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よく見えていた(:黒闇)


View.ノワール



 私の目はとても良く見える。

 その事に気付いたのは私が七歳にも満たない頃であり、能力を把握したのは十歳の頃だ。

 目の力を把握した、というよりは周囲と見え方が違う、という方が正しいかもしれない。

 私からすれば当たり前に見える物が、ヒトと違うという事に気付いたのである。

 特に才能の原石が私はよく見える。歪な表面に覆われた、美しき原石。磨くまではなにが出て来るかまでは分からないが、磨けば光る才能を有している事は私には分かったのだ。


「君にはヒトを見る目がある!」


 と、余人は称賛した。

 賞賛する程の事かと思ったが、何度も言われれば自覚を持ってしまう。


「指導者として相応しい存在だ!」


 と言われ、爵位と学園長という地位を得た。

 とてもありがたい事だ。努力の果てに得た才能ではないが、持っている才能を活かす事が出来ているというのは言われて悪い気はしない。

 この目を活かして誰かが幸せになるのなら、私は喜んで皆を幸せにしたいと願う。


■■■■■■(君にはヒトを)■■■■■■(見る目がある)!」

■■■■■■(指導者として)■■■■■■■(相応しい存在だ)!」


 ただまぁ、この見える景色だけはどうにかして欲しいかな。

 ぶよぶよとした肉塊。 頭部は穴が開いたような黒く大きな点が三点、逆三角の形状に配置されている。

 後はまぁ、黒い濁点みたいなものがこびり付いている。けど、これはヒトだけでなく景色のそこかしこに見えるから良いんだが。

 ともかく、私にとっての大多数の人間とはそんな感じだ。

 若い頃はそれが嫌で精神的に不安定になった時期もあったが、慣れれば平気になるものだ。むしろ多くの人間がそんな感じなので、逆に優しく出来るというものである。まぁ見続けると気分が悪くなるので、見ているようで見ていないふりをしたり、適当に光る原石に合わせた仕事を割り振って見ないように逃げたりはするのだけどね。

 ただ、そんな私にも優しく出来ない存在が居る。

 それは――


「あの……はじめましてノワール、先輩。今日はよろしくお願いします……」


 そう、美少年!

 彼らには優しくする事が出来ない。なにせ優しくするどころか愛でる対象だ彼らは!

 初めて美少年である学園の後輩を見た時はなんと衝撃的だった事か!!

 大抵の人間がぶよぶよした肉塊で見ていると気分が悪くなる中、美少年(と美少女)だけはとても美しく見える!! というか他の人と同じ目線で見る事が出来る。なにせ写真とか絵で見る美しさそのものだもんね!

 ああ、なんて素晴らしきかな美少年(と美少女)。見ているだけでとても癒されるぜやっほう。

 傍から見たらルッキズムが強すぎる最悪な男かもしれないが、仕様がないじゃないか。だって美少年(と美少女)は見てても気持ち悪くならないんだもの。

 ああ、彼らをずっと見ていたい。というか囲いたい。綺麗な彼らだけの空間の主に私はなりたい!


――あ、そうだ。本当は断る気だった学園の教師の座を得て学園長になろう。


 若き少年少女が毎年入って来るアゼリア学園。そこは貴族平民関係無く、優秀な国中の若い子達が集まるんだ。

 だったらそこで教師をするだけで色んな若い子を間近で見る事が出来る!

 学園長になれば、推薦という形で学園に招く事も出来る!

 そして生徒会を私の力で選ぶ事で全員マトモに見える美少年美少女ハーレムを形成できるのではないか!

 そう決心すれば早いもので、私は私欲のためにとても頑張った。

 辛い事もあったけど、夢のハーレムのために頑張った!


――そして来た、数十年に一度の美少年メンバー!


 なんたる事か、二年連続でいつもより生徒会メンバーを増やしても問題無いくらいの美形達が続々と入学した。それはもうずっと見ていたくなるレベルで。

 本当はもう少し早く完成させたかったのだけど、なんか揉めて公爵家のお嬢様を追放するわ、なんか私も知らない学園の秘密とやらを暴き始めるわ、第二王子がなんか絡んでくるわ、親友の錬金術師が女になって変な道具を持ってくるわで忙しくて完成が遅れた。あと学園祭で見つけた少年執事が居てこそ生徒会は完成すると判断したので、完成を遅らせたというのもあるけど。


――ともかく、夢の美少年ハーレムが目前まで迫り、後はちょっと改革をしようとした所で……メアリー君に邪魔されそうになった。


 ええいくそぅ、なんだよちょっと美少年の方が好きだから生徒会メンバーを一時的に美少年だけにしようとしただけじゃないか。そこまで否定しなくても良いだろうよぅ。けど必死に私を止めようとするその顔も美しくて良いなやっほぅ。


――ま、でも綺麗な君に計画をとん挫させられるのなら良いか。


 私も長く生きているし、学園長になってから色々やりすぎた。

 磨く物も輝く物もなく、見える光景がぶよぶよしているからと、無理矢理輝かせようと学園内の対立を煽りすぎた。

 煽った結果輝く存在は確かに居て、それを見て私は正しいものと思っていたが……


――本物に出会ってしまってはな。


 私が敷いたルールを改善し、空気を支配し、磨くまでも無く輝いた一人の少女。

 そんな少女に磨かれ輝き始めた多くの生徒達。

 私が見てきたのはなんだったのかと思うような……あまりにも眩しくて、綺麗な存在。

 そんな本物のためなら私は――


「学園長先生。――もう逃げられませんよ」


 ――私は、本物である彼女に倒されるのも良いだろう。

 そう思いつつ、私はこの夢魔法に支配された王城の地下空間前にて、彼女達と対峙したのであった。


「よく来たな――私が勝てば生徒会美少年ハーレムの夢が叶う戦いをしようではないか! 私は世の中の美少年のために最後まで戦い抜くぞ!」

「世の中の美少年がそちらの味方前提で話さないでください!」


 まぁそれはそれとして、叶う夢が目の前にあるならば最後まで足掻くとしよう。なにせここは私の夢が元だしな。最後まで夢を見させてもらうぞ!


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[一言] 人の夢と書いて儚い…
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