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普通に怖い(:黒闇)


View.ノワール



 ハッキリ言おう。私は今、とても怖い。


 やるからには最期まで夢を追いたいし、抵抗もする。あと今後を考えれば手を抜けない。

 私も指導する立場として(あと逃走用に)魔法と身体は鍛錬して来ており、それなりの実力があると自負がある。あとこの目も戦闘において役に立つので、私はそうそう誰かに負ける気はない。

 というか戦いというものは、基本結果を逃走と交渉に使って来たので、本気で戦う事自体私には長年なかったのだが……


――……まぁそこは置いておこう。


 ともかく、私は久々の本気で戦闘をする訳なのである。

 場所は王城の地下空間。ランドルフ家が結婚の前に戦い合う場所とか言う訳の分からない事をしている場所だ。

 私がここに逃げ込んだのはただ闇雲に来た訳ではなく、単にここがこの夢魔法の始まりの場所だからだ。そして術者である私が夢魔法の魔力のお陰で色々と強化される場所でもある。

 この夢魔法の魔力を身に宿した私は、そうそう戦闘で負ける事は無いだろう。

 ……ただ、まぁ……


「いくら恩師と言えど、戦うなら容赦はせんぞおらぁ!!」


 牽制の通常攻撃感覚で即死攻撃で殴って来るクチナシ君


「す、すみませんが俺も生きるために戦わせて頂きます!」


 私ほどではないが目が良くて、戦闘巧者なクロ君……じゃないや、ネロ君。


「さっきはよくもやってくれたね……弱っているとはいえ、私の戦闘技術を舐めないでよね!」


 少し弱ってはいるものの、不意打ち以外では攻撃が効かない一方的に魔法を放ってくるクリア様。


「えっと、えっと……え、援護します!」


 全方位優秀な魔法を放ち、全体を調整するヴァイオレット君。


「すまない、学園長先生……俺は俺のためにも、貴方を抑えさせて頂く!」


 王族魔法とか言うよく分からない高威力技を使って来るヴァーミリオン君。


「あははは、学園長先生と戦えるなんて――本当に夢みたいだね!」


 なんかめっちゃ出現した槍は上級魔法の威力だし、併用して色んなものを放つマゼンタ君。


「私は……私の恋心のために、貴方の夢を壊します!」


 あと専門職がようやく使えるレベルの魔法を同時併用するメアリー君。

 これが今、私が戦っている相手な訳である。

 …………。

 ……。

 。


――怖い!


 多分此処に居る七人いれば、大型竜種(ドラゴン)とか普通に屠れる。それはもうあっさりと数体単位で屠れるし、ドラゴンの方に同情するレベルであろう。

 だが生憎と私はドラゴンではないし。強化されているとはいえ、私は目が良いだけの若作りした普通のイケメンだ。こんなぴかっぴかに磨かれた才能の宝石箱の生徒達を前にして、どうしろと言うんだくそぅ。


「だが諦めん。諦めんぞ! 何故なら、夢は諦めなければ叶うと信じているんだぁぁああああああ!!」

「なんだか台詞的に私達の方が悪役っぽくないですか!?」

「メアリーよ、勝った方が正義という事を覚えておけ!」

「やっぱり悪役ですよねクチナシさん!」


 しかし私もただでは負けん。私だって自分の目で自分の魂の形を理解し、年を取るのを遅らせる事に成功したばかりか、肉体面での成長や魔法の効率使用を見る事が出来るんだ。

 それに目のお陰で相手がなにをして来るかおおよそ理解できるし、多対一だからと言って簡単に勝てると思うなよ若人共!! 私は強化されたこの身体で逃げ続けるぞ!


「ノワール学園長先生!」


 と、私が光る宝石達を相手していると、戦いながらメアリー君が話しかけて来た。

 戦闘中に話すとは余裕だな、と言いたいが、聞きたい事はおおよそ理解できるし、逃げながら会話に応じるとしよう。


「カーマインとローシェンナ君をけしかけたのは貴方なんですか」


 おっと、少々予想外の質問だなメアリー君。だが君らしいとも言える。

 その質問にはイエスと応えざるを得ない。ただ私の予定ではローシェンナ君だけの予定だったんだ。

 ローシェンナ君にお願いして言霊魔法で皆に記憶を思い出させられないかと思ったんだが、ローシェンナ君が「この世界では僕の魔法は力不足みたいです」という結論を出した。そこに夢魔法の解除のために、「この世界特有の力を有している石碑」の場所を探していた、一刻も早い夢魔法の脱出を目論むカーマイン君が現れた。

 彼を止められないと判断した私は、本人の希望も有り力を増幅させたローシェンナ君と一緒に君達にけしかけた。君達がなにかを思い出せば、カーマインの無理矢理に起こすという策略を止められると思ったからだ。まぁ、元々思い出している人達が多かったのは想定外であり、協力出来ればけしかける必要が無かったんだけどね。


「その通りさ、私がけしかけた。君達を……そこに居る彼を殺せば夢魔法を解除できると言ってね。……まったく、役に立たない二人だったよ」

「っ……!」

「私からも問おう。この夢魔法を唱えたのは偶然であるようだが、なにかキッカケがあったはずだ。それはなんだ?」


 良い質問だねクチナシ君。

 忘れていた事ではあるのだが、単純に私がここで調べていたら色んな条件が重なり私の願いが叶えられてしまったんだ。「もし私がメアリー君達が入学したころに戻れたら、もっと良い学園にする事が出来ていたのではないか」というあさましい願いをね。

 まさか戻るとは思わなかったし、混乱もした。願っておいてなんだけどこんな世界は間違っていると思い、どうにか解除しようと思った。

 ……けど、この世界なら私の夢も叶うのではないかという欲が出てしまった。そしてもう一つ、()()()()が出て、夢を叶えるために動いたのが弱く醜い私の行動だった。


「もちろんメアリー君に夢を邪魔されそうだったから、邪魔されない世界を作りたかっただけさ。……それなのにまた邪魔されてしまったな。本当に不愉快だ」

「……ほう」

「っ、ノワール学園長先生、大人しくしてください。これ以上は時間の無駄です!」


 おっと、それは良くない言葉だなヴァイオレット君。意志を持った相手に無駄と言っては逆上するだけだよ。

 心がシキで成長した君ならそんな事は言わなかったのだろうけど……ま、その成長を奪ったのは自分のせいだ。ならその責任を果たすしかない。


「勝ちきれなくてよくそんな事を言えるね。本当なら婚約破棄をされるような才能無しは、そういう事しか言えないか。仕様がないね」

「――は、え。……婚約……破棄……?」

「そうそう、そこに居る殿下に嫌われて婚約破棄。なんだったか、“お前を好きになった事は一度も無かった”だったか。――君を見ていると、そう思うのも無理はないな」

「…………」

「ノワール!!」


 おっと、私の言葉にネロ君が反応するか。やはりクロ君を元にしただけはある。

 例え記憶には無くとも、彼女を精神的に追い詰めるのは見過ごせないのだろう。……大丈夫、今の君なら、もう大丈夫。


「偽者がよく騒ぐねぇ。そう言っとけば同情を買えると思っているのかな。いやはや、お買い得にするのが得意なら、商人でもなってみたらどうかな」

「っ、この――」

「あははは、ねぇノワール学園長先生」


 おっと、今度はマゼンタ君か。

 君は今も逃げる私に段々と照準を合わせて来ているから、正直逃げながら喋るのは厳しいのだけど……まぁ、答えよう。


「なにかな、マゼンタ君。君も――」

「死のうとしていない?」


 ――――。


「なにを言っているのかな。私は夢を叶えるために君達を葬ろうとしている。経験を得て、強さを得た二周目の私は、今度こそ夢を叶えて……」

「まぁそれも本音だろうけど、多分貴方は死のうとしている。そして死ぬ時に私達に変な罪悪感を抱かないように振舞っている。もしかしてだけど――」


 マゼンタ君は子供の容姿でありながら、相変わらず蠱惑的な目でこちらを見つつ更に聞いて来た。


「自分が死ぬ事で、ここから皆を脱出させようとしているんじゃない?」


 ……本当に、優秀な生徒で先生は嬉しいよ、マゼンタ君。

 そして優秀過ぎるのも困り物、というのも私は味わって――


「えい隙有り死ねぃ!」

「ぐふぉあお!?」

『えぇ!?』


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