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知りたくなかった秘話(:白)


View.メアリー



 カツ、カツ、カツ。三人分の足音を響かせながら、私達は地下の空間へと続く階段を降っていきます。

 明るければなんの変哲もないただの通路。ですが夜であり先の不透明さを考えると、無機質で怖さすら覚えます。


「あははは、暗いから光魔法で光源確保しとくよ。まるでお昼のような明るさに!」

「あ、それならなにかBGMでも流しましょうか。風魔法と錬金魔法のコラボで音楽を流せますよ」

「お、良いねそれ!」

「……もう少し緊張感を持ってくれ」


 ただマゼンタさんは光魔法で周囲を明るく照らしますし、明るく私達も会話はするので怖さは覚えてもすぐ払拭されますがね。ただ前に進む殿下は私達に緊張感を持ってほしいようですが、強くは言いません。なんとなくですが、諦められているような気がします。


「もし敵が出てきたらどうする。命の危険すらあるのやもしれんのだぞ」

「そうだね。よし、じゃあ攻撃武器を用意しておこうか」

「……マゼンタ叔母さん。この空中に浮いている槍のようなものはなんだ?」

「【妖蝶の鐘】って言ってね。正確には音叉なんだけど、自由に射出できる私の武器だね。びゅーんって放てば大体上級魔法の破滅をもたらすよ」

「そんなものを簡単に複数個展開するな!!」


 む、アレは夢魔法でクロさんと戦っていた時に使っていた武器ですね。

 確か突き刺さった槍もマゼンタさんの魔力と通じていて、魔力を流す事で音叉のように振動が発生し、多くなればなるほど周囲に大規模破壊をもたらすモノであったはずです。クロさんはこれを掴んで投げ返す(銃弾程度の速度)ことで対応をしていたりしましたが……いずれ私も戦う時が来た時は、この武器を使うマゼンタさんにも勝ちたいものです。なにせいずれ闘う事は確定していますからね。両親の挨拶の時に。


「まぁまぁ殿下。これで大きな敵が来てもマゼンタさんが倒してくれますから、厚意に甘えましょう?」

「甘えると言ってもだな……というよりも、メアリー・スー」

「はい、メアリー・スーです」

「……お前は俺の生まれを何処まで知っている?」

「えっと、実は身持ちが固いマゼンタさんが、二十七歳の頃に遠征に行った先でお兄さんを誘惑して貴方を身籠ったり、貴方を妊娠しているのに療養先の近くで起きたモンスターの討伐部隊に参戦してうちの馬鹿師匠に怒られたり、生まれた後産後の状態とか無視して父親であるお兄さんと親友であるその妻に“一緒に名前を名付けようよ!”と言いに行こうとした事くらいしか知りませんよ」

「俺より俺の生まれを知っているな!? というか本当か母さん!」

「うん、大体あってるよ」

「この馬鹿母!」


 ちなみにマゼンタさんはその後貴族、王族としてはかなり遅い二十九歳で正式に結婚し、共和国に嫁いでいます。本来なら行き遅れと後ろ指を指されてもおかしくはないのですが、なんでも見た目はずっと若々しく、ずっと求婚の誘いはあり、むしろ「誰が最初に射止めるか!」みたいな羨望の的であったとかなんとからしいです。そして結婚した時には夫の方に恨みつらみが結構あったとか。

 ……とはいえ、マゼンタさんの性格と“色々”とあって夫婦や家族で過ごした時間はとても少なかったようですが。


「というより、何故お前はそんな事を知っているんだ」

「え、それはク……」


 クロさんとの戦いの後、お互い話すようになったヴァーミリオン君とマゼンタさんが色々と話をしたのを聞いたり、マゼンタさんが私に何故か語って来たりしたからです。


「……マゼンタさんと色々話したからですよ。なにせ私達は友達なので」


 ……何故知っているかについては言った所で信じては貰えないでしょうし、今は語るべきではないでしょう。


「友達か。……母さんと、か」

「はい、友達です」

「うん、友達だよ!」

「……そうか。では改めて気を付けて進むぞ」


 殿下は言いたい事はあるけれど、今は聞くべき時では無いと思ったのか再び前を向いて進み始めました。……流石にわざとらしすぎましたかね。


「む? 階段もここで終わりか。確かこの先に……」

「石碑があるはずですよ」

「メアリーちゃんの話だと、確か試練を乗り越えれば力を授けてくれる石碑なんだよね?」

「はい。だから壊します」

「そうだね、壊そうか」

「……俺は蛮族でも引き連れているのか……?」

「ヴァーミリオン、今私達をゴリラ扱いした?」

「してない」

「え、森の賢者扱いをしてくれないんですか?」

「メアリー・スーは何故残念そうなんだ……ともかく、壊すかどうかは見てから判断だ」


 そう言いつつやや開けた場所に差し掛かると、近付いた瞬間に、一斉に明かりがつきだします(元から明るいのであまり意味はありません)。

 とはいえ皆さんが警戒態勢になりつつ、部屋の中に踏み入れると――


備考 “闘う事は確定していますからね。両親の挨拶の時に。”

メアリーの中では身分差の事もあって結婚の時には認められるために戦う者だと思っている。怖いね。


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