やはり解決するには(:涅)
View.クリ
「ふぅ、美味しかった。満足だよ」
「半分以上食べた……中身は唐揚げとかでかさましがあったとはいえ、卵がメインのこの料理を俺と二人で半分以上……!」
あまり驚かれても困るんだけどな。私だって一応は乙女だし、ガツガツと食べて食い意地が張っていると思われるのはそれなりに恥ずかしかったりするのだから。
「というか、そんなに食べて大丈夫なんです?」
「? ……あ、もしかして体重とか、胃の容量とかの話?」
「はい。あ。あまりこういう話題が嫌ならば言わなくて結構ですので」
「吹聴する程好きではないけど、私は筋肉が発達しているせいか、この位食べても平気なんだよね」
私は筋肉の異常発達のせいでヒトより多く食べるし、食べたら食べたで成長と共に体重もどんどん増えていく。そして全ては筋肉に帰結する。
世の女性はダイエットとか見栄えとかのために体重を気にしているのだろうけど……そもそも私は身長と体重が一緒な数値の時点で、体重を気にしているとか馬鹿らしくなる。
「昔はこの体質のせいで色々悩んだものだけど……まぁ、今では吹っ切れたし、良い婚約者も見つかったからね。気にせず話して良いよ。進んで吹聴され過ぎるのも困るけど」
「そういうものですか……あ、婚約者が居るという事は、あまり知らない男と食事を摂るのは良くないのでは?」
「今更だね」
「すみません。ですがその婚約者に見つかったらと思うと、気になって」
「テツグロさんは一年上だから、もう卒業したよ。それに変に隠れるよりは、こうしていた方が疑われないし大丈夫だよ。姉弟なんだし」
「今更で――」
「今更ですが姉弟扱いで良いんですか、というのなら私の右ストレートが腹部に刺さるよ」
「なにゆえ!? というか今食べたの全部吐くんでやめて!」
「なにゆえ、って……えっと……うん……お姉ちゃんの言う事を聞きなさい!」
「クリ姉さん、なにか良い事言おうとして思いつかなくてやめましたね?」
「世の中には正しくても言わない方が良い事があるんだよ、ネロ」
「それには同意しますけどね」
その通り、正しき事は時にヒトを傷付ける。なにか物語に出て来る王子様みたいな、「我ら二人、生まれし日、時は違えども兄弟の契りを結びしからは、心を同じくして助け合うぞ!」的な言葉を言おうとしたけど、生憎と名言をすぐに思いつくほど私の語彙は多くなかったのである。なにせテツグロさんへの告白も「私とずっと殴り合って下さい!」というものだったような女だしね!
「まぁともかく、余計な事を考えなくて良いんだよ。私の兄さん達はこういかないかもしれないんだし、私に受け入れられてラッキー! 程度に思っておけば」
「は、はぁ……」
「喜ばないとさっきの品をもう一回注文してネロだけに食べさせる」
「受け入れて貰えてラッキー、ふぅ!」
「よし。あ、デザート注文する?」
「まだ食べるんです!?」
そりゃ食べるとも。なにせあんなにたんぱく質や脂質を取った後は、甘い物を食べて清涼感を味わいたいと言うのが女子というものだからね! ……いや、まぁそもそもあんなに食べる女子はあんまりいないけどね。たんに乙女っぽくない行動の後に、甘い物を食べてきゃいきゃいすると言う女子っぽい事をして帳尻を合わせたいだけなのである。
え、そもそも女子ならば女子っぽい事をわざわざ意識する必要ない? それはそうだね。
「はい、という訳でデザートのなんかアイスっぽいドリンク。安心なさい、お姉さんのおごりだ」
「あ、ありがとうございます。……というかこれシェイクだよな。マ〇クとかに売ってる……なんであるんだ……?」
「知ってるの? なんか去年メアリーちゃんが開発したメニューなんだけど」
「ああ、なるほど。ともかくこれなら頂けそうなので、いただきます。……あ、美味しい。マ〇クというよりス〇バのフラペチーノっぽい」
なにがなるほどなのかは分からないし、よく分からない事は言っているが、気に入って貰えたのならば良かった。
「~♪」
……しかし本当にクロ兄様に似ているなぁ。甘い物を食べて目に見えてご機嫌になる所とかそっくりである。クロ兄様の子供っぽい所が彼に感じられるあたり、本当に彼はクロ兄様を元にしているんだなーって思う。
…………。
「ネロはアプリコットちゃんの事が好きなの?」
「ごふっ」
おお、驚き方までクロ兄様そっくりだ。
「え、ええと。何故そんな風に?」
「勘。私の恋愛感知能力がそう示したんだよ。最初はグレイ君を想っているのかなと思ったけどね」
「その時点で能力役に立っていない気もしますが。……別に、そんな事無いですよ。ただ俺の知り合いに彼女達が似ているという事があったので、先程は動揺しただけです」
そう言いながら、少し目を伏せてすぐに私の方を見るネロ。
「嘘を吐いたのが後ろめたいけど、それをバレない様に思ってすぐ私の目を見た感じかな」
「……よく分かりましたね」
そりゃ昔のクロ兄様と同じ感じがしたからね。クロ兄様はもう少しうまいし、その事に気付いたのは今ネロが分かりやすく嘘を吐く仕草をしたからではあるんだけど。
「世の中には正しくても言わない方が良い事があるんですよ、クリ姉さん」
「知ってる」
「……けどそれを知った上で、聞きたいんですか?」
「無理には聞かないよ。けど、あんなに悲しそうな表情をしていたら、次彼女らに会う時は感情で崩れそうだし、距離を置きそうだったからね」
クロ兄様の性格と似ているのなら、これ以上会うのはお互いに良くないと距離を置きそうではあるけれど。
けど、それだとネロのためにもならなさそうだ。そう感じた私は、余計なお節介を焼きたくなったのである。……大丈夫かな。踏み込み過ぎていないかな?
「……言ったでしょう。俺は偶然によって生まれた存在だと」
よし、セーフ。語り始めたからセーフだよやったー!
「うん、聞いた」
「その偶然なんですが……まぁ、貴女には話しても良いでしょうね。俺が生まれた世界の話を――」
◆
「――という感じです」
……ふむ。
夢魔法。改竄。従者であった二人。
術者(誰かは言わなかった)か自分が消えるはずだったけど、なんやかんやで消えずに済み、この世界に来て居る。
……………………なるほどー。
「……あの世界で一番親しい二人が、あのように過ごしているとなると……ふふ、ちょっと寂しくなりまして。馬鹿な話ですよね、実際は1ヶ月と過ごしていない間柄の存在だったというのに」
そのように言うネロは、何処となく寂しそうにしつつデザートを飲んでいた。
…………。
――どうしよう、思ったより根深いものだった……!
私はこのネロの寂しそうな表情を笑顔に変える言葉が思い浮かばないよ! どうすれば良いんだコンチクショウ!
「そういえばクリ姉さん。もう少しで午後からの授業ですが、午後からは出ても――クリ姉さん?」
ええい、こうなったら――
「ようしネロ。こういう時は運動だよ。私と殴り合おう」
「その暴力で解決しようとするのやめません? ……まぁやりますけど」
やるんだ。




