ティーブレイク
「うー……頭が熱い……」
一通りテスト範囲の分からない所を友人であるシルバ達に教えて貰い、現在俺はグレイ達と共に自室で復習をしていた。時間をおいて反復して理解した事を再確認しないと、本当に理解したか分からないからであるのだが……いつもより脳を使ったせいかちょっと頭に熱がある。
「熱い、ですか?」
「なんか脳がフル回転して熱暴走している感じだ……」
「なるほど。つまり魔法で冷やせばさらなる回転が出来るという事ですねクロ様!」
「グレイ、それは追い打ちになるだけだからやめなさい。しかしクロ様、あまり根を詰めるのもよくはありません。珈琲をお飲みになられますか?」
「うん、ありがとうアプリコット。ちょっと休憩するよ」
俺が勉強している間はグレイと一緒に本を読んでいたアプリコットに言われ、休憩をする事にした。テスト前だからといってやり過ぎも良くないし……そう、寝たら記憶に定着するとか聞いた事が有るし、休憩も大事なんだ、うん。
「クロ様、我は今貴方が嫌な事から目を逸らす言い訳を内心でしているように見えるのですが、休憩提案は早計でしたか?」
「ははは、なんの事やら」
うん、自分でもそう思ったから安心して良いぞアプリコット。でも、心を読むのは出来ればやめてほしい。
アプリコットは両親や兄達よりも俺の傍で長年過ごしているのだし、俺の性格を理解しているだけで本当に読み切っている訳ではないだろうが……偶に心を見透かされるような事を言われるんだよな。だからアプリコットの傍では下手な事は考えられまい。アイツだとそんな事はなかったんだけど……
――……あれ、アイツって誰だっけ。
……まただ。またこの違和感だ。
長年連れ添ったのは黒髪のアプリコットではなく、金髪の女性ではないかという、自分でも何故そんな事を思うのかが分からない思考。
なにか分からない事が分かっているのに気付けないもどかしさ。
答えを見ているはずなのに答えと認識出来ない愚かしさ。
知らない人を知っているような感覚が有ったり。知らなければいけない事を知らないままで進んでしまったり。
“目が覚めるのは辛い事でも、早く覚まさないと大変な事になっちゃうからね”
……あの女性の言葉に俺は引っ掛かりを覚えているのか、目を逸らしているのか。それすらも分からない、靄のかかった違和感であった。
「どうかされましたか、クロ様?」
「……なんでもないよグレイ。ちょっと慣れないテスト勉強で疲れていたみたいだ」
本当はこれがテスト勉強疲れでない事くらいは俺も理解はしているのだが、これを抱く不安をまだ幼いと言えるグレイに感じさせるわけにもいかない。そう思った俺は心配を賭けさせぬように笑顔でグレイに安心するように告げた。
ただでさえ俺の違和感とは別に、この学園はろくでもない権謀術数渦巻く場所で疲れてグレイに心配をされているんだ。これ以上グレイに心配をかけさせるわけにはいかない。
「本当に大丈夫なのですか? 私めでよければなにか力に……」
「本当に大丈夫だよ。ちょっと“いっそグレイに勉強を教えて貰おうか”と思ったんだけど、主としてそれは良いのかと思っただけだ」
「クロ様がよろしければ、私めも教えられるように頑張ります!」
「はは、ありがとなグレイ」
アプリコットはともかく、グレイに教えられるとなるのは……出来れば遠慮願いたい。なんかこのままだと普通にそういう未来があってもおかしくないくらいはグレイは勉強できるのだが……よし、休憩が終わったらグレイに負けない学力をつけられるように再び頑張るとしよう。
「我もよろしければ勉強を教えますよ? はい、珈琲とちょっとした夜食です」
「お、ありがとう。……まぁ、アプリコットには頼むかもしれん。不甲斐ない主人ですまん」
「ヒトには向き不向きがあるというだけですよ。むしろ頼って貰えて嬉しいです」
「そう言って貰えると嬉しいよ」
……うん、アプリコット達をちょっと無理にでも学園に連れてきてよかったな。こういった会話を出来るお陰で俺も精神的に落ち着く事が出来るし、もうひと頑張りやろうと思う事も出来る。
先程の違和感は気にはなるが、今はこうして安らかに癒されるとしよう。
「ところでクロ様。誰か良い結婚相手は見つかったのですか?」
「ごふっ」
癒されようとした瞬間にグレイからとんでも質問来たよ。
「……いや、生憎と見つかっていないが、急にどうしたんだ?」
「ほら、最近のクロ様は多くの女性とお話されていますし、ブラック様が仰られた“学園三年間の間に私とお前のどちらがお前の結婚相手を見つけるか見物だな”と勝負されてましたし」
いや、それ勝負じゃ無くて婚約者を見つけない所か逃げ回る俺に脅しをかけていたみたいものんだよ。あの父親が学園で良い家と繋がりを持つようにしなければ、こちらで勝手に進めるぞと言っているようなものだよ。
「それに最近のクロ様はおモテになりますし!」
え、なにそれ初耳。友達は居てもモテた記憶ないよ。
「可愛いスリットを入れられた女性とも仲が良いですし」
「シアンは別の好きな男性が居るぞ」
「ハイタッチする程仲の良い女性もおられますし」
「あの子はそういう距離感の子で、多分恋人にするのは凄く難しい子だ」
「疲れたクロ様に寄り添って下さる女性も居ます」
「スカイは俺の普段の振り回されぶりに同情しているだけだぞ」
「クロ様と触れ合い揉もうと熱心な女性もおられますし」
「アレは俺の筋肉目当てだ」
「毒を目の前で食べて心配をして欲しいと言うアピールをする女性もおられます!」
「アレがアピールだったら怖いよ!」
確かに言われると学園生活で色んな女の子と触れ合ってはいるけど、あまり嬉しくない触れ合いだし、モテるというか前世でもあった「友達としては良いけど異性としては……」みたいな感じだと思うよ! ……自分で言って悲しくなって来たな。
「ともかくその子達は皆友達だし、残念ながら前に言ったような積極的に行こうと思う相手もまだ居ないよ」
「む、そうですか。ところでクロ様の仰る積極的に行こうと思う相手、というのはどのような御方なのです?」
「というと?」
「えっと、それは……」
「グレイはクロ様の好みのタイプを聞きたいんだと思いますよ」
「あ、ですです。そういう事です」
「好みのタイプねぇ」
言われてもパットは思い浮かばないが、強いて言うならそうだな……
「背が高くて胸が小さくて体型の変化が少ない子」
「それ服を作る視点であろう」
だってありがたいんだもの、そういう女性。特に3つ目。
……でもそれ以外だとあまり思い浮かばないんだよな。仕草が綺麗……というのも好みのタイプとはなんか違う気がするし
「アプリコットさん。これは職人クロ様としての視点ですから、職人として離れたい素のクロ様ならば……」
「なるほど、小柄で胸が大きいロリ娘か。主の将来が心配だ」
「ロリはどっからきたんだ」




