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純度百パーセント


「……ふぅ、今日はこの位にしておくかな」


 アプリコット達と談笑をした後、再び勉強に戻る事二時間。テスト範囲の全体的な復習を一通り終わらせた。あまり根を詰めて明日の学園生活に支障があっても困るし、今日はキリの良いここまでにしておこうと思う。


「さて、寝るかー……の前に、カップだけ洗っておかないとな」


 アプリコット達は夜遅いという事で、従者用の寮に戻らせたため、現在この部屋には俺一人しかいない。明日に備えて寝る前に、勉強のお供としてアプリコットが置いて行った珈琲の空いたカップを洗ってから寝るとしよう。


――しかし、こういうテスト勉強をするって新鮮だな。


 前世では小学中学共に勉強をほとんどしなかったし(通知表は壊滅的)、高校は専門学校でテストはあっても普通高等学校の勉強をするようなテストは無かった。なのでこういう勉強をするのは初めてで新鮮だ。大変ではあるけど、今までなかった経験自体は楽しく思っている。


――まぁ、楽しいと言っても辛い事の方が多いけど。


 ……とはいえ、分からない事を解こうと悩んだり、何故こうなるのかと悩む時間は素直に辛い。自分の学力の低さを目の当たりにすると目を逸らしたくなる。

 だがこの辛いから目を逸らせば後からやって来るのはさらなる辛さだ。今後の楽のためにも、目を逸らさずに頑張らないとな。何事も基礎が出来ていない内は出来なくて当たり前なんだし、出来るために基礎を積み上げて行かないとな。


――さて、眠って今日やった事を脳に定着させるぞー――ん、物音?


 眠ればこのこんがらがっている情報の知識も整理されるだろうという淡い希望を抱きつつ、眠ろうかと考えていると外から物音が聞こえて来た。

 一応ここは“貴族”男子寮なので防音は“それなり”ではある。なので外からの音はあまり聞こえないから気のせいかもしれないけど……一応確認しておくか。


――お化けだったりしてな。はは。……はは。


 ……この世界普通にお化けっぽいモンスター居るからな。冗談が冗談にならない。

 ここは学園や首都なのでそういった対策は他よりされているだろうけど……うん、あの乙女ゲーム(カサス)のイベントを考えると不安しか湧いてこないな!

 あの乙女ゲーム(カサス)だとこの学園割とモンスター被害あってるもんな!

 安全と謳われているくせにめっちゃ襲撃とか受けているホグワ〇ツ魔法学校レベルだもんな!


――よっしゃあ、お化けでも変態でも出て来いやァ!


 と、俺は妙な気合を入れつつ部屋の扉を開けて外を見る。


「……うん、気のせいだな」


 気合を入れたは良いものの、外(廊下)は特に変哲もない廊下であった。お化けも無ければ人の気配もない。

 ……下手に外を見ていて見回りの人に見つかっても面倒だし、さっさと部屋に戻るか。さっきの音は多分ラップ音とかだろう。


――ラップ音の“ラップ”ってどういう意味なんだろう。YO! とか言わないし……


 そんな、自分でもよく分からない事を考えつつ扉を閉めて部屋に戻りベッドへと目をやると。


「こんばんは」

「――――」


 そこに、不審者がいた。


「――――っ!」

「え、ちょ」


 部屋を勉強のために机の灯以外点けていないような暗めにしていたので見えにくいが、相手は知らない顔だ。性別は顔をぱっと見で見る限りは女。というか声が女だ。服装はよく分からないが、身体のラインが分かる服だとは分かる。

 彼女が何者かは知らないが、俺の認識ではこの女は不審者だ。なにかされるまえに、こちらから取り押さえる!


「わ、ちょ、早っ!?」


 出来る限りの力を使い相手の後ろに瞬時に回り込んで、手首を掴んで小手返しのように返して相手の背中に押し付け(あれ、なんか相手の背中の肌に直接触れた気がする)、そのまま相手をうつぶせ状態にして上に乗ってベッドに抑えつけた。


――……知り合いじゃないよな?


 咄嗟に不審者対策でやられるより先に無力化するように体が動いたが、ここまでやって知り合いとか間違って部屋に入っていただけの目上の人とかだったら困る。特に後者だと向こうが不法侵入でも、今後の付き合いに影響しそうだ。

 頼むから純度百パーセントの不審者であってくれ、というよく分からない事を願いつつ、相手を確認しようとするが……うん、暗くて見えないな。もう少し目が慣れないと誰かを確認出来ない。


――っていうか……なんか柔らかくない?


 何故かは分からないが、俺が抑えつけた箇所……というか、触れている箇所がなんか柔らかい。というか皮膚じゃないか、これ。

 ……おかしいな。俺はあくまでも抑えつけただけで、服を脱がしたとかそんな事はないはずだ。だから俺の勘違いだろう。


「流石の動きだね……私の力が弱まっているとはいえ、こんなにも早く無力化されるとは思わなかったよ」


 いや、これ皮膚というか肌だ。

 謎の女性が少し動いたので感触が更に伝わったのだが、これ完全に女性のあたたかくて柔らかな肌だ。

 あれ、目が慣れて段々と彼女の姿が見えて来たけど、身体のラインが見えやすい服を着ているというか、彼女って……


「ベッドで馬乗りで抑えられるとは思わなかったよ。私はこのまま君の恋力を受けちゃうのかな!」


 ……なにも、服を、着て、いない。


「痴女だぁ!!!??」

「誰が痴女だコラァ!」


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