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始まりは転入報告(:涅)


View.クリ



「へぇ、この時期に転入生?」

「みたいだよ」


 アゼリア学園の生徒達が長袖に愛想をつかし、半袖を恋しくなり始めたある日の放課後。私は学園の室内トレーニングルームにて、もう少しで“元”がつく生徒会長さんと話していた。

 会話の内容は転入生の話題。あまり学園生女子のような噂話に疎い私としては、珍しく最先端を行く学園の話題の話を聞けたと言えよう。


「でもそういうの話して大丈夫?」

「大丈夫だよ。私が知っている情報は、話しても問題無い部分しかないし、私は名前も知らない位だから」

「へぇ、珍しい。生徒会長ってそういう情報は結構入って来るものだと思っていたけど」


 なにせ若い貴族社会の社交場的な役割を果たす学園を、生徒目線で管理するのが生徒会である。私の知らない情報や問題を内々に処理したり、「入れば卒業後は貴族社会で情報戦で優位に立てる」などと言われる場所である(私もお父様に入るのを目指せとは言われていた)。その中でのトップともなれば、転入生の名前や転入理由、裏事情(隠し子とか怪我とか)を知っていてもおかしくなさそうなものなんだけどね。


「でも、“私は”って事は、誰か他のヒトが知っているってことなの? あ、学園長先生?」

「ううん、メアリー君が知っているみたいだね」

「へぇ?」


 それはますます珍しい。

 確かに彼女は私のような陰の者と違って陽の者であるため色んな事を知っていそうだし、交友関係も広いだろうから情報は多く持っているだろう。けれどアゼリア学園にわざわざ途中転入するようなヒトは、途中転入出来るような権力を持つ貴族である事が多い。こういってはなんだが、平民である彼女が事情を知っている、というのは珍しい話である。


「ところでその転入生って何年生なの?」

「一年生で、男子だとは聞いているよ。クラスは(マーズ)組だって。あと貴族……であるとかそうでないとか」

「なんでそこ曖昧なの?」

「その辺り凄く濁されたんだよね。……まぁ分かる事は胃痛案件だという事だよ。ふふ」


 わぁ、フォーンちゃんが遠い目をしている。ただでさえ生徒会が濃いヒト達だったり、ここ一年はなんだか問題やはっちゃける生徒が多かったりしてストレスが大変そうだったのに、ここに来て未知の胃痛案件がさらに来てしまい困っている様子である。もう少しで解放されると言うのに、難儀な事である。


「……一緒に運動する、フォーンちゃん? 運動したら気が晴れるかもだよ?」

「気遣いありがとうクリ君……けど私は君みたいに百キロのバーベルをダンベル感覚で持ったりするのは無理かな……」

「いや、私の真似をしなくても良いから。そのヒトに合った運動をして、気持ち良くご飯食べよう?」

「それもそうだね」


 とりあえず最近友人になったよしみとして、運動に付き合ってあげる事にした。ほどよい運動は気持ち良いし、ご飯も美味しく食べられるし良いことだらけだからね!


「じゃあ早速私を持ちあげる所から始めてみる?」

「聞くのは失礼だと承知だが、クリ君の現在の体重は?」

「この間161キロになったよ」

「悪いけど私には無理かな!」

「ははは、冗談だよ」


 という風に、自分をネタにした笑い話をしつつ、私とフォーンちゃんはトレーニングルームでトレーニングをし、一緒に夕食を食べて談笑をした。別れる間際には、


「ようし、転入生にアゼリア学園を好きになって貰えるように頑張るぞ!」


 という言葉を聞けるくらいには、前向きになれたようである。

 うん、これなら転入生が来ても大丈夫そうだ。どういった相手が来ても生徒会長として最後まで責務を全うするであろう。

 学年も性別も違う私にはあまり関わりの無い事だろうけど、もし私の行動が巡り巡って転入生にも良い結果をもたらせる事が出来ていたら良いなと思いつつ、多分会話もする事無く終わるであろう転入生を思いながら今日は眠るのであった。







「……えっと、ね。クリ君。という訳で彼が昨日言っていた転入生な訳なんだけど、君を呼んだ理由は……うん、とりあえず自己紹介お願いできるかな?」


 そして次の日の朝。何故か授業を欠席するようにお達しがあり(公欠扱い)、生徒会室に来た私が目にしたのは、物凄く気まずそうにするフォーンちゃんと、


「……ネロ・ハートフィールドと言います。よろしくお願いしますね、クリお姉ちゃん」


 なんかクロ兄様っぽい、私の知らない私の弟であった。

 …………。

 …………。

 …………?


「とりあえず私は……お父様をぶん殴れば良いのかな?」

「ブラック父さんが死ぬからやめてあげて」


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― 新着の感想 ―
[一言] あれ? ネロくん現実世界に来ちゃった?
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