表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1418/1904

幕間的なモノ:とある夫婦の形


幕間的なモノ:とある夫婦の形



 …………ふぅ。

 なんだライ。私が溜息をつく事がそんなに珍しいか。

 ……まぁ確かに珍しいと言わざるを得ないか。私は大雑把な女だからな。憂鬱で溜息を吐く事は少ないさ。精々一仕事終えた後の緊張を解くための溜息くらいであろうよ。

 だが溜息を吐きたくもなるさ。あんな妹夫婦の様子を見せられてはな。

 新婚であるからあのような会話をする……と言われればそれまでであるが、あのように理解し合う新婚も珍しいであろうよ。話に聞く、庶民の恋愛結婚した熱々の新婚夫婦という奴じゃないか。


 ……おい待て。だからって私が熱々な新婚夫婦のような関係性をお前と求めている訳ではない。やめろ身体を拘束されながら私の頭を撫でようとするな! キスを迫るなコラァ! 確かにして欲しいがそういう事ではない!


 コホン。ともかく、なにせあの夫婦は変わった形であるとは言え、私達と同じ政略結婚だからな。

 新婚の政略結婚夫婦があのように、互いを尊重しつつも相手を心配し、そして無茶を心配はしても相手の“らしさ”を好いている。“こうであれ”と、相手に圧力をかけるのではなく、もっと自然であると言うべきか……むぅ、表現の言葉が難しいな。

 ……理想を押し付けているのではなく、理想でいる事を自然でいられる? 互いに自然である事が互いの理想になるから、一緒に居る事が幸福である。それが私に羨ましく見られる要因である、と?

 随分と彼らを理解しているようだな。それとも理解しきった気になっているだけか?


 おい待て嫉妬している訳ではない。だから耳元で囁こうとするな、愛の言葉を投げかけるな、プロポーズの言葉を言うな初夜の日の言葉を投げかけるな嬉しくなるだろうが!


 ぜぇ、はぁ……ライ、お前本当に反省しているんだろうな?

 私が惚れている弱みに付け込んで、絆そうとしていないだろうな?

 ……は? 惚れた弱みがあるのはこちらなのに、そんな事出来る訳ないだろう、と?


 ………………………………ほ、絆されないからな! 絶対に絆されてやるものか! 不思議そうな顔をするな、天然かお前は! 馬鹿、バーカ!


 ぜぇ……ぜぇ……ところでライ。お前は何処であの鍵の使い方を知ったんだ?

 ライが記憶を有していたのは、私と同じで夢魔法を使えたからというのは分かる。しかし、ノワール学園長先生のような術者の器でも、ネロのような核でも、クロのような鍵という訳でもない。

 私と同じで“記憶を有したままこの世界に居る”というだけにも関わらず、どうやってしったんだ?

 ……うむ、まずショクに封印されていたあの封印されていた奴らの封印を解いた。

 そいつらも夢魔法に関連していたから記憶を有していたけど、実力で黙らせた後に此処に連れて来て無理矢理解析させた。

 そうしたらなんか扉が開いて、中に封印されていた変な存在が解放された。

 ショクに居た封印されていた奴らは、ライに後を託すために力だけの存在になって消え去った。

 皆の力を合わせる事で変な存在もライの力にする事が出来、その際にこの世界の秘密とか解き方とかを知る事が出来た、と。

 あとついでにこの世界が夢なら色んな創造をし放題ではないかと気づき、創造魔法が強くなり、さっきみたいな事が出来た、と。


 おいライ、歯を食いしばれ。何故か、だと。なにをやってんだと言いたいし、一発殴りたいからだよ!


 すまない、流石に殴るのは冗談だ。だが、殴りたい衝動があったのは事実だと覚えておけ。理由は先程のヴァイオレットと似たものだと思っておけ。

 ……いや、待て。確かライはこの世界に目覚めた時、場所は違えど帝国に居たよな。

 そしてショクに行き、封印を解いたあと共に学園に行き、この扉の所に居た訳だな。


 そうなるとライはもしかしてあの子と――んむっ。


 ……おい、ライ。私の唇に指を当てるな。相当無理な体勢で私の口を塞ぐな。

 その無理な体勢をしてでも私の言葉を言わせたくなかった?

 野暮である事は言うものではない、と?

 ……だが、言葉にしないと通じない事はあると思うぞ、ライ。


 そして問わせて貰おうか、ライ。お前、本当は会うのが怖かったんじゃないか?


 ……ふん、ライがそうする時は誤魔化しをして居る証拠だ。だが私には誤魔化しれんぞ。

 そんな証拠は初耳だって? それはそうだ、今初めて言ったんだからな。今まで言う機会が無いのと、いざという時に問い詰めるために黙っていたからな。

 それで、お前は怖かったんだな。それなのにお前はあんな事をしたのか。……馬鹿だな、お前。

 気にする事は無い。私も同類であったからな。

 まぁ、私の場合は会うと心が揺さぶられそうだから会わなかったんだが……お前はもしかすると、私以上にあの子の事について目を逸らして来たのかもしれんな。


 ……本当に馬鹿だよ、お前は。大馬鹿だ。


 なぁライ。私達は夫婦だ。家族なんだよ。

 ……クロとヴァイオレットのような夫婦のようになるのは無理でも、出来る事があるんだ。


 一緒に罪を背負って行こう、ライラック。

 例え嫌だと言っても、お前を一人にはさせないからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ