあう事とか殺し合うとかは嫌だけど、戦う事自体は好きなのである!


「でもネロも分かるはずでしょう。自分の実力を遺憾なく発揮し、勝つ事が出来る喜びを!」

「いや、えっと……まぁ分かるけどさ」

「分かるんですね」

「でしょ! 勝つ事が出来なくても、やっぱり似た実力同士で戦うのは楽しいものなんだよ。そして貴重なんだよ……!」


 そして黒兄は私が本気を出しても問題無いどころかちょっとの油断で負けてしまうような、兄であり好敵手だ。そういった自分の最高値を引き出して思い切りやり合える存在というのは中々いない。

 そんな黒兄と似たスペックを持つとなれば、戦いたくなるのは道理というものである。


「他に本気を出して戦えるとなると、メアリーちゃんにスカイちゃんに、フォーン会長さんにシルバ君にシャル君にアッシュ君にヴァーミリオン君に――」

「めっちゃ居るじゃねぇか」


 確かにとてもいるね。純粋な運動能力勝負でもメアリーちゃん、スカイちゃん、シャル君、クリ先輩とかとは結構いい勝負できるし、魔法も含めれば今あげた子達とも全力で遊べる。

 ……もしかしなくても、私は今は彼、彼女らが居るから飢えていないだけで、居なかったら戦いに飢え、色々と持て余していたかもしれないね。今度感謝をしておかなくては。


「そんなに居るなら俺居なくても良くないんじゃないか?」

「でも黒兄の戦い方って他の皆には無い戦い方だし、種類の違う戦いが出来て楽しいんだよ」

「あー、分かります。なにが見えてるんだ、って感じですよね。それでいて運動能力自体も高いですし」

「そうそう。だから楽しいんだよね」

「ええ、楽しそうですよね」

「…………」

「…………」

「おいなんでそこで急に黙る。待ってなんで二人してこっちを向くの? なんで獲物を見るかのような目になるのおいやめて近付いて来ないでイヤ――――!!」








「ぜー、はー……つ、強いな貴女達……いや、強い事自体は知ってたけど、思ったより強かったというか……」

「あはは、ネロ君も強かったよ。ナイスファイト!」

「はい、とても強かったです。今までにない戦闘経験を得られて楽しかったです!」

「ははは、そりゃどうも……」


 という訳で乙女のような悲鳴を上げていたネロ君を無理矢理闘技場に連れていき、着替えてから三人で戦った。

 戦って分かった事は、ネロ君の強さは黒兄と似てはいるけれども、黒兄よりは弱いという事である。ただだからといって油断すれば逆転されそうにはなるし、運動能力や目に関しては黒兄とは違いはあっても、劣っているという訳ではなさそうだ。

 ただそのスペックを使いこなすだけの歴史……経験が無いとでもいうのだろうか。今息が上がっているように、身体を使うという経験値が不足しているため黒兄よりも弱く、そこを補っていけば強くなっていく事が出来るだろう。そんな感想を、ネロ君と戦って感じたのであった。


「ぜー……はー……(この二人、絶対あの世界より強い……クリームヒルトさんの方は一年分があるとしても、メアリーさんもなんでこんなに違うんだ……?)」


 そういえば戦いの最中で気になった事があるのだが、メアリーちゃんの様子がおかしかった気もする。

 この場合のおかしかったというのは、ここ最近感じていた違和感とは違ったおかしさだ。


――……いや、正確には同じなのかな?


 私が疑問として感じていた違和感は、ネロ君の事を含めた夢魔法だけの話が原因だと思っていた。しかしなんというのだろうか……今の戦いを経て、「もしかしたらメアリーちゃんが特におかしく思えたのは、もう一つ理由があったのではないか」という疑問が浮かび上がったのである。

 なんと言うのだろう、今のメアリーちゃんは……


「ふふ、良い汗をかきましたね! やはり後顧の憂いなく戦えるというのは良い物です!」


 ――めっちゃ、眩しい。

 普段から後光がさしているかと思うほどに輝いているメアリーちゃんではあるのだが、今のメアリーちゃんは……うん、とても晴れやかである。世界が充実している、と言わんばかりのにこやかな笑顔。それはもう眩しいったらありゃしない。


「クリームヒルトさ――先輩。メアリーさんがやけに明るい理由は分かります?」

「あはは、なんだろう。分からないけど、この理由を私はよく知っている気がするね。あと敬語は良いよ」

「そうなんですね――なんだな?」


 何故メアリーちゃんがこんなにも晴れやかかは分からない。そしてもう一つ分からないのは、何故かこのメアリーちゃんが晴れやかな理由は、「私も同じような感情を得ているから知っている」と思ってしまうのである。

 ……そしてさらにもう一つ。私はその知っている理由を、何故か「分かってはいけない」と、目を逸らすように本能が告げている気がするのだ。本当に何故だろう。


「多分、ヴァーミリオン殿下の様子と関連しているんだろうなぁ」

「? 殿下と……?」


 恐らく夢世界でメアリーちゃんの身に起きた事と、ヴァーミリオン殿下の事は関連しているのだろう。彼は最初夢世界では記憶は無かったそうだし、そんな状態で会いもしたらメアリーちゃんは恐らく……


「いや、考えるな私。答えを導こうとするんじゃない!」

「きゅ、急にどうした!?」


 ようし落ち着け私。後で答えを出すのは良いが、ここで答えを出すと私は私が同じ気持ちを得ているから分かったという結論になってしまう。だから分からない。分からないぞ、私は!


「恋心が爆発したとか、再会する事で好きだと再認識したとか、彼が傍に居ると落ち着いて気分が明るくなるとか、私もそうだからそうなんだろうと思うとかそんな事無いんだからねっ!」

「誰に向かって言っているんだクリームヒルト先輩!?」


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