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面倒な相手(:白)


View.メアリー



 アッシュ君と闘技場に行き、シャル君も含めた模擬戦をした後、互いの健闘を称える意味も兼ねて一緒に夕食を摂りました。シャル君は食べる事に消極的だったのですが、とりあえず肩を掴んで無理矢理引っ張っていき(ついでにアッシュ君も)、夕食を先払いで私が払ってしまうと観念したのか一緒に食べてくれたのです。

 夕食中には様々な戦法や鍛錬方法を語り合い、ついでに情報収集もしました。その際に意外であったのは、シャル君とアッシュ君が以前幼馴染男子三人組でやっていた、シャル君のお母さんであるヴェールさんとの鍛錬についてを聞かせて貰った事です。

 これはこの世界特有なのかどうかは分かりかねますが……なんとなく、元の世界だと「親しいからこそ話したくない」というような話の内容のような気がしました。今の間柄だからこそ話せる気安い話、と言うように思えたのです。


「それでは、おやすみなさいお二人共。この調子でテストではいい成績を残しましょうね!」

「はい、メアリーさんもおやすみなさい。疲れたでしょうからゆっくり休んでくださいね。……ほら、シャルお前も挨拶をしておけ」

「……ではまた明日な、スー。次は負けないし、テストでも負けないからな」


 と、夕食を食べ終わった後に男子寮と女子寮に別れる道で手を振ってさよならをしました。いつもならここでアッシュ君がもう一言二言話してから、シャル君に引っ張られて無理矢理連れていかれる、という風景が見られるのですが、今日は見られないようです。残念です。


――しかし、既に生徒会役員の推薦を受けている、ですか。


 ある程度まで見送った後、進行先を女子寮へと向けゆっくりと歩きながら先程聞いた内容を考えます。

 曰く最初のテストがある前に、生徒会役員にならないかという推薦を二人共受けているという事です。推薦人はそれぞれが新入生代表戦で戦った先輩との事です。

 私の記憶では、生徒会の推薦は最初のテストが終わってからが通例です。それぞれの試験のジャンルで一位や高水準の成績を収めた人が推薦されたり、ノワール学園長が選んだ生徒が推薦されたりします。元の世界だと私もそうであったのですが……私はまだ推薦を受けない中、彼らは受けているというのです。

 まぁ私は今回(比較的)目立たないように動いていますし、放課後とかは調査もしているので推薦を受けないのもおかしくはないのですが……やはり気になりますね。


――さて、今日の所は調査と訓練で疲れましたし、お風呂に入ってゆっくりと……おや?


 今日の調査は後は深夜に抜け出して地表を剥がして調べるに留めようかな、と思っているとふと気になる人を見つけた気がしました。

 すぐに曲がり角を曲がってしまったためハッキリとは見えなかったのですが……なんとなく、それが誰だか気になったのです。


――……一応、確認しますか。


 なんとなく、本当になんとなくなのです。

 無視した方が良いような、無視してはいけないような。

 この世界において違和感は重要な意味を持つと理解をしています。

 ですがそれを含めても今回は無視した方が良いような気もします。

 ですが無視すればさらに面倒になるような気もします。

 …………。

 …………。

 ……、よし。あの角の先に居ますね。なんか魔法で認識を阻害していますが、ちゃっちゃと侵入しましょう。

 深呼吸一回。息をひそめて数秒。バレない様に近付いて誰かを認識すると……


「よし、侵入に成功したな。シュイ、イン。大丈夫そうか?」

「はい。主の思いつきの突拍子の無い行動にキチンと応えていますよ」

「同じく。主の馬鹿みたいな思いつきにもちゃんと対応していますよ」

「ははは、お前達口が悪くなったなー。まぁいい。大丈夫ならこの調子で侵入をして弟子たちに会うぞ!」


 …………。よし。


「――――!」

「うぉう!!?」

「ちっ、外しましたか。お久しぶりです、馬鹿師匠。こんな所で女性の姿で会うなんて奇遇ですね。会えて嬉しいですよ」


 私はそう言いながら奇襲で乱れた服装を正しながら気になる相手……もとい、なにかが起きた時に周囲にこの人が居たら、とりあえず取り押さえておいて問題無い馬鹿師匠こと、ゴルド師匠、そして水銀双子従者のシュイとインに挨拶をします。


「会えて嬉しいわりに無言で奇襲するという、殺意の高い攻撃を仕掛けやがったな、馬鹿弟子」

「シュイとインに感謝してくださいね。居なければ逃げられないように周辺を巻き込んでいたんですから」

「感謝してください主」

「そうです感謝しなさい主」

「あれ、なんだか思ったよりも孤立していないか、私」


 普段の行いが悪いから仕様が無いですね。

 ……というか、この世界に彼が居るという事は……やはり、そういう事ですよね。


「それで師匠。一応ですが何故此処に居るのかを聞いても良いでしょうか」


 とはいえ、キチンと聞くだけ聞いておきましょう。どうせ夢魔法に気付いたから調べに来たとか、この夢の世界を悪用しに来たとかそんなんでしょうがね。


「お前達が学園に入学したと聞いたから、イタズラを仕掛けに来たのだ!」

「……はい?」

「というか、お前よく私がゴルドだと分かったな。以前と違って女の姿をしているのに……」

「…………はい?」


 ん、あれ? これはもしかして……


「馬鹿師匠、実は私の部屋にマゼンタって言う名の女性が寝泊まりしているんですが、来ます?」

「は、何故アイツが此処に?」

「ついでに言うと若返って、師匠が恋していた頃の年齢になっていますよ」

「は、若返った? ……って待て。恋をしていたってなんだ、恋をしていたって。そんな戯言誰から聞いた」

「馬鹿師匠……貴方からです」

「……はい?」


 ……ふむ、なるほど。

 …………つまり、これは、えっと……


「よし、とりあえずこの人が愉快犯で学園に来た事は分かりましたので、とりあえず捕縛しておきますか。シュイ、イン。手伝って下さい」

『畏まりました、メアリー様』

「え、ちょっと待て。今の話はどういう意味だ馬鹿弟子――というかシュイ、イン、お前はどっちの味方だ!」


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― 新着の感想 ―
[一言] あ、やっぱり夢魔法を使える人間以外は記憶ない感じなんだ。ゴルドですら消えてんのね。
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