力で殴って物理でパワーれば良い(:白)
View.メアリー
「むむ、本当になんか凄いなにかが、身体全体を覆ってなんかなってる感じがある……!」
「ええ、なにか凄いなにかが、本当に身体全体を覆ってどうかなってる感じがありますね……」
「なんだかテンション低めだね、メアちゃん」
「あの馬鹿師匠が作った事を考えると、どうしても複雑な気分になるのです……」
「そういうものかー。ところでルー君の方はどんな感じ?」
「…………。あ、私か。そうだな、なにか凄い膜のようななにかが、覆っていて不可思議な感覚だ。闘技場でのぐわっとした感覚に近いな」
「あー、分かるね」
「……アッシュ」
「真似しようとするなよヴァーミリオン。感覚派が多いというだけだからな」
と、空間に広がった護身符の効果を実感していたり、製作者の事を思って気持ちを静めていたり、幼馴染達が擬音で自分達よりも未知の力について理解しているような感覚に陥って不安になっていたりと、各々が授業開始前の行動をしていました。
「シアン・シアーズ! 水魔法は結構使えるけど、肉弾戦の方が好きで、蹴り技が得意! とりあえず戦闘になったら殴りに行くね!」
「メアリー・スー。基本魔法は一通りできますし、錬金魔法も得意ですが……個人的には攻めの姿勢の方が好きですね。中、近接戦希望です」
「シャトルーズ・カルヴィン。魔法は使えるが、“使える”というレベルだ。この刀で相手を断つ事以外はあまり役に立たないと思ってくれ。接近戦希望だ」
「……アッシュ・オースティンです。風魔法が得意なので、遠くから援護しますね?」
「……ヴァーミリオンだ。俺も援護に回ろう。力の高い上級魔法を俺は習得済みであるから、合図を決めて、合図をしたらお前達に当たらないようにお前達は一旦離脱する方向性で戦闘を進めるという形で進めるか」
『成程つまり……使わせる前に近接組が相手を倒せと言っているという事だな(ですね)(だね)』
「違う。ハモるな。“俺にそれを使わせるなよ”という脅しではない」
そして次に自己紹介をすることになりました。シアンを除けば同じクラスだったり幼馴染組だったりするので、あくまでも今回の授業に必要な範囲での簡潔な自己紹介でした。
何故だが殿下とアッシュ君は私達を「組む相手、間違えたかな……」的な目で見ている気がしますが、きっと気のせいでしょう。多分あの表情はこの空間の効果に伴う感覚にまだ慣れていないだけなのだと思います。
「それで私達の班の目的だけど……あ、本当に浮かび上がって来た。ええと、書いてある内容を纏めると……【相手チームの武器を奪え】だってさ」
「ほう、武器を大事にしない者は二流と聞く。つまり武器を持つ者にとって奪われる事は命を奪われる事に近いだろう」
「はい。つまりその武器を奪うために私達が出来る事は」
『武器を奪えるように、戦って接近戦で勝ってから奪えば良いんだな(ですね)(だね)』
「お前らはもう少し接近戦から離れろ」
と、いう訳で私達の班の目的も決まりました。
そうなると私は似たような目的で近付いて来るふりをした誰かがいたり、妙な動きをする班が居ないかを調べるとしましょう。
――本当は、はぐれたフリをして一人で動ければいいのですが……
それをするとこのメンバーだと返って問題が起きそうですし、私の目に届かない場所はマゼンタさんが動いているのでそちらに任せるとしましょう。
「メアちゃん、大丈夫? なんだか心ここにあらず、って感じだけど」
と、私が気合を入れ直していると、この世界では同じ年齢のシアンが私を心配そうに見て来ました。相変わらずの鋭さです。彼女は黒幕云々は抜きにしても、注意しないと駄目ですね……
「大丈夫ですよ。師匠に対する怒りを思い出して、これから出会う相手チームにぶつけようと意気込んでいただけです」
「それは良かった。準備万端のようだね!」
「スー、だが気を付けろよ。怒りは時に攻撃の手を鈍らせるからな」
「ふ、甘いですねシャル君。鈍った以上の力で殴れば解決ですよ」
「なるほど、力が全てを解決するという事か……一つの極致だな!」
「うんうん、分かるよ。やっぱり力が弱い時の一番の解決方法は力だもんね!」
「ですね! では頑張りましょう! せーのっ!」
『オー!』
「……アッシュ」
「いくら近侍だからって、代わりに突っ込んでやると思うなよヴァーミリオン」
さて、誤魔化しと意気込みを同時にこなした所でテストの前哨戦が開始です。
誰が来ようとも、油断せずに対応しますよ!
鬼でも蛇でもどんとと来いです!
「あ、おーいそこの少年達! 誰か私の事を知っている子はいないか!」
そして鬼でも蛇でも無い、全裸で浮遊している変態が現れました。
…………。
……えっと、とりあえず。
『痴女だ!』
「誰が痴女だゴルァ!」




