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方向性の結論


 天気は快晴。夏に近いとはいえ、風が吹けば心地良い気温と言えるようなある日の午前。

 俺とヴァイオレットさんは、シキを並んで歩いていた。目的はここ数日夢魔法世界の事もありてんやわんやしていたため、息抜きも兼ねた外回りの仕事である。


「どうしましょうか」

「どうしようか」


 そんな仕事(デート)の中、俺とヴァイオレットさんは互いが互いに先程の事に関与した解決策を模索していた。

 先程の事というのは、教会で話した夢魔法世界の事である。

 あの夢魔法世界の事は、あの世界で記憶を取り戻した人……シキで言えば、元から夢魔法耐性により最初から把握していたマゼンタさんとトウメイさんを除けば、俺とヴァイオレットさんしか把握していない。しかし相変わらず鋭いシアンの問い詰めにより、シアンと神父様にはあの世界の事を話す事になった。


「あの世界の事、話すべきなんですかね」


 そして俺達が悩んでいるのは、あの夢魔法世界について他にも誰か話すべきかどうかという話だ。

 ちなみに夢魔法世界の事に関して知っている……話したのは、今の所シアンと神父様を除けばシキではバーントさんとアンバーさんの二人だ。

 この二人はハートフィールド家で働いているので、いずれバレるよりは早めに話した方が都合が良かったから話した……という訳ではなく。


『この声は……なにか重要な事を隠している声ですね!』

『この香は……なにか機密な案件を秘してる声ですね!』


 と、こちらが話す前になんか気づかれた。

 それ以上は従者という立場上、問い詰めてはこなかったが、あんな気付かれ方をしたら話した方が俺の精神衛生上良い気がしたので、話す事にしたのである。なお、ヴァイオレットさんは未だに二人の性癖に気付いていないので、あくまでも「話した方が動きやすいし、彼らなら大丈夫でしょう」という事で話してある。

 そんな感じで今の所話しているのはシキでは四人。マゼンタさんはまだ誰にも話していないようだし、トウメイさんはあの世界の事を調べに王都の方へ行った(シキに来たのは監視が目的なのに自由過ぎないかとツッコんではいけない)ので、あの世界を知ったのは合計八人である。


「問題は話して信じて貰えるかという所と……」

「話した所でなにかあるのか、という事だな」

「……ですね」


 事が事なので、気軽に吹聴すべきではないというのもある。

 けれど、話した所でなんの意味があるのだろうか。というのもある。

 あの世界の記憶を持ち、なんかロボの家系の一族っぽい家名を名乗って鍵を持っていた俺は今後あの魔法の解明に協力する必要がある。ので、バーントさんとアンバーさんに関しては話した方が今後融通が効くので話した。

 しかしそれ以外……例えば何故かあの世界ではアゼリア学園で保健医をやっていたアイボリーに話した所で、その情報をアイボリーに必要な事なのか、という疑問がある。

 アイボリーは過去に教会関係者らしきところでなにかやっていたらしいという事以外はただの腕の良い医者だ。魔法を極めている訳でもないし、世界をどうこうしようとしている訳でもない。そんなアイボリーに話した所で、記憶も無い事を「こんなんだったんだぜ!」と話しても「……そうか」という反応しかされないように思える。他のシキの領民達も似たようなものだろう。


「やっぱり、聞かれたら話す。という方向性で行きましょうか」

「そうだな」


 なので、夢魔法世界については、当初の予定通りシアン達のように聞かれない限りは話さないという事にした。

 シアンに興味津々に聞かれた上に、最初話しかけられた時の言葉が、


『ねぇクロにイオちゃん。……私達に隠している事や辛い事は無い?』


 と、何処かこちらを心配している様子だったので、「隠さない方が良いのではないか」と悩みはしたものの、やはり下手に話さない方が良いだろう。むしろあのように話しかけてくれたので、周囲に気を使うべきだと気を引き締められた。

 ……ネロの事や、クチナシ義姉さんとライラック義兄さんの事もあったから何処となく余裕が無かった俺達。それをシアンは「なにか辛い事を抱えているのではないか」と不安視してくれた。そしてシアン達に話す事で少々気持ちの整理がついたと言える。


「もしくは思い出す兆候があれば話す程度に留めよう」

「ですね」


 そして整理がついた所で、改めて話す時があれば話す、程度に留める結論にした。これは今までと方向性は変わらないが、改めて決めた事には意味があるだろうと思う。


「では、仕事を再開しますか」

「そうしよう。身体が軽いうちに楽しめるデートを楽しもうか、クロ殿」

「……仕事ですからね?」

「ふふ、分かっている」


 結論を改めて決め、ヴァイオレットさんに相変わらず揶揄われつつも俺達はシキを歩きだす。

 シキは相変わらずのどかで、領民達が騒がしくも優しい空気に満たされていて――


「く、くそ……何故か分からないが、ここではない何処かで新たなる怪我の治療と方法を行ったという感触があるのだが、何故か思い出せない……思い出せ、俺。怪我を愛して大嫌いな俺が、怪我を忘れるなどあってはならない! さぁ、夢のようなあの世界を思い出すんだ俺!」


 …………なんか、逆に安心するなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言] やはり不審者は捕まえるべきだと思われ(そうなったらこの物語ほぼ全員捕まるのか)
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