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即断で信じられる方が信じられない(:白)


View.メアリー



「さて、ではこの像を動かすために調べましょうか」

「うん。……あ、メアリーちゃん、こっちお願い」

「はい? ……あぁ、そこですか。はい、こうですね」

「おっけー。じゃこうして……」

「こうして……」

「よし、解呪完了!」

「イエイ、やりましたね!」

「イエーイ!」


 と、いう訳で本来なら特殊な状況でもない限り動く事の無い像の仕組みを解明し、自由に動かせるようになりました。流石はマゼンタさん、共和国の聖女と崇め奉られるほどの能力を持つ御方ですね。


「あ、ついでに周囲にバレない様にする魔法も使っておきました」

「うん、ついでに音が響かないようにもしておいたよ」


 おお、いつのまに。痒い所に手が届く事をして下さるマゼンタさんは流石と言えましょう。

 ではここまでしたのなら、そろそろ声をかけても良い頃でしょう。


「という訳で殿下。今なら大きな声で話しても周囲に気付かれる事はありません。お話したい事があるなら、どうぞお聞きください」

「……いつから気付いていた?」

「闘技場の頃には居ましたよね」

「あははは、会話を探ろうとしていたよね」

「…………」


 資料室とか図書館の地下とか、付いて行くには近くに寄らなければならない時には流石に見る事は出来ていなかったようですが、彼がずっと私達の後を付いて来ているのは知っていました。

 マゼンタさんも付いて来ているのは気付いていたようなので、カサスに関する事を話す時などはさり気無く口元も見えないように話してはいたので、私達がなにをしているのかの内容自体は分からないとは思いますが……


「つまり分かった上で俺を泳がせ、楽しんでいたという訳か。お前達は」


 ……当然と言うべきか、その行為そのものが彼の中では良くないものとして扱われているようです。先程別れる際にはなにが起きたか分からないような、ポカンとした可愛らしい者ではありましたが、今私達に向けるのは冷めた視線です。

 侮蔑でも敵意でも無く、熱い感情を持ち合わせる事自体が彼にとって負けだと言っているような、ただただ冷たい眼です。


「それで、先程からお前達はなにをコソコソと企んでいる」


 私だけではなく、マゼンタさんにも“お前達”呼びでひとくくりにしているのがその証拠と言えましょう。

 もちろん楽しんでいた訳ではないのですが、彼を意図的に省き、ここが最後であるからと話しかけたのも事実です。ここでなにを言えば良いかが問題ですが……


「人が幸せになれるように、やれる事をやっているんです」

「皆が幸福になれるように、やりたい事をやっているんだよ」


 私達は嘘偽りなく、自分の気持ちを伝えます。

 かつてはヴァーミリオン君にもクロさんにも説教を受けた、私達の在り方。しかし誰かを幸せにしたいと言う想い自体は否定はされていない、私達の信条。

 それを真っ直ぐ、ただ伝える事しか私達は出来ません。


「……かつてこの国を正そうと言って国を破壊しようと目論んでいたテロリストも、同じ事を言っていたな」


 しかしそれを彼は受け入れはしません。

 これも当然と言えば当然です。私もマゼンタさんも、この気持ちが真実であると彼に認められるほど、彼とは接していないのですから。むしろこの状態で信じられる方が疑わしいというものですしね。


「それで、その大層な理念とこのクレナイ様の像にはなんの関係がある。この像を壊したり落書きをする事で注目を浴びたいと言うのなら、俺は全力で――」

「へーい、ムーブザスタチュア!」

「クレナイ様の像が動いたぁ!!」


 はい、認められないのなら信じて貰えるような事実を突きつけましょう。

 彼がついて来た時は、図書館の地下への扉とかそういうのは見ていませんでしたからね。視覚情報でなんか凄い事をして、私達がしようとしている事を、カサスの事や夢魔法を除いて実際に見て貰うとしましょう。


「という訳で殿下。この地下にちょっと危ない石碑みたいなものがある事を突き止めたので、私達でどうにかしようとしていたんですよ。という訳で行ってみましょうか、殿下」

「いや、このような場所を素人だけで調べるのは良くない。まずは教員に報告を、した後に然るべき対策を立ててから、」

「その場合私が一緒に報告に行ってあげるよ。保護者参観だね!」

「よし、安全を確保して調べて行こう。俺が先行する」


 おお、マゼンタさんが見事に脅していますね(?)。

 殿下も己が評判の大切さを選びはしましたが……先に行く選択肢を迷わず選ぶ辺り、流石殿下であると言わざるを得ませんね。


「じゃあ私はヴァーミリオンの後ろを守る! 後ろは任せなさい!」

「その場合一番不安なのはアン――貴女なのですが」

「え、なんで?」

「貴女は先程俺にした事を忘れたのですか」

「ええっと……ハッ、そうか。おいでヴァーミリオン、不安なら私がぎゅっと抱きしめてよしよししてあげよう!」

「どうしてそうなる!」

「お母さんに甘えたいという事ではないの!?」

「違う!」


 マゼンタさん、相変わらずですね。

 これは楽しんでいるのか、はたまた大真面目に今後のために距離感を図っているのか……微妙な所ですね。


「ええい、メアリー・スー、お前が真ん中になってくれ!」

「私が後ろなのは良いのですか?」

「お前はまだ……うむ、今のお前は大丈夫だと思えるからな」

「?」


 どういう意味でしょうか。まるで私が先程まであまり頼りにならない……というよりは、体調を心配されるような状態であるかのように殿下は言いますね。そんなはずは無いと思うのですが。


「では、行くぞ。少しでも危険を感じたらすぐに出るからな」

「その場合はマゼンタさんが教師の方々に保護者参観しますが、よろしいので?」

「……民を犠牲にする訳にはいかんからな」

「即答であったら格好良かったんだけどね!」

「やかましい馬鹿母親」

「お母さんと言ってくれた!」

「やかましい馬鹿叔母! ……行くぞ」


備考 最初の方の解呪とか周囲にバレないようにする魔法

本来なら専門家が事前準備か時間をかける事でやっと出来る代物を複数個あっさりやっている。同時にやるとなると基本的に無理。

それを二人は平然とやっている。怖いね。


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