面倒くささナンバーワン(:白)
View.メアリー
「見ていない……見ていない……いや、見たものを否定するとは、騎士の名折れ……責任を取るべきなのか……だがそうなると俺はヴァーミリオンやアッシュを倒す事になるのか……!?」
「アッシュ、俺達の幼馴染が面白い反応をしているが、どうするべきだろうな」
「そればかりは仕様がない。シャルはただでさえ女性に免疫が無いのに、あのようにバッチリ見えてしまってはな。狼狽えるのもさもありなんだ」
「黙れお前達は免疫があるとでも言うのか」
「王族として異性の裸で一々動揺するほど初心ではない。それに芸術の授業でも見慣れている」
「驚きはしたが、この程度で心を乱すような者が近侍になれるものか」
「黙れ偉そうに言うくせに、俺と同じで女性経験に乏しい耳年増め!」
『やかましい!』
うーん、とても楽しそうですね、男性陣は。シャル君については最初に出会った頃のような、表情に乏しいからクールに見えるだけで、その実女性免疫が無い初心な性格、というのを見れて懐かしく思います。こういう懐かしいなら大歓迎なんですけどね。
「――――」
「ところでアッシュ。シアンが涙を一筋流しながら、天に向かって祈っているが……なにがあったか分かるか?」
「そちらについては本当に分からないが……犯しがたい神聖な感じがするから、触れない方が良いと思う」
「……だな。こんな綺麗な祈りは初めて見た」
そしてこちらは最初は痴女だと警戒態勢でありましたが、すぐに彼女が誰なのかに気付き、感謝の意を込めて祈りを捧げるシアン。相変わらず敬虔であると彼女が誰かを見破る事が出来る様なのですね……私から見たら全裸の浮いている女性、程度にしか思えないのですが。
「で、なんで居るのでしょう、トウメイさん。その綺麗な身体を見せつけて男性陣を惑わす事が趣味になったのです?」
皆さんが各々の反応をする中、「私が相手しますので」といってちょっと離れた位置でクリア様……もとい、トウメイさんを問い詰めます。
「突然現れた事は謝るけど、それほど切羽詰まっていたと許して頂戴」
「というと、トウメイさんも把握はしているのですよね?」
「ある程度は、だけどね」
先程私に記憶の有無のような物を確認していたのでもしやとは思いましたが、やはりトウメイさんもこの状況を把握しているという事ですね。しかし、そうなると切羽詰まって居るというのはどういう事なのでしょうか。
「それで、メアリー以外でこの魔法について把握している子は居る?」
「マゼンタさんが知っています」
「あの子かぁ……」
「え、なにか嫌な事でも……?」
「私、あの子とちょっと相性が悪くてね……まぁ良っか。能力は確かだし。近くに居る?」
「はい。この鍛錬場かその周辺には居ると思いますが……」
「了解。じゃあ私は彼女を探し、合流して動かせて貰うね」
「それは構いませんが……なにがあったのでしょう?」
言い方からしらしてただ事では無いと分かるのですが、合流して動こうとしたり、多少のリスクを冒してでも私達の前に現れたり……“少しでも人を集めようとしている”、というのが伝わってきます。その理由は一体なんなのでしょう……?
「簡単に言えば、この空間と学園のなんかよく分からない危険な力を利用して、無理矢理夢を壊そうとしている子がいる」
「無理矢理……え、まさか!?」
トウメイさんの言葉がなにを意味するかを理解すると、私はつい離れた位置の班員にも聞こえるほどの大声を上げてしまいます。私の大声に反応した皆さんは、トウメイさんの格好に一瞬躊躇いをしたものの、私の反応が気になり近付いてきます。
「誰ですか、そんな事をしようとするのは!」
本来なら夢魔法の事を知られないようにした方が良いのですが、それより重要なのは、その危険な力……おそらく、一昨日行ったら無くなっていた石碑さんに関わる力を得たであろう、謎の“子”についてです。
「彼を無理矢理起こすという事は、つまり彼を……!」
「……知っていたんだね。そう、彼を殺そうとしている」
私とマゼンタさんがこの夢魔法の核となっている“彼”を夢魔法から無理矢理起こすために、害すれば覚める可能性が高い、というのは把握しています。
しかし起こす方法の如何によっては夢魔法がこの世界で確定してしまう、というのも分かっているのです。だから彼に関しては自然と起きるのを待つ事にし、別の方法が無いかを探していた訳なのです。
それなのに無理矢理起こそうと……彼を殺そうとするなど、なにを考えているんですかその子というのは!
「こうしてはいられません、すぐに彼の元に行かないと……!」
「そうだ。少しでも味方が多いと助かるから、君は内部から彼かその子が居ないかを探してくれ。私も合流と探索を目指すから」
「分かりました。ですが、その“子”というのは誰なのですか?」
もしかしたらその“子”というのが、この夢魔法を発動させた者、あるいは唆された者でないかという事も視野に入れ、誰かを尋ねます。誰かが分かれば交渉でも戦闘でも対策も立てやすいですからね。
「……すまない。誰かはハッキリとしないんだ。なにせ私が見たその子は、黒い靄がかかっていたからね」
「靄……?」
聞くと、トウメイさんがトウメイさんなりに調査をしていた所、その“子”と出会い、彼を殺そうという意志を叫んだと言います。その子はトウメイさんが捕縛するよりも早く、まるでこちらの動きを読んでいるかのように逃げだしたとの事。
その後トウメイさんは協力者であるクチナシさんに連絡をし、向かった先であるこの場所に急行したそうです。そして私達に出会った、と。
となると、黒い靄というだけで探す必要があるようですね。ある意味では探しやすいかもしれませんが、もっと情報があれば良いのですが……いえ、そう言っても居られませんね。相手が男性だろうと女性だろうと、彼を殺そうとしているのならそれを止めるまでです!
「いや、男性というのは分かった。声がそうであったからね」
「そうなのですね。そうなると、男性の叫び声を頼りに探してみます」
「助かる。すまない、役に立てなくて」
「いえ、助かるくらいですよ。その情報だけで充分です」
「そう言って貰えると助かる。では私は探して彼女と合流――あ、そうだ。叫んだ言葉だが、もしかしたらその言葉を頼りにすれば見つかるかもしれないな」
「はい、どういうものですか?」
周囲の皆さんが「なんの話だ?」と近づいている中、私は叫び声から少しでもなにか情報を得られないかと、トウメイさんの言葉に耳を傾けます。
「“クロ・ハートフィールド、愛しているぞ!”と叫んでいた」
…………。
なるほど。
「もしかしたらクロ君に関わる誰かかもしれないから、充分な警戒を――」
「よりにもよって彼ですか、師匠レベルに面倒です!!!」
「うぉう、急にどうした!?」




